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女性医師による治療は女性患者で有益 (3 ページ)
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公開元URL | https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400238373.pdf |
出典情報 | 女性医師による治療は女性患者で有益(4/23)《東京大学》 |
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ストは通常、シフト制で勤務するため、医師は患者を選ぶことができません。また、患者が医
師を選ぶことができない状況を作り出すために、緊急入院した患者のみに分析を限定しました。
このように医師も患者を選べず、患者も医師を選べない状況では、女性医師と男性医師への「患
者の割付」が同じ病院の中で、ほぼランダムに近い状況と考えることができるため、患者の重
症度の違いが結果を歪めることを防ぐことができます。
2016 年から 2019 年の間に 42,114 人の医師が治療した 776,927 人の患者について、医師と患
者の性別の 4 つの組み合わせ(女性医師に治療された女性患者、男性医師に治療された女性患
者、女性医師に治療された男性患者、男性医師に治療された男性患者)ごとの患者アウトカム
(入院後 30 日以内の死亡率、退院後 30 日以内の再入院率)を分析しました。分析においては、
さまざまな患者の要因(年齢、性別、主傷病、併存疾患など)、医師の要因 (年齢、学位、年
間診療患者数)、および病院の固定効果を調整することのできる回帰モデルを使用し、それらの
影響を統計的に補正しました。
その結果、入院後 30 日以内の調整後死亡率は、女性患者では、女性医師に治療された場合
8.15%、男性医師に治療された場合 8.38%と、女性医師のほうが 0.24 ポイント(95%信頼区
間, 0.07〜0.41 ポイント)統計学的に有意に低いことがわかりました。一方で、男性患者では、
女性医師に治療された場合 10.23%、男性医師に治療された場合 10.15%と、女性医師の方が死
亡率が低い傾向はあるものの、統計学的に有意な差はありませんでした(差:-0.08 ポイント
[95%信頼区間, -0.29〜0.14 ポイント])。再入院率についても同様の傾向が認められました
(図 1)。これらの結果から女性医師の治療による患者への「利益」は女性患者において大きい
という事がわかりました。
〈今後の展望〉
これらの結果は、特に女性患者が質の高い治療を受けるためには、医療現場における女性医
師を増やす努力を続ける必要性を示しています。また結果のメカニズムは不明ですが、男性医
師が女性患者の症状を過小評価したり、女性患者が女性医師にはより気兼ねなく症状を打ち明
けられたりすることなどが、この結果の背景にあると研究チームでは推測しており、今後は、
そうした具体的なメカニズムをより詳細に解明することで、質の高い医療を男女平等に提供す
る方策を講じていく必要があると考えています。
〇関連情報:
「米国の 2 種類の医師(MD と DO)が 治療した入院患者の死亡率は違うのか? 」(2023/05/30)
https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2023/release_20230530.pdf
発表者・研究者等情報
東京大学 大学院医学系研究科
宮脇 敦士 特任講師
UCLA David Geffen School of Medicine
津川 友介 准教授
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師を選ぶことができない状況を作り出すために、緊急入院した患者のみに分析を限定しました。
このように医師も患者を選べず、患者も医師を選べない状況では、女性医師と男性医師への「患
者の割付」が同じ病院の中で、ほぼランダムに近い状況と考えることができるため、患者の重
症度の違いが結果を歪めることを防ぐことができます。
2016 年から 2019 年の間に 42,114 人の医師が治療した 776,927 人の患者について、医師と患
者の性別の 4 つの組み合わせ(女性医師に治療された女性患者、男性医師に治療された女性患
者、女性医師に治療された男性患者、男性医師に治療された男性患者)ごとの患者アウトカム
(入院後 30 日以内の死亡率、退院後 30 日以内の再入院率)を分析しました。分析においては、
さまざまな患者の要因(年齢、性別、主傷病、併存疾患など)、医師の要因 (年齢、学位、年
間診療患者数)、および病院の固定効果を調整することのできる回帰モデルを使用し、それらの
影響を統計的に補正しました。
その結果、入院後 30 日以内の調整後死亡率は、女性患者では、女性医師に治療された場合
8.15%、男性医師に治療された場合 8.38%と、女性医師のほうが 0.24 ポイント(95%信頼区
間, 0.07〜0.41 ポイント)統計学的に有意に低いことがわかりました。一方で、男性患者では、
女性医師に治療された場合 10.23%、男性医師に治療された場合 10.15%と、女性医師の方が死
亡率が低い傾向はあるものの、統計学的に有意な差はありませんでした(差:-0.08 ポイント
[95%信頼区間, -0.29〜0.14 ポイント])。再入院率についても同様の傾向が認められました
(図 1)。これらの結果から女性医師の治療による患者への「利益」は女性患者において大きい
という事がわかりました。
〈今後の展望〉
これらの結果は、特に女性患者が質の高い治療を受けるためには、医療現場における女性医
師を増やす努力を続ける必要性を示しています。また結果のメカニズムは不明ですが、男性医
師が女性患者の症状を過小評価したり、女性患者が女性医師にはより気兼ねなく症状を打ち明
けられたりすることなどが、この結果の背景にあると研究チームでは推測しており、今後は、
そうした具体的なメカニズムをより詳細に解明することで、質の高い医療を男女平等に提供す
る方策を講じていく必要があると考えています。
〇関連情報:
「米国の 2 種類の医師(MD と DO)が 治療した入院患者の死亡率は違うのか? 」(2023/05/30)
https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2023/release_20230530.pdf
発表者・研究者等情報
東京大学 大学院医学系研究科
宮脇 敦士 特任講師
UCLA David Geffen School of Medicine
津川 友介 准教授
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