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「外でちょっと立ち話をする相手」が近所にいる人の特徴 澤岡 詩野 (6 ページ)
出典
公開元URL | https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r03/zentai/pdf_index.html |
出典情報 | 令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果(6/14)《内閣府》 |
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になり、ちょっとした困りごとを気軽に呟けるような関係性に発展させていくこと、この
辺りからはじめていくのが本質といえるのではなかろうか?
そ こ で 本 稿 で は 、 顔 見 知 り に な る こ と で 生 ま れ る で あ ろ う 「 挨 拶 」、 加 え て 困 り ご と を
ちょっと呟けるような「立ち話」に着目し、特に「外でちょっと立ち話をする」関係性に
ついて分析を行った。結果からは、挨拶する関係性から立ち話をするお付き合いに発展す
る女性に対し、近所で会った際に挨拶はしても気軽な世間話を求めていない、無目的なお
しゃべりを苦手とする男性の姿が浮かび上がってきた。
加えて、男女ともに「外でちょっと立ち話」をしている人の方が「趣味をともにしてい
る」
「 お 茶 や 食 事 を 一 緒 に す る 」を し て い た 。女 性 の 場 合 は 、ご 近 所 の 顔 見 知 り と の 挨 拶 と
立ち話から、相手を誘ったり・誘われることで活動や体験を共にする関係に発展している
ことが考えられた。一方で男性の場合は、生涯学習やスポーツなどを共にするコンパニオ
ンシップがあることで、近所で出会った際には、その活動などに関する立ち話をする機会
が増えていることが予測された。
加えて本稿では、近所で「立ち話する」くらいの関係性でも孤独感を軽減する可能性が
示された。サポートの授受といったある程度の密度濃い関係性の効果については既存研究
で明らかにされてきたなかで、
「 立 ち 話 」程 度 で も よ い と い う 本 稿 の 分 析 結 果 は 意 味 の あ る
知見といえる。特に遠方に住む友人や元同僚などとの付き合いが中心の企業退職男性にお
いては、外出行動半径の縮小に伴う孤立化を抑止する効果が考えられる。
今後は、高齢層でも交流手段としてのオンライン活用が一般化し、対面で会うことが難
しくなっても、それらの手段で補完できることも予測される。しかし高齢期においては、
リ ア ル な 接 点 の 減 少 に 伴 い 、オ ン ラ イ ン は 機 能 し な く な る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。人 生 100
年 時 代 に お い て は 、距 離 的 な 制 約 の 少 な い 近 場 に「 あ い さ つ +α 」、
「 立 ち 話 す る 」位 の 関 係
性をもつことが大きなチカラになるともいえるのではなかろうか。
さらに「外でちょっと立ち話」は、別の活動に誘われるキッカケや、ワクチン接種予約
のできる医療機関を知るキッカケになったり、地域で安心安全に生活するための情報源と
も位置付けられる。今後は、立ち話を誘引する過程が男女で異なるという事実を前提に、
それらの他者を近所に増やしていくための働きかけを積極的に行っていくことが求められ
ている。地域づくりや地域包括ケアシステムの構築に関わる公的機関や専門職には、助け
合いや支え合いをいきなり目指すのではなく、
「 立 ち 話 す る 」程 度 で も 意 味 の あ る と い う 視
点から地域支援に取り組むことも肝要である。
161
辺りからはじめていくのが本質といえるのではなかろうか?
そ こ で 本 稿 で は 、 顔 見 知 り に な る こ と で 生 ま れ る で あ ろ う 「 挨 拶 」、 加 え て 困 り ご と を
ちょっと呟けるような「立ち話」に着目し、特に「外でちょっと立ち話をする」関係性に
ついて分析を行った。結果からは、挨拶する関係性から立ち話をするお付き合いに発展す
る女性に対し、近所で会った際に挨拶はしても気軽な世間話を求めていない、無目的なお
しゃべりを苦手とする男性の姿が浮かび上がってきた。
加えて、男女ともに「外でちょっと立ち話」をしている人の方が「趣味をともにしてい
る」
「 お 茶 や 食 事 を 一 緒 に す る 」を し て い た 。女 性 の 場 合 は 、ご 近 所 の 顔 見 知 り と の 挨 拶 と
立ち話から、相手を誘ったり・誘われることで活動や体験を共にする関係に発展している
ことが考えられた。一方で男性の場合は、生涯学習やスポーツなどを共にするコンパニオ
ンシップがあることで、近所で出会った際には、その活動などに関する立ち話をする機会
が増えていることが予測された。
加えて本稿では、近所で「立ち話する」くらいの関係性でも孤独感を軽減する可能性が
示された。サポートの授受といったある程度の密度濃い関係性の効果については既存研究
で明らかにされてきたなかで、
「 立 ち 話 」程 度 で も よ い と い う 本 稿 の 分 析 結 果 は 意 味 の あ る
知見といえる。特に遠方に住む友人や元同僚などとの付き合いが中心の企業退職男性にお
いては、外出行動半径の縮小に伴う孤立化を抑止する効果が考えられる。
今後は、高齢層でも交流手段としてのオンライン活用が一般化し、対面で会うことが難
しくなっても、それらの手段で補完できることも予測される。しかし高齢期においては、
リ ア ル な 接 点 の 減 少 に 伴 い 、オ ン ラ イ ン は 機 能 し な く な る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。人 生 100
年 時 代 に お い て は 、距 離 的 な 制 約 の 少 な い 近 場 に「 あ い さ つ +α 」、
「 立 ち 話 す る 」位 の 関 係
性をもつことが大きなチカラになるともいえるのではなかろうか。
さらに「外でちょっと立ち話」は、別の活動に誘われるキッカケや、ワクチン接種予約
のできる医療機関を知るキッカケになったり、地域で安心安全に生活するための情報源と
も位置付けられる。今後は、立ち話を誘引する過程が男女で異なるという事実を前提に、
それらの他者を近所に増やしていくための働きかけを積極的に行っていくことが求められ
ている。地域づくりや地域包括ケアシステムの構築に関わる公的機関や専門職には、助け
合いや支え合いをいきなり目指すのではなく、
「 立 ち 話 す る 」程 度 で も 意 味 の あ る と い う 視
点から地域支援に取り組むことも肝要である。
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