よむ、つかう、まなぶ。
感染症週報 2022年第5週(1月31日-2月6日) (7 ページ)
出典
公開元URL | https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/idwr/IDWR2022/idwr2022-05.pdf |
出典情報 | 感染症週報 2022年第5週(1月31日-2月6日)(2/18)《国立感染症研究所》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
Infectious Diseases Weekly Report Japan
2022年 第5週
(1月31日〜 2月6日)
:通巻第24巻 第5号
注目すべき感染症
◆感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様な病原体による症候群名である。ウイルスが占める割合が多いが、
細菌、寄生虫も本疾患の起因病原体である。細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、
サルモネラ、カンピロバクターなど、寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛
虫などがあげられる。ウイルス性のものではノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、ロ
タウイルス、腸管アデノウイルスなどがみられるが、その中でも、ノロウイルスによる感染性胃
腸炎は特に冬季に流行することで知られている(ノロウイルス感染症 2015/16 シーズン:
https://www.niid.go.jp/niid/ja/norovirus-m/norovirus-iasrtpc/7015-443t.html)、(ノロウイ
ルスの流行 2010/11〜2013/14シーズン:https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/777-diseasebased/na/norovirus/idsc/iasr-topic/4822-tpc413-j.html)。
ノロウイルスはプラス一本鎖RNAウイルスで、GI〜GXの遺伝子群(genogroup)に分類され
GIとGIIが主にヒトに感染する。ノロウイルスの感染経路としては、患者の糞便や嘔吐物から
ヒトの手指を介する経路、家庭や施設などヒト同士が接触する機会が多いところでのヒトから
ヒトへ感染する経路、感染した食品取扱者(無症状病原体保有者を含む)を介して汚染された
食品を食する場合の経路、汚染された食品や水を摂取する場合の経路などもあり、その感染力
は非常に強い。またアルコールへの抵抗性が強く、感染予防のためには手洗いの徹底、糞便・
嘔吐物の適切な処理等が重要である。感染から発症までの潜伏期間は概ね24〜48時間で、主
な症状は吐き気・嘔吐、下痢、腹痛、発熱である。ノロウイルスは糞便および嘔吐物に大量に
排出される。症状消失後も数週間、糞便中への排出が続き、1カ月以上排出が続く事例も報告
されている(https://idsc.niid.go.jp/iasr/31/369/dj3694.html)。乳幼児や高齢者等では、嘔吐、
下痢によって体力を消耗し、脱水症状を引き起こすこともある。特に高齢者では、嘔吐物によ
る誤嚥性肺炎を起こすこともあるので注意が必要である。現在有効なワクチンはなく、治療法
は対症療法となる。
感染症発生動向調査では、感染性胃腸炎は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関
(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週ごとに保健所に届け出なければならない。感染
性胃腸炎の週ごとの定点当たり報告数は、新型コロナウイルス感染症パンデミックが始まった
2020年では、第9週以降、毎週、2010〜2019年の同週の定点当たり報告数を下回ったが、
2021年の第45週以降は、同じくパンデミック中であるものの、2020年の同週の定点当たり報告
数を大きく上回り、第49〜51週は、2019年の同週の定点当たり報告数を上回った。なお、
2022年第1、3、4週も、2019年の同週の定点当たり報告数を上回り、第2週以降は毎週、過去
5年間の同時期の平均値(前週、当該週、後週の定点当たり報告数の5年間分、合計15週間分
の平均値)を上回っている。地理的な流行の推移をみると、第1週より報告の多くが九州地方
からなされているが、全国からも多くの報告がなされている。定点当たり報告数の上位5位を都
道府県別にみると、第1週は大分県、宮崎県、熊本県、佐賀県、兵庫県、第2週は山形県、熊本
県、宮崎県、佐賀県、大分県、第3週は大分県、山形県、宮崎県、佐賀県、宮城県、第4週は大
分県、山形県、香川県、福井県、宮崎県、第5週は大分県、福井県、山形県、香川県、三重県で
あった。直近の第5週(2022年1月31日〜2月6日)の定点当たり報告数は5.74となり(感染性胃
腸炎の年別・週別発生状況:https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/164704gastro.html)、前週(7.10)よりは減少したものの、過去5年間の同時期の平均値(前週、当該
週、後週の定点当たり報告数の5年間分、合計15週間分の平均値)を上回っており、引き続き
発生動向を見守る必要がある。
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases
7
2022年 第5週
(1月31日〜 2月6日)
:通巻第24巻 第5号
注目すべき感染症
◆感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様な病原体による症候群名である。ウイルスが占める割合が多いが、
細菌、寄生虫も本疾患の起因病原体である。細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、
サルモネラ、カンピロバクターなど、寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛
虫などがあげられる。ウイルス性のものではノロウイルス、サポウイルス、アストロウイルス、ロ
タウイルス、腸管アデノウイルスなどがみられるが、その中でも、ノロウイルスによる感染性胃
腸炎は特に冬季に流行することで知られている(ノロウイルス感染症 2015/16 シーズン:
https://www.niid.go.jp/niid/ja/norovirus-m/norovirus-iasrtpc/7015-443t.html)、(ノロウイ
ルスの流行 2010/11〜2013/14シーズン:https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/777-diseasebased/na/norovirus/idsc/iasr-topic/4822-tpc413-j.html)。
ノロウイルスはプラス一本鎖RNAウイルスで、GI〜GXの遺伝子群(genogroup)に分類され
GIとGIIが主にヒトに感染する。ノロウイルスの感染経路としては、患者の糞便や嘔吐物から
ヒトの手指を介する経路、家庭や施設などヒト同士が接触する機会が多いところでのヒトから
ヒトへ感染する経路、感染した食品取扱者(無症状病原体保有者を含む)を介して汚染された
食品を食する場合の経路、汚染された食品や水を摂取する場合の経路などもあり、その感染力
は非常に強い。またアルコールへの抵抗性が強く、感染予防のためには手洗いの徹底、糞便・
嘔吐物の適切な処理等が重要である。感染から発症までの潜伏期間は概ね24〜48時間で、主
な症状は吐き気・嘔吐、下痢、腹痛、発熱である。ノロウイルスは糞便および嘔吐物に大量に
排出される。症状消失後も数週間、糞便中への排出が続き、1カ月以上排出が続く事例も報告
されている(https://idsc.niid.go.jp/iasr/31/369/dj3694.html)。乳幼児や高齢者等では、嘔吐、
下痢によって体力を消耗し、脱水症状を引き起こすこともある。特に高齢者では、嘔吐物によ
る誤嚥性肺炎を起こすこともあるので注意が必要である。現在有効なワクチンはなく、治療法
は対症療法となる。
感染症発生動向調査では、感染性胃腸炎は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関
(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週ごとに保健所に届け出なければならない。感染
性胃腸炎の週ごとの定点当たり報告数は、新型コロナウイルス感染症パンデミックが始まった
2020年では、第9週以降、毎週、2010〜2019年の同週の定点当たり報告数を下回ったが、
2021年の第45週以降は、同じくパンデミック中であるものの、2020年の同週の定点当たり報告
数を大きく上回り、第49〜51週は、2019年の同週の定点当たり報告数を上回った。なお、
2022年第1、3、4週も、2019年の同週の定点当たり報告数を上回り、第2週以降は毎週、過去
5年間の同時期の平均値(前週、当該週、後週の定点当たり報告数の5年間分、合計15週間分
の平均値)を上回っている。地理的な流行の推移をみると、第1週より報告の多くが九州地方
からなされているが、全国からも多くの報告がなされている。定点当たり報告数の上位5位を都
道府県別にみると、第1週は大分県、宮崎県、熊本県、佐賀県、兵庫県、第2週は山形県、熊本
県、宮崎県、佐賀県、大分県、第3週は大分県、山形県、宮崎県、佐賀県、宮城県、第4週は大
分県、山形県、香川県、福井県、宮崎県、第5週は大分県、福井県、山形県、香川県、三重県で
あった。直近の第5週(2022年1月31日〜2月6日)の定点当たり報告数は5.74となり(感染性胃
腸炎の年別・週別発生状況:https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/164704gastro.html)、前週(7.10)よりは減少したものの、過去5年間の同時期の平均値(前週、当該
週、後週の定点当たり報告数の5年間分、合計15週間分の平均値)を上回っており、引き続き
発生動向を見守る必要がある。
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases
7