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【古谷委員提出資料】 (2 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34470.html |
出典情報 | 社会保障審議会介護給付費分科会(第221回 8/7)《厚生労働省》 |
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1.インフレ経済下における報酬改定の在り方について
(1)賃金スライド及び物価スライドの導入
昨年来の諸物価高騰を受けて、賃上げの機運が高まっている。本年度の春闘では正社員の
賃上げ率が平均3.58%と30年ぶりの高水準となり、パートや契約社員など非正規労働
者の賃上げ率も時給ベースで平均5.01%と記録上最も高い水準となった。最低賃金につ
いても物価高騰に対応し、全国平均で過去最大の上げ幅となる時給1,000円以上となる
ことが決定したと報じられている。
いずれも「新しい資本主義」を目指す政府の強いリーダーシップによるものである。骨太
方針2023によれば、
「四半世紀にわたるデフレ経済からの脱却」、
「高い賃金上昇率を持
続的なものとすべく、
(略)構造的賃上げの実現を通じた賃金と物価の好循環へとつなげる。
」
とされている。
介護保険制度は、まさに法施行後四半世紀にわたりデフレ経済下にあり、インフレを経験
していない。法施行後約20年余の間、物価は概ね安定的に推移してきた。このため、消費
税率引き上げ等の制度的要因を除き、3 年に 1 度の報酬改定のインターバルでこれまで大き
な問題はなかったが、上記の「構造的賃上げの実現を通じた賃金と物価の好循環」が始まれ
ば、今のままでは制度の持続可能性が危ぶまれる。すなわち、高い賃金上昇率が持続する局
面ともなれば、ただでさえ全産業平均賃金との格差がある中、3 年に 1 度の介護報酬改定で
は、その間に格差が一層広がり、介護人材の異業種への流出に歯止めがかからないことが危
惧される。
このため、介護報酬改定サイクルの中間年においては、経費の性質に応じて、賃金上昇率
や物価上昇率の変動によって改定する賃金スライド及び物価スライドの仕組みの導入を検
討すべきである。
(2)報酬基準上の費用比率の明示
全国老施協が行った収支状況等調査によれば、特養の人件費率は、制度施行後間もなくの
平成14年度では57.3%であったのものが、令和3年度には66.2%となっており、
この間大きな変化が見られる。経営における人件費率の管理は厳密になされるのが一般で
あり、労働集約的産業の代表のひとつである介護事業においてはなおさらである。
しかしながら、国はこれまで報酬基準上の人件費率について明らかにしていない。地域区
分を定めるにあたり国家公務員の調整手当を参考にした経緯から「地域区分間の差異を算
定するために用いられる人件費率」は公表されているものの、事務職員、清掃員、運転手、
給食調理員、医師などの給与費を除外した不十分なものである。
報酬基準上の費用比率が明確ではない現在の状況では、介護報酬見直しの際に改定率が
適正かどうかの検証も困難であり、介護事業経営においてどの程度の人件費率が妥当なのか
の目安も分からない。また、利用者にとっても介護報酬が何に使われているのか実態に合致
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(1)賃金スライド及び物価スライドの導入
昨年来の諸物価高騰を受けて、賃上げの機運が高まっている。本年度の春闘では正社員の
賃上げ率が平均3.58%と30年ぶりの高水準となり、パートや契約社員など非正規労働
者の賃上げ率も時給ベースで平均5.01%と記録上最も高い水準となった。最低賃金につ
いても物価高騰に対応し、全国平均で過去最大の上げ幅となる時給1,000円以上となる
ことが決定したと報じられている。
いずれも「新しい資本主義」を目指す政府の強いリーダーシップによるものである。骨太
方針2023によれば、
「四半世紀にわたるデフレ経済からの脱却」、
「高い賃金上昇率を持
続的なものとすべく、
(略)構造的賃上げの実現を通じた賃金と物価の好循環へとつなげる。
」
とされている。
介護保険制度は、まさに法施行後四半世紀にわたりデフレ経済下にあり、インフレを経験
していない。法施行後約20年余の間、物価は概ね安定的に推移してきた。このため、消費
税率引き上げ等の制度的要因を除き、3 年に 1 度の報酬改定のインターバルでこれまで大き
な問題はなかったが、上記の「構造的賃上げの実現を通じた賃金と物価の好循環」が始まれ
ば、今のままでは制度の持続可能性が危ぶまれる。すなわち、高い賃金上昇率が持続する局
面ともなれば、ただでさえ全産業平均賃金との格差がある中、3 年に 1 度の介護報酬改定で
は、その間に格差が一層広がり、介護人材の異業種への流出に歯止めがかからないことが危
惧される。
このため、介護報酬改定サイクルの中間年においては、経費の性質に応じて、賃金上昇率
や物価上昇率の変動によって改定する賃金スライド及び物価スライドの仕組みの導入を検
討すべきである。
(2)報酬基準上の費用比率の明示
全国老施協が行った収支状況等調査によれば、特養の人件費率は、制度施行後間もなくの
平成14年度では57.3%であったのものが、令和3年度には66.2%となっており、
この間大きな変化が見られる。経営における人件費率の管理は厳密になされるのが一般で
あり、労働集約的産業の代表のひとつである介護事業においてはなおさらである。
しかしながら、国はこれまで報酬基準上の人件費率について明らかにしていない。地域区
分を定めるにあたり国家公務員の調整手当を参考にした経緯から「地域区分間の差異を算
定するために用いられる人件費率」は公表されているものの、事務職員、清掃員、運転手、
給食調理員、医師などの給与費を除外した不十分なものである。
報酬基準上の費用比率が明確ではない現在の状況では、介護報酬見直しの際に改定率が
適正かどうかの検証も困難であり、介護事業経営においてどの程度の人件費率が妥当なのか
の目安も分からない。また、利用者にとっても介護報酬が何に使われているのか実態に合致
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