[診療報酬] 病棟群単位の届出要件緩和などが論点に 厚労省・鈴木医務技監
今回のポイント
●厚生労働省の鈴木康裕医務技監は9月9日、石川県・金沢市で開かれた「第59回全日本病院学会」で、2018年度の診療・介護報酬同時改定をテーマに講演○入院基本料の病棟群単位での届出については、2017年4月以降、7対1病床数を一般病棟の病床数の60%以下にする要件が厳しすぎて届出ができないとの声があることから、「次回改定で是非このあたりを見直していく必要がある」と指摘
○調剤報酬では、医療機関と同一敷地内の薬局について、院内処方の場合よりも高い評価であることの妥当性が論点になると見通した
厚生労働省の鈴木康裕医務技監は9月9日、石川県・金沢市で開催された「第59回全日本病院学会」で、2018年度の診療・介護報酬同時改定をテーマに講演し、診療報酬改定では、▽入院基本料の病棟群単位での届出の要件緩和▽遠隔診療の評価▽医療機関と同一敷地内にある薬局の評価-などが論点になるとの見方を示した。
入院基本料の病棟群単位での届出は、【7対1入院基本料】算定病院が【10対1入院基本料】算定病院に移行する場合に、病棟群単位での入院基本料の届出を認める経過措置。病院関係者からは要件が厳しすぎるなどとして、要件緩和と経過措置期限(2018年3月末)の延長を求める声があがっている。鈴木技監は、「(2017年4月以降)7対1の病床数を一般病棟の病床数の60%以下にする条件が厳しく届出ができないと聞く。次回改定で是非このあたりを見直していく必要がある」と述べた。
遠隔診療の診療報酬上の評価では、「遠隔診療が是か非かの神学論争をするべきではない」とした上で、「医師と患者の間に信頼関係が築けていて、こういう医療だったら遠隔でも一定程度可能と医師が判断した場合は取り入れてもいいのではないか」との認識を表明。具体策では、心臓ペースメーカーの遠隔モニタリングを例に、「自宅での食事や睡眠のサイクルのなかで、血糖値などの生体シグナルがどう変わるか、医師が常に把握できるような仕組みに対する評価がこれから必要になると思う」とした。
調剤報酬では、処方せんの集中割合が90%以上の調剤薬局が3割を超えるなど、かかりつけ薬局・薬剤師機能を果たしているとは言い難い薬局が依然、存在することに強い問題意識を示した。とくに医療機関と同一敷地内にある薬局については、「かかりつけ薬局機能を全く果たしていないのに、院内処方よりも高い報酬設定が本当に妥当であるのかが論点になるだろう」と話した。
◆高血圧、糖尿病、脂質異常症の適切な管理が今後の医療を決めるカギに
また今後の医療のあり方では、「総患者の約49%を占める高血圧症、糖尿病、脂質異常症の患者の管理をいかに適切にできるかが日本の医療を規定していくことになる」と指摘。2020年度以降の改定では糖尿病の管理におけるアウトカム評価や、医師以外の従事者による生活習慣病指導の評価が課題になると予測した。医療従事者による指導では、私見を交えながら、「医師は医師にしかできないことを、看護師は看護師にしかできないことをするべき」とし、初診と診断は医師が担い、指導は看護師や栄養士が担う役割分担を提案。そうすることで、十分な指導時間が確保できる上、医師よりも時間当たり単価が低い従事者を活用することが医療費の適正化にもつながるとの認識を示した。
医療費の給付と負担のあり方にも言及、「この1年のうちにカタストロフィック(高額医療のための)保険か、混合診療型保険かのどちらを優先させるのかの議論が必要になる」と見通した。鈴木技監によると、カタストロフィック保険とは、オプジーボの投与のような高額だが劇的な効果が期待できる、個人では背負いきれない治療費を保険給付の対象とする代わりに、風邪や水虫などの軽微な治療は保険給付対象外とするもの。これに対して混合診療型は逆に、風邪、水虫などのような一般的で対象患者が多い治療を保険給付にする代わりに、対象者が少ない高額治療は保険給付から外して民間保険でカバーする。鈴木技監は、「全部できれば万々歳だが、財源に限りがあるなかでは不可能で、どちらに重点を置くのか。その1つの解は、フランスで導入されている、薬の種類によって保険給付率に差をつける仕組みだろう」と述べた。
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