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資料4 冨山構成員提出資料 (2 ページ)

公開元URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai13/gijisidai.html
出典情報 全世代型社会保障構築会議(第13回)(2/24)《内閣官房》
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路依存を生んでしまっている雇用形態なのである。したがって我が国の労働市場のデザイ
ンがこの雇用形態を基本とする限り、そもそも女性の多くが働いている非正規雇用の諸問
題は言うまでもなく、正規雇用のL字問題も本質的には解消しないし、全体として女性の希
望出生数の低下も止まらないのである。
3.すべてのステークホルダーが本気で包摂的な社会システムの構築を
大事なことは、国の制度、民間の雇用慣行の両面で、正規か非正規か、メンバーシップ型
雇用かジョブ型雇用か、フルタイムかパートタイムか、転職するかしないか、男性か女性か、
法律婚か事実婚か、などなど働き方、生き方に中立的な仕組み(賃金、処遇、福利厚生、税
制、社会保険、リスキリング支援・・・)に可及的早期に移行することである。今、恵まれ
た立場にいる「正規メンバー」の側の人々は、労使を問わずその特権にしがみつかず、その
外側にいる人々(既に正社員の流動化が進み終身雇用が崩壊しつつある中小企業領域、正社
員であっても真の「正規メンバー」として扱われていない女性、国からも企業からも守られ
ない非正規やフリーターなどを合計すると、おそらくこの国の勤労者の 8 割くらいは外側
の人々)にとって中立的で公正な仕組みの構築に本気で全面協力すべきである。政官労使の
すべてが、できもしない「一億総正社員化をもう一度」みたいな建前論を捨て、変容と多様
化の時代に包摂的な社会を構築するため真摯かつ現実的な取り組みを行うことを期待する
し、私は経営者、経済人としてそれを実践していく覚悟である。この根っこの問題を変えら
れなければ、この国の少子化問題は根本のところで解決せず、早晩、我が国は国家社会の持
続性の危機に陥ることは間違いない。
ちなみにこう言う議論をすると、
「日本社会の伝統的価値観を否定するのか」と言う反論
がよく出てくるが、そもそもここで指摘したカイシャモデルも、イエモデルも、明治以降に
人工的、政策的に作られたもので、人口全体の 10%にも満たない士族社会においては昔か
ら「藩」や「お家(いえ)
」がイエでありカイシャであったかもしれないが、大半の人々は
村落共同体や長屋共同体の地縁的共助システムのなかに緩やかに帰属して、地域や職種に
よって多様な働き方、生き方があり、専業主婦のような女性はほとんどおらず(庶民階級の
町人や農民の女性はなんらか仕事をしている場合がほとんど)
、職種や奉公先についても流
動的な生き方をしてきた社会である。それは歌舞伎の「世話物」
(江戸時代の現代劇)を観
れば一目瞭然である。そう言う意味では、ここでの議論はむしろ真の意味での伝統回帰、大
半の日本人にとっては工業化社会以前の時代に戻り、そこからもう一度、令和の時代の新し
い日本社会のありようを再構築しようというプロセスに他ならないのである。