[診療報酬] 病棟群単位の届出は14施設、2%にとどまる 入院医療分科会
今回のポイント
●厚生労働省は10月5日の診療報酬調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会に、「平成29年度(2017年度)入院医療等における実態調査」の結果(速報)を報告○病棟群単位の届出を行っていたのは14医療機関で、回答施設の2.0%にとどまった。これら施設の今後の意向は、「7対1への再度の届出を検討中」(3施設)、「10対1に転換」(5施設)、「未定」(6施設)だった
○療養病棟での看取りに際して「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン(GL)」を利用している病棟は22%、利用していない病棟は63%、ガイドラインを知らないとの回答も12%あった
厚生労働省は10月5日の診療報酬調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会に、「平成29年度(2017年度)入院医療等における実態調査」の結果(速報)を報告した。2016年度診療報酬改定の影響を検証したもの。それによると、【7対1入院基本料】から【10対1入院基本料】へ移行する際の経過措置である病棟群単位での届出を行っていたのは、わずか14施設。今後の意向では7対1の再届出を検討中の施設もあり、委員から改めて、届出要件の緩和を求める声があがった。
調査対象は、一般病棟入院基本料(7対1、10対1)、救命救急入院料などを算定する急性期病院2,500施設と、療養病棟入院基本料を算定する1,800施設で、施設調査票の回収率はそれぞれ50.8%、43.8%(参照)。今回調べたのは、▽一般病棟入院基本料・特定集中治療室管理料における「重症度、医療・看護必要度」などの施設基準見直しの影響▽短期滞在手術基本料及び総合入院体制加算の評価のあり方▽救急患者の状態を踏まえた救急医療管理加算などの評価のあり方▽療養病棟入院基本料などの慢性期入院医療における評価の見直しの影響-の4点(参照)。
◆看護必要度の該当患者割合は高い割合にシフト
7対1一般病棟についてみると、平均在院日数の平均値は改定前(2016年3月)の12.6日から改定後(2017年3月)は12.7日へ微増(参照)。病棟ごとの病床利用率の平均値も81.3%から82.9%へ、1.6ポイント上昇した(参照)。「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合はC項目の追加などがあったため単純比較はできないが、全体としてより高い割合へシフト(参照)。7対1病棟以外の届出状況では、改定後の新規届出は地域包括ケア病棟が圧倒的に多く、届出医療機関は21.5%から33.7%に増加した(参照)。
病棟群単位の届出を行っていたのは14施設で、回答施設全体の2.0%にとどまった。これら施設の今後の意向は、「7対1への再度の届出を検討中」(3施設)、「10対1に転換」(5施設)、「未定」(6施設)。病棟群届出の理由は「7対1入院基本料のみでは重症度、医療・看護必要度の施設基準を維持できない」が9割、逆に届出をしなかった施設の理由は、「7対1入院基本料の要件を満たしており必要がない」が9割を占めた(参照)。
救急医療の評価のうち、【救急医療管理加算】は、現在の2区分に分かれた2014年以降、加算1の算定回数が減少傾向にある。2016年度改定では、緊急カテーテル治療・検査などが必要な患者が対象に追加されたが歯止めはかからず、88万5,296回から81万8,776回に減少した(参照)。
◆療養病棟の看取り時のGL利用は22%、利用していないは63%
一方、療養病棟の調査によると、看護職員配置25対1の【療養病棟入院基本料2】届出病棟のうち、診療報酬の減算対象は23病棟(回答施設の約10%)だった。減算理由は23病棟中22病棟が、「医療区分2、3該当患者割合のみを満たさないため」。「看護配置のみを満たさないため」は1病棟のみ、「両方満たさない」にいたっては0病棟だった(参照)。
【療養病棟入院基本料1】届出病棟の23.9%が、【在宅復帰機能強化加算】を算定。これら病棟では非算定病棟に比べ、平均在院日数が短く、在宅復帰率が高い傾向が認められた(参照)。在宅療養支援病院の届出をしていたのは療養病棟全体の18%(参照)。
看取りに対する取り組みでは、死亡退院患者の91.7%で、人生の最終段階における医療についての患者・家族との話し合いが行われていた。自院で話し合いをした時期は、入院時60.8%、容体悪化時49.6%だった(参照)。看取りに際して「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン(GL)」を利用している病棟は22%、利用していない病棟は63%、GLを知らないとの回答も12%あった(参照)。
結果報告を受けての議論で神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、病棟群単位の届出が14施設にとどまっていることについて、「非常に使い勝手の悪い制度だったことは紛れもない事実」と評価し、改めて要件の緩和を要請。療養病棟の看取りにも言及し、「63%はGLを利用していないが、91.7%は患者・家族と話し合いをしており、個別対応が結構できているということ。なんでもかんでもGLという大前提は立ち止まって考える必要があるのではないか」と問題提起した。
また、武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)は、減少傾向が明らかになった【救急医療管理加算1】について、「全身状態不良の状態など、対象患者の基準が抽象的なために、あえて加算を取らないところや、とりあえず加算を取って(レセプトの)査定・返戻に対応しているところがあると聞いている」と話し、基準を明確化する必要性を示した。
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