よむ、つかう、まなぶ。
感染症週報 2023年第43週(10月23日-10月29日) (10 ページ)
出典
公開元URL | https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2023.html |
出典情報 | 感染症週報 2023年第43週(10月23日-10月29日)(11/10)《国立感染症研究所》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
Infectious Diseases Weekly Report Japan
2023年 第43週
(10月23日〜 10月29日)
:通巻第25巻 第43号
注目すべき感染症
◆A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)がヒトに感染すると、その侵入部位や組織に
よって様々な症状を起こす。また、時に稀ながら劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因となる
ことがある。本項では、主に小児の間で急性咽頭炎として発生する疾患であるA群溶血性レン
サ球菌咽頭炎について述べる。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の潜伏期間は2~5日であり、突然の発熱、咽頭痛、全身倦怠
感によって発症し、しばしば嘔吐を伴う。通常発熱は3~5日以内に下がり、主症状は1週間以
内に消失する予後良好の疾患であるが、猩紅熱や急性糸球体腎炎に発展する場合がある。治
療にはペニシリン系抗菌薬が第1選択薬とされている。いずれの年齢でも起こり得るが、幼児期
から学童期の小児に多い。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、感染症発生動向調査の小児科定点把握の5類感染症であ
り、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から毎週報告されている(届出基準:https://
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-17.html)。新型コロナウイル
ス感染症流行前の2019年までの感染症発生動向調査のデータでは冬季および春から初夏にか
けての2つの報告数のピークが認められていた。2020年春以降は大きな流行はなく推移してい
たが、2023年は第19週頃から3年ぶりの流行を認めた。
2023年は、春先までは明らかな報告数の増加はみられなかったが、第19週(2023年5月8~
14日)頃から増加に転じ、第23週(2023年6月5~11日:定点当たり報告数1.67)にピークと
なった。その後は第33週(2023年8月14~20日)にかけて一度減少傾向となったが、その後再度
増加傾向となり、第39週(2023年9月25日~10月1日:定点当たり報告数1.97)から第43週
(2023年10月23~29日:定点当たり報告数3.05)にかけては、過去10年の当該週の定点当たり
報告数よりも多い報告数となっている(以下、報告数等は集計時点暫定値)。なお、2023年第
18週はゴールデンウィーク、第33週がお盆にあたり、届出数の解釈には注意が必要である。
2023年第1週(2023年1月2~8日)〜第43週(2023年10月23~29日)の年齢別・男女別・都
道府県別累積報告数の特徴を以下に示す。年齢別では、5歳(22,001例.定点当たり累積報告
数7.01)をピークに、3歳(14,446例.定点当たり累積報告数4.60)から7歳(15,309例.定点当た
り累積報告数4.88)において報告数が多かった(表1)。男女別では、男性が82,324例(54.5%)、
女性が68,864例
(45.5%)であり、男性に多かった。都道府県別では、福岡県(定点当たり累積報
告数114.78)、鳥取県(定点当たり累積報告数114.53)、長崎県(定点当たり累積報告数76.64)の
順に報告数が多かった(表2)。なお、本疾患の発生動向調査は小児科定点医療機関のみからの
報告であることから、成人における本疾患の動向の評価は困難である。
表 1. A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の年齢群別累積報告数(2023 年第 1~43
週)
表1. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の年齢群別累積報告数
(2023年第1〜43週)
2023 年
0歳
1歳
2歳
3歳
4歳
5歳
6歳
7歳
8歳
9歳
10~14 歳 15~19 歳 20 歳以上
928
5,242
8,764
14,446
19,449
22,001
19,494
15,309
11,904
8,508
16,714
1,916
6,513
合計
151,188
※上位 10 都道府県抜粋
表 2. A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の都道府県別定点当たり累積報告数(2023 年第 1~43 週)
表2. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の都道府県別定点当たり累積報告数
(2023年第1〜43週)
2023 年
福岡県
鳥取県
長崎県
富山県
山口県
大阪府
沖縄県
奈良県
京都府
114.78
114.53
76.64
75.31
69.79
69.14
68.77
64.91
63.03
北海道
全国
62.75
48.15
※上位10都道府県抜粋
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases
10
2023年 第43週
(10月23日〜 10月29日)
:通巻第25巻 第43号
注目すべき感染症
◆A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)がヒトに感染すると、その侵入部位や組織に
よって様々な症状を起こす。また、時に稀ながら劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因となる
ことがある。本項では、主に小児の間で急性咽頭炎として発生する疾患であるA群溶血性レン
サ球菌咽頭炎について述べる。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の潜伏期間は2~5日であり、突然の発熱、咽頭痛、全身倦怠
感によって発症し、しばしば嘔吐を伴う。通常発熱は3~5日以内に下がり、主症状は1週間以
内に消失する予後良好の疾患であるが、猩紅熱や急性糸球体腎炎に発展する場合がある。治
療にはペニシリン系抗菌薬が第1選択薬とされている。いずれの年齢でも起こり得るが、幼児期
から学童期の小児に多い。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、感染症発生動向調査の小児科定点把握の5類感染症であ
り、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から毎週報告されている(届出基準:https://
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-17.html)。新型コロナウイル
ス感染症流行前の2019年までの感染症発生動向調査のデータでは冬季および春から初夏にか
けての2つの報告数のピークが認められていた。2020年春以降は大きな流行はなく推移してい
たが、2023年は第19週頃から3年ぶりの流行を認めた。
2023年は、春先までは明らかな報告数の増加はみられなかったが、第19週(2023年5月8~
14日)頃から増加に転じ、第23週(2023年6月5~11日:定点当たり報告数1.67)にピークと
なった。その後は第33週(2023年8月14~20日)にかけて一度減少傾向となったが、その後再度
増加傾向となり、第39週(2023年9月25日~10月1日:定点当たり報告数1.97)から第43週
(2023年10月23~29日:定点当たり報告数3.05)にかけては、過去10年の当該週の定点当たり
報告数よりも多い報告数となっている(以下、報告数等は集計時点暫定値)。なお、2023年第
18週はゴールデンウィーク、第33週がお盆にあたり、届出数の解釈には注意が必要である。
2023年第1週(2023年1月2~8日)〜第43週(2023年10月23~29日)の年齢別・男女別・都
道府県別累積報告数の特徴を以下に示す。年齢別では、5歳(22,001例.定点当たり累積報告
数7.01)をピークに、3歳(14,446例.定点当たり累積報告数4.60)から7歳(15,309例.定点当た
り累積報告数4.88)において報告数が多かった(表1)。男女別では、男性が82,324例(54.5%)、
女性が68,864例
(45.5%)であり、男性に多かった。都道府県別では、福岡県(定点当たり累積報
告数114.78)、鳥取県(定点当たり累積報告数114.53)、長崎県(定点当たり累積報告数76.64)の
順に報告数が多かった(表2)。なお、本疾患の発生動向調査は小児科定点医療機関のみからの
報告であることから、成人における本疾患の動向の評価は困難である。
表 1. A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の年齢群別累積報告数(2023 年第 1~43
週)
表1. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の年齢群別累積報告数
(2023年第1〜43週)
2023 年
0歳
1歳
2歳
3歳
4歳
5歳
6歳
7歳
8歳
9歳
10~14 歳 15~19 歳 20 歳以上
928
5,242
8,764
14,446
19,449
22,001
19,494
15,309
11,904
8,508
16,714
1,916
6,513
合計
151,188
※上位 10 都道府県抜粋
表 2. A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の都道府県別定点当たり累積報告数(2023 年第 1~43 週)
表2. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者の都道府県別定点当たり累積報告数
(2023年第1〜43週)
2023 年
福岡県
鳥取県
長崎県
富山県
山口県
大阪府
沖縄県
奈良県
京都府
114.78
114.53
76.64
75.31
69.79
69.14
68.77
64.91
63.03
北海道
全国
62.75
48.15
※上位10都道府県抜粋
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases
10