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脳科学の研究開発動向 (14 ページ)

公開元URL https://www.lifescience.mext.go.jp/2022/01/1040119.html
出典情報 ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第1回 1/19)《文部科学省》
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研究開発・技術事例
クライオ電顕(2017年ノーベル化学賞):我が国での開発が先
行したが、画像解析技術等の関連領域との融合に成功した英国
分子生物学研究所(MRC)が先導している。受容体の構造の解
明による新しい中枢神経系薬剤の開発が期待される。

JST・CRDS 「研究開発の俯瞰報告書」(2021) より抜粋

ニューロモデュレーション:fMRIとデコーディング技術を応
用した日本発のDecNefが、ASDやPTSD、強迫神経症など
の精神疾患に効果があり精神疾患の治療の新しい流れと目さ
れている。

タウオパシー:アルツハイマー病やパーキンソン病など多く
の神経変性疾患は異常タンパク質の凝集で起きる「タンパク
ウイルストレーサー、遺伝子導入法:ウイルス・トレーサーを利
質症」であることが明らかとなり、蓄積タンパク質の構造解
用した特定の投射経路への遺伝子導入技術が普及しつつある。
析により病態の理解が進み新しい診断・治療法開発に繋がる
CRISPR-Cas9の応用によるゲノム編集が普及し、個体の遺伝子
ことが期待される。
改変技術は安価かつ短期間になり、遺伝子治療への応用も期待
アルツハイマー治療:アデュカヌマブがFDAの迅速承認
される。
(2021)。光・音のガンマ刺激(40Hz)による治療法の可能性
脳透明化:深部組織を可視化する技術は日本発の技術を含め様々
(L.H.Tsai, 米国)。
な方法が開発された。
BMI:埋込み型電極を利用したブレイン・マシン・インター
二光子顕微鏡:10ミリ四方の広範囲や離れた2視野を同時に観察
フェース(BMI)のヒトへの応用は、2006年に米ブラウン
できるものが開発されている。ハンガリーや米国ではホログラ
大学のグループにより実現して以降実用化に向けた開発はあ
ム照明による3次元二光子顕微鏡などの技術開発。
まり進んでいなかった。2019年、イーロン・マスクが率い
るNeuralinkが、手術ロボットを用いて多数の電極を脳に埋
超小型内視鏡:Inscopix社(米)から自由行動下の小動物の脳深
め込みコンピュータとワイアレスに接続する統合BMIシステ
部からのイメージングが可能な超小型の内視鏡システムが販売
ムを公表。
されている。
光遺伝学、化学遺伝学:米国を中心に様々な光操作タンパク質が
開発されている。より広い領域やより長時間にわたって神経活
動を操作する、薬剤による化学遺伝学的な制御法(DREADD
法)が広く使われている。
コネクトーム:広い領域における電子顕微鏡の自動撮像技術を用
い、米国とドイツでコネクトーム研究が進み、マウス全脳の再
構築が試みられている。
© 2021 CRDS

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神経回路モデル:ニューラルネットワークモデルは、日本発
の学習理論が重要な基礎となり、これを階層化した深層
ニューラルネットをビッグデータで学習させるアプローチに
発展し、Google等の巨大企業が実用に結びつく研究開発を
進めている。一方、深層ニューラルネットワークの学習につ
いての理論的解明はあまり進展していないし、脳のようにわ
ずかな経験から学習するAIも実現していない。次代のAIの
開発のためにも理論神経科学の成果が期待される。