[改定速報] 試行的導入の結果公表、オプジーボ、カドサイラは薬価引き下げ
中央社会保険医療協議会・費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会は3月7日開かれ、厚生労働省などから試行的導入対象13品目の評価と価格調整の結果について、報告を受けた。13品目のうち分析結果が確定したのは6品目で、残り7品目は企業分析と再分析に開きがあり、両者の結果を併記した格好になった。3品目が2018年4月からの価格調整の対象になり、医薬品では抗がん剤のオプジーボとカドサイラの薬価が引き下げられる(参照)(参照)。
試行的導入対象の内訳は、医薬品7品目、医療機器6品目。医薬品では、ソバルディ[主な対象疾患:C型肝炎、企業名:ギリアド・サイエンシズ]が、500万円/QALY以下、カドサイラ[HER2陽性乳がん、中外製薬]が、1,000万円/QALY以上という結果になった。残り5品目の▽ハーボニー[C型肝炎、ギリアド・サイエンシズ]▽ヴィキラックス[C型肝炎、アッヴィ]▽ダクルインザ、スンベプラ[C型肝炎、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ]▽オプジーボ[悪性黒色腫、非小細胞肺がん等、小野薬品工業]-は、企業分析、再分析とも分析ガイドラインに沿って実施され、合理性は認められるものの、使用データの前提が異なるなどの理由で結果を一本化するには至らなかった(参照)。
◆医薬品7品目全てが倫理的・社会的考慮要素に該当
倫理的・社会的考慮要素では、「感染症対策といった公衆衛生的観点での有用性」がC型肝炎治療薬のソバルディ、ハーボニー、ヴィキラックス、ダクルインザ、スンベプラに、「重篤な疾患のQOLは大きく向上しないが生存期間が延長する治療」が抗がん剤のオプジーボ、カドサイラに適用され、7品目全てが該当品目となった(参照)。
医療機器では、▽アクティバRC[パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、日本メドトロニック]▽バーサイスDBSシステム[パーキンソン病、本態性振戦、ボストン・サイエンティフィック ジャパン]▽Brio Dual 8 ニューロスティミュレータ[パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、セント・ジュード・メディカル]-の3品目が、「(比較対照技術と)効果が同等であり費用が削減される」との結果になった(参照)。
膝関節の外傷性軟骨欠損症などが適応のジャック[ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング]は企業分析、再分析とも、ICER(増分費用効果比)の算出に必要な結果が得られず、「分析困難」との結果で一致。両分析結果が併記となったのは、▽カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム[遠位弓部大動脈瘤、川澄化学工業]▽サピエンXT[大動脈弁狭窄症、エドワーズライフサイエンス]-の2品目(参照)。
倫理的・社会的考慮要素では、「一部の適応症について『代替治療が十分に存在しない疾患の治療』」に、パーキンソン病への適応で、アクティバRC、バーサイスDBSシステム、Brio Dual 8 ニューロスティミュレータ-の3品目が該当した(参照)。
今回、企業分析と再分析の結果が併記となった7品目については引き続き検証を行うとともに、価格変動の少ない方の結果を用いて仮の価格調整を行うこととなっている。こうしたルールに沿って、2018年4月は13品目のうち、オプジーボとカドサイラは価格引き下げ、カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステムは価格引き上げが実施されることになった(参照)。
◆7品目の検証のために分野別WGを設置、11月に結果とりまとめ
また、同日の合同部会では、結果併記となった7品目の検証と、費用対効果評価の制度化に向けた検討の進め方が決定した。7品目の検証は(1)専門組織の下に評価対象品目の分野ごとに、その分野の臨床の専門家や医療経済評価の専門家で構成するワーキンググループ(WG)を設置。分析や評価のあり方について検討する、(2)分野別WGの意見を踏まえ、専門組織で品目ごとの分析の枠組みを事前に協議・決定し、その枠組みに沿って分析する、(3)企業の負担軽減などの観点から、原則として今回は専門機関の分析を基本とし、企業による分析はあくまで任意での実施とする、(4)WGおよび専門組織で分析ガイドラインの品目ごとの運用方法を明確化し、品目の特性を踏まえた分析を目指す-手順で進める(参照)。
企業との面談や分析の枠組みに関するWG、専門組織での協議を経て、5月から分析に着手。11月には専門組織による分析結果をとりまとめ、その結果を踏まえて最終的な価格調整を行う予定だ(参照)。
一方、制度化に向けた検討は、試行的導入の検証結果を待たずに検討ができる課題から先行して議論していく方針を確認。ICERの評価方法などのうち、科学的な内容については、医療経済学の有識者による検討を実施し、中医協の議論に活用することが了承された(参照)。
これまでの議論では、評価基準設定のための「支払い意思額調査」実施の是非やその妥当性が争点となったが、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)はこの日の審議で改めて、調査実施に反対の立場を表明。「命に値段をつける性格の調査には断固反対だ。専門家の間にも、質問の仕方や答える人によって回答が異なるとして、信頼性を疑問視する声がある」などと述べた。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)もこれに応じ、「支払い意思額調査をやるのか、やらないのかが、最もプライオリティーの高い課題で、まずこの結論を得るのが先決だと思う」とし、支払い意思額調査に関する議論を最優先で実施するよう強く要請した。
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