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感染症週報 2024年第26週(6月24日-6月30日) (11 ページ)

公開元URL https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2024.html
出典情報 感染症週報 2024年第26週(6月24日-6月30日)(7/12)《国立感染症研究所》
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Infectious Diseases Weekly Report Japan

2024年 第26週
(6月24日〜 6月30日)
:通巻第26巻 第26号

感染症の話
◆オロプーシェ熱とは
中南米で蔓延している熱性疾患で、オロプーシェウイルス(Oropouche virus)に感染するこ
とにより発症する。オロプーシェウイルスは節足動物媒介性ウイルスであり、主な媒介昆虫はヌ
カカ(Culicoides paraensis)である。

疫学
オロプーシェウイルスは、1955年にトリニダード・トバゴの発熱患者から分離・同定された。
以降、中南米全域でこれまでに50万人以上がオロプーシェウイルスに感染したと推定されてい
る。これまでにブラジル、エクアドル、パナマ、ペルー、トリニダード・トバゴ、コロンビア、ア
ルゼンチン、ボリビア、ベネズエラ、フランス領ギアナにおいて農村部や森林地帯を中心に患者
が報告されており、ブラジルでは特にアマゾン熱帯雨林を中心に複数の州で集団発生と散発感
染が報告された。1955年のトリニダード・トバゴでの発生以降、西インド諸島でウイルスが検
出されたのは2014年のハイチが初めてである。2024年にはキューバでも発生し、イタリアでも
キューバからの輸入症例が報告された。これはヨーロッパで初めてのオロプーシェウイルスによ
る輸入症例であった。

病原体
オロプーシェウイルスは、ブニヤウイルス目ペリブニヤウイルス科オルソブニヤウイルス属シン
ブ血清型群に分類される。オロプーシェウイルスのゲノムは、L、M、Sの3つの一本鎖(−)RNA
セグメントからなる。Sセグメント(0.95kb)は核蛋白質(N)と非構造蛋白質(NSs)をコードし、
Mセグメント(4.36kb)はウイルスの細胞への侵入を担い、さらにウイルス粒子構造を決定する
2つの糖蛋白質(Gn、Gc)と非構造蛋白質(NSm)からなるポリ蛋白質をコードする。またLセグ
メント(6.85kb)はRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)をコードする。オロプーシェウイルス
ゲノムは三分節化されているため、2つのウイルスが1つの細胞に同時感染したときにウイルス
ゲノムの再集合が起こることが観察されている。この現象によりオロプーシェウイルスの病原性
の変化やベクターに対する親和性の変化等が起こる可能性がある。さらにこれまでにオロプー
シェウイルスに近縁のイキトスウイルス、マドレ・デ・ディオスウイルスおよびペルドイスウイ
ルスが知られているが、これらのウイルスは、オロプーシェウイルスと共通のSおよびLセグメン
トと未知のウイルスのMセグメントをそれぞれ含有しているため、オロプーシェウイルスと未知
のウイルスによる再集合体であると考えられている。

感染環
オロプーシェウイルスの感染経路として森林と都市の両方でそれぞれ感染環が成立すること
が知られており、都市型サイクルでは主にヌカカ(C. paraensis)とヒト間で感染環が維持されて
いる。またネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)からもオロプーシェウイルスが分離されてい
る。森林型サイクルについては不明な点が多く明らかとなっていないが、ナマケモノ亜目、マー
モセット等の霊長目、齧歯目の哺乳類や鳥類からオロプーシェウイルスが検出されており、これ
ら脊椎動物と森林地帯に生息するヤブカ属やCoquillettidia 属等の蚊の間で感染環が維持され
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases

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