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資料3-3 西浦先生提出資料 (144 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00333.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(第75回 3/9)《厚生労働省》
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COVID-19 に関連する死亡と評価の考え方について
京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野
2022 年 3 月 8 日
【COVID-19 に関連する死亡の概要】
COVID-19 は、検査や診断が全ての感染者に行き届いていない中で観察が行われており、また、自然
史として極めて軽症あるいは不顕性感染で済む者も含まれていることから、関連する死亡のインパクト
の定量化は複雑に入り組んだものとなる。特に、死亡には疾病による直接的な影響を受けたものでなく、
国や地方自治体の対策に伴って COVID-19 以外の状況に影響を受けて起こるものもある。加えて、基礎
疾患を持つ者や高齢者の間では、流行に伴って医療提供体制が逼迫し、通常医療が制限されたり、不要不
急の診断や治療が制限されたりすることで他の疾病が悪化した者もいるだろうし、他方、患者が受診を
控えることに応じて持病のコントロールが悪化した者もいるだろう。更に、心疾患や脳血管疾患に代表
されるような救急医療の提供の遅れによって転帰が影響を受けた者もいるだろう。一方、感染症全般に
関して言えば、インフルエンザの流行が下火になったように、COVID-19 以外の感染症罹患リスクが減
ることによって関連する死亡が激減することもある。法医学で異状死(unnatural death)と定義される交
通事故や自殺、毒殺は死因審問に時間を要し、丁寧な死因別の分析が求められる。がんや慢性疾患に関し
て言えば、その診断の遅れや医療サービスの変更に伴う自然史への影響などは、今後長い時間をかけて
COVID-19 のインパクトとして影響が認められるものと考えられる。
上記で言及した 1 つひとつの要素は国内外を通じて、少しずつエビデンスとして報告され、定量化さ
れる途上にある。COVID-19 に関連する死亡は、予期せぬものも含めて、上記のようにパンデミックと
社会との関わりを 1 つひとつ紐解きつつ、丁寧な分析を施すことで明らかにすることが求められる。
【死亡の定義】
そのような中、わが国における COVID-19 に関連する死亡の観察情報は、死因に関わらず新型コロナ
ウイルス感染症と診断された死亡者の総数を計上することで検討されてきた。そのうち、
(i)

直接死亡とは新型コロナウイルスの感染とそれが引き起こす病態によって死亡したと判断され
たものであり、

(ii)

間接死亡とは新型コロナウイルス感染症が間接的にかかわることによって起きたものである。

後者は、新型コロナウイルス感染症の間接的な関わりの程度が強いもの(循環器疾患や癌などの悪化が
起こったもの)に加え、関わりの程度が不明なもの(どれくらい COVID-19 が影響したかわからない)
を含む。関わりが不明なものには社会的要因(通常医療の制限や受診控え、フレイルの増悪などに関わ
る)に影響を受けた死亡も含む。
【死亡の定量化に係る問題】
COVID-19 に関連する死亡や死亡リスクは主に 2 つの方法を用いて定量化される。1 つは死亡届の死
因情報など医師の診断数に基づく方法であり、もう 1 つは超過死亡の推定にあるような統計学的手法を
用いて観察されていない間接死亡を含めて推定する方法である。
前者は死亡の確かさとして常に登録ベースの情報であることから妥当性に優れていることで知られる。
ただし、診断された者のみを含むため診断バイアスや報告バイアスの影響を多大に受け、直接・間接死亡
ともに過小評価となる。また、直接死亡の場合も定義に準拠するならば因果関係の立証を要するが、それ
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