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2017年05月08日(月)

注目の記事 [特集] 2018年度同時改定 改定率はどのように決まるのか?

現在、論点になっている主な改革項目(5/8)《厚生政策情報センター》
発信元:厚生政策情報センター   カテゴリ: 30年度同時改定 診療報酬
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 例年6月に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針2017」)の策定に向けて、経済財政諮問会議の議論が活発化してきた。一方で財務省も4月に開催された、財政制度等審議会(予算編成の基本方針などをまとめる、財務大臣の諮問機関)・財政制度分科会の会合に、社会保障制度の改革の方向性について踏み込んだ提案を行った。両者の議論は、年末の2018年度予算編成とも絡み、診療・介護報酬同時改定の改定率や改定項目、薬価制度改革の行方に大きな影響を及ぼすことになる。そこでWIC REPORT編集部では、この機会に経済財政諮問会議(諮問会議)や財政制度等審議会(財政審)と診療報酬改定の関係を整理しておくこととする。
 
 
◆2016~2018年度の社会保障費の伸びを5,000億円に抑制、骨太方針
 
 最初に前回2016年度改定の流れを振り返ってみることにしよう。
 2015年6月30日に閣議決定された「骨太の方針2015」は、財政健全化のために国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を2020年度までに黒字化し、その後、債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す目標を立てた。社会保障関係費については、過去3年間の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)にとどまっていることから、その基調を2018年度までの3年間継続する方針を明記。この結果、2016~2018年度の社会保障関係費の単年度の伸びを約5,000億円(1.5兆円÷3年)に抑制する政府方針が決まった。また、これを受けて各分野の主要改革項目(社会保障分野は44項目)の実現スケジュールなどを定めた「経済・財政再生計画 改革工程表」が作成されることとなった。
 
 ところが同年8月の2016年度予算概算要求では、高齢化に伴う社会保障関係費の自然増分として6,700億円が計上された。このため年末の予算編成では政府目標の5,000億円との間の1,700億円のギャップをどのようにして埋めるかが最大の焦点となった。
 
 
◆政府目標との差額1,700億円の工面が予算編成最大の焦点に
 
 当初は、診療報酬の大幅なマイナス改定は避けられないのではないかとの見方が大勢を占めていた。
 実際、財政審・財政制度分科会が11月末にまとめた「平成28年度(2016年度)予算の編成等に関する建議」は、「骨太の方針2015」の目標に沿って、概算要求時には6,700億円となっていた社会保障関係費の自然増分を「確実に高齢化による増加分の範囲内(5,000億円弱)にしていくことを求めたい」との方針を明示。そのための具体策として、診療報酬本体(医薬品や医療材料以外の技術料に該当する部分)のマイナス改定に加えて、市場実勢価格を反映させるための薬価の引き下げ、骨太の方針に盛り込まれた後発医薬品の使用促進、調剤報酬の見直し―などの実施を要求していた。
 
 しかしながら、2016年度診療報酬改定における本体の改定率はプラス0.49%(498億円増)で決着。ネット(技術料に医薬品・医療材料を加えた診療報酬全体)では0.84%のマイナス改定となったが、薬価・材料価格改定分(▲1.33%、▲1,362億円)から本体引き上げ分を差し引いた財源(▲864億円)だけでは削減目標に遠く及ばず、改革工程表に記載があったメニューを中心に、▽医薬品価格の適正化(後発医薬品の新規収載時の薬価引き下げ、長期収載品[後発医薬品のある先発医薬品]の特例的引き下げ基準の見直し、市場拡大再算定の特例の実施など、▲502億円)、▽大型門前薬局に対する評価の適正化(▲38億円)、▽経腸栄養用製品に係る給付の適正化(▲42億円)、▽湿布薬の1処方当たりの枚数制限等(▲27億円)、▽協会けんぽ国庫補助の見直し等(▲205億円)―などの制度改正が断行されることになった。
 
 2018年度も、社会保障費の自然増を5,000億円程度に抑制する政府目標の対象年度。前回改定と同じ構図で、8月の予算概算要求額との差額の工面が焦点になることは、ほぼ間違いない。財政審・財政制度分科会の建議書で診療報酬本体のマイナス改定が求められるであろうことも既定路線。診療報酬本体の改定と薬価・材料価格の引き下げ財源を充ててもなお削減額に届かない場合は、現在、諮問会議の社会保障ワーキンググループや財政審・財政制度分科会で議論されている、▽かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入、▽【7対1入院基本料】の算定要件厳格化、▽長期収載品の保険給付額引き下げ―などの中から財政効果が期待できる項目が選択されることになるだろう(参照)
 
 まずは6月にもまとまる「骨太の方針2017」でどこまで踏み込んだ提案がされるのか、今後の議論の推移を注視したい。

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