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資料3-3-② 西浦先生提出資料 (2 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00395.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(第116回 2/8)《厚生労働省》
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〇新型コロナウイルス感染症の対策では、原則として有症状者に着用を推奨していた従来と
異なり、コミュニティ全体で症状の有無に関わらずマスク着用が推奨されたり、義務化され
たりすることがあった(universal maskingなどと称される)。それは、上述の通り、無症
状の感染者から2次感染が起こり、また、多くの感染者が発病前に感染性を有するとき、自
宅以外での屋内空間で他者を感染させる性質があるためである。感染者が不織布マスクを着
用することによってこのような2次感染のリスクは軽減され得る(これは他者に感染させな
いための効果に相当する)。本課題に関する論文21編を系統的にレビューした研究による
と、マスク着用をコミュニティ全体で推奨した際、新規感染者数、入院患者数、死亡者数を
それぞれ減少させる効果があることが示唆された[7]。バングラデシュにおける地域レベル
でのクラスターランダム化比較試験では、マスク着用によるコミュニティの感染リスクの低
減を認めたが[8]、着用勧奨段階でのバイアス混入の可能性も指摘されており因果関係は十
分に立証されているわけではない[9]。小中学校においては、米国マサチューセッツ州の15
週間に渡る観察研究で、マスク着用の義務を解除した学校と義務を継続した学校の児童やス
タッフを比較した時、着用義務を解除した学校では感染リスクが1000人あたり44.9人(95%
信頼区間:32.6-57.1)増えたと報告されている[10]。
〇米国における研究では、流行対策の一部としてマスク着用が有効であることが示唆されて
いる。着用者が10%増加するにより、そうでない場合と比較して流行を3.53倍(95%信頼区
間:2.03-6.43)制御しやすくなる(マスク着用率が10%上昇することによって、実効再生
産数が1未満に落ちて流行が制御下に置かれるという度合いが3.53倍だけ増す)と推定され
ている[11]。世界6大陸の着用状況と流行制御の関連をベイズ階層モデルで分析した研究に
おいても、公共の場におけるマスクの着用は平均的なマスク着用率を達成している場合、着
用なしと比較して実効再生産数をおおむね19%下げることに貢献してきたとされる[12]。
3.マスク着用の呼びかけのあり方と諸外国での対応事例について
〇諸外国では、多くの場合マスク着用は強制力をともなうmask mandate(着用義務)として
マスク着用が対策の一部として実施されてきた(日本での呼び掛けとは大きく異なる扱いで
あった)。マスク着用に関する文化的背景が日本と大きく異なる欧州では、流行状況が悪化
した場合にのみマスク着用を呼び掛けることがある。例えば、ドイツでは欧州で最後まで継
続された長距離の交通機関のマスク着用義務を2023年2月に解除することを決めたが、保健
相は自発的にマスクを着用することを推奨することを呼び掛けている[13]。
〇これまでの集団行動動態に関する研究を通じて、マスクの着用は文化的な背景もあわせ
て、国によって大きく異なる経過を辿っている。その集団内でのマスク着用度合いは、(i)
公的機関からのマスク着用の指示と(ii) 社会的特徴(社会規範や同調傾向)の2つの要因に
依存することで知られる[14]。そのいずれかが弱まるとマスク着用率は低下した状態で安定
的に推移することになる。
〇韓国では、公共交通機関や病院、薬局など一部の施設を除いて屋内でのマスク着用義務を
解除する対応をしているが、多くの市民は継続しているとされる。シンガポールでは2022年
8月以降、屋外・屋内ともにマスク着用は義務ではないとしたが、公共交通機関および病
院、高齢者施設においては必ず着用することが推奨されている[15]。マスク着用に関するこ
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