（参考）

Facing difficult but unavoidable choices: Donor blood safety
and the deferral of men who have sex with men
Pierik R et al., Bioethics. 2022, 36, 8, 840-848.

MSMに対する供血延期と供血の安全性に関する困難だが不可避な選択ついて
 一部の輸血感染症（TTI）はMSMと関連があるため、諸外国の多くは性的に活発なMSMに対し供血延期措置を講じている。これは、性
的指向のみに基づいて大規模なグループを除外することであり、不当な差別と見なされている。
 オランダではMSMのHIV陽性率は一般人より100倍高いとされている。米国のMSM人口は450万人ともいわれ、そのうち14％はHIV陽性
とする推算もある。リスクは低いが0ではない他の供血者群を受け入れている今日において、血液の安全性を確保するためにMSMの残りの
86%を供血延期にする必要はない。
 近年、英国とオランダはMSMの供血延期に関する方針を変更し、⾧期間（英国は３か月、オランダは１年間）にわたり一人のみの性交
渉相手をもつMSMは供血可能とした。
 英国は性的パートナーに関する性別の質問を問診票から削除し、３か月以内に新しい又は複数のパートナーがいたとしてもアナルセックスを
していなければ供血可能とした。これは、非常に多くのドナーを除外するという点で課題が残るし、アナルセックスに焦点を当てることによって
MSMに対し事実上不公平な扱いとなっている。
 オランダでは４か月以内に他の男性と性的接触があったかを問診票で尋ね、新しい又は複数のパートナーがいる場合は供血延期となるが、
MSMを安易に除外しすぎている。より詳細（tailor-made）なリスク評価を行うことにより、不当な差別は最低限のものとなるであろう。個
別リスク評価が奏功するか否かはドナー教育とリスク行動に関する正確で偽りのない開示が得られるかにかかっている。実際的には、問診事
項が⾧く詳細になればなるほど不遵守のリスクが高くなり、また、差別的とみなされる可能性もある。
 MSM供血延期の問題は、安全な血液製剤の投与を受ける患者の権利と平等に扱われるMSMの権利の対立する二つの権利の問題を含
んでいる。
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