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資料9 権丈 構成員提出資料 (2 ページ)

公開元URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai4/gijisidai.html
出典情報 こども未来戦略会議(第4回 5/22)《内閣官房》
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能を、経済学では「消費の平準化(consumption smoothing)」と呼び、社会保険という再分
配政策が果たす主な機能である(ちなみに、社会保障給付費の約 9 割は社会保険)

・高齢期に必要となる消費の平準化のための制度が充実すれば少子化が起こり、その現象
は「個人的利益と集団的利益のコンフリクト」(=合成の誤謬)をもたらすことは、1934
年に既にスウェーデンのミュルダール夫妻が『人口問題の危機』の中で指摘していた。そ
して彼らは、私が第 1 回会議で発言したように「少子化を問題視するのであれば解決策は
2つしかなく、1つは、高齢期向けの社会保障をなくしていくこと。いま一つは、出産と
育児に関する消費を、例えば介護のように社会化していく」しかないと類似のことを説
き、ミュルダール夫妻は民主的国家において取り得る選択肢として普遍主義的な子育て費
用の社会化を唱えていた(彼らは「消費の社会化」と呼んでいた)
。他面、子育て費用の
社会化により少子化の進行が緩和すれば、医療、介護、年金保険などの給付水準は高ま
り、これら高齢期向けの社会保険制度の持続可能性は高まる。
したがって、資料 1.2.②にある「企業を含め社会・経済の参加者全体が連帯し、公平な
立場で、広く支え合っている新たな枠組み」について、少子化の原因でありかつ少子化緩
和の便益を受ける既存の医療、介護、年金保険などの社会保険制度の活用は、十分に候補
のひとつになり得るのではないか。なお、医療保険は後期高齢者医療制度、介護保険は第
1 号被保険者に関する特別徴収というチャネルで年金給付とつながりを持っているため
に、このチャネルから公的年金保険は、こども・子育て支援のための「新たな枠組み」に
協力することができる。そして、「新たな枠組み」には、医療保険と介護保険の両方を視
野に入れるのが、両社会保険とこども・子育て政策との相互関係を考えれば、自然であろ
う(現在、健康保険の保険料賦課対象となる標準報酬月額の上限は 139 万円であり、介護
保険第 2 号被保険者の保険料賦課ベースは健康保険法に準じている)

・ただし、社会保険制度が財源調達に協力するにしても、この方式は安定財源の確保には
有益だが、財源調達力には限度がある。そして第 1 回会議で私は「経済界をはじめ多くの
費用負担者の価値を感じる政策と、研究による効果が確認されている政策にはさほど違い
はありません」と論じている中の後者、すなわち研究によって効果があまり確認されてい
ない政策に、社会保険制度が協力する根拠は薄い。児童手当のような、将来に向けて給付
の制御が難しい現金給付に関しては、社会保険からの支援に今回限りというような制限を
設け、将来、それを超える部分については、税を用いることを費用負担者たちと事前に契
約しておくことも、
「費用負担者の意向を酌み取って、受益者はもちろん、そしてできれ
ば協力者として支える人たちの満足感、効用を高めるような制度を設計する工夫」
(第 1
回発言)のひとつとしては重要であるように思える。
・既存の社会保険制度の活用を新たな枠組みの中で考えるにしても、社会保険制度がこど
も・子育て政策を支援する力を強化することは視野に入れておきたい。というのも、今
後、後期高齢者医療制度の給付が人口構成の影響を受けて増えることが見込まれている。

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