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国勢調査と人口動態統計の個票データリンケージにより日本人の教育歴ごとの死因別死亡率を初めて推計 (5 ページ)
出典
公開元URL | https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2024/0328/index.html |
出典情報 | 国勢調査と人口動態統計の個票データリンケージにより日本人の教育歴ごとの死因別死亡率を初めて推計(3/28)《国立がん研究センター》 |
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解釈と限界
本研究では教育歴により年齢調整死亡率が異なることが観察されましたが、教育歴が死亡率に直接
影響しているわけではなく、死亡率と関係する生活習慣や健康行動などを反映する代替指標となってい
る可能性が考えられます。本研究は性、年齢、教育歴以外の人口属性・社会経済状態(職業や所得な
ど)、喫煙などの生活習慣、健康行動、既往歴など、死亡率に影響する可能性がある特性すべてを考慮
して分析したわけではありません。したがって、本研究の結果は個人それぞれの教育歴そのものが、そ
の人の死亡率に影響する因果関係を推定したものではありません。教育歴の違いが生活習慣など死亡
率に影響するリスク要因や健康行動と関連しており、それが死亡率の違いにつながっていると考えられ
ます。実際、死亡率に影響するリスク要因や検診受診率などの健康行動が社会経済状態と関連するこ
とが報告されています。死亡率を含めた様々な指標で健康格差のモニタリングを行うことにより、疾病負
荷の高い(喫煙や塩分過多などの既知のリスク要因が多く、死亡率や罹患率が高い)集団を同定し、す
べての国民に届くよう、禁煙や生活習慣の改善に関する対策の立案につなげることが求められます。
本研究では以下の通りいくつかの限界があるため、解釈には注意が必要です。
①
女性では分析に用いたサンプル人口で推定した死亡率が全人口の死亡率より高いことから、死
亡率および格差指標を過大推計している可能性があります。
②
リンケージキーの組み合わせが他の人と重複しない人のみをサンプル人口として抽出している
ため、人口の多い市区町村に住む人がサンプル人口に含まれる可能性が低くなります。分析の
際には地域分布を補正していますが、人口の多い市区町村の特徴を十分に結果に反映できて
いない可能性があります。
③
国勢調査では教育歴が「不詳」の人が約 12%含まれていましたが、分析では除外しました。統計
学的にこの欠損値を補完した分析を行った結果、ほぼ同じ結果となることが確認されています。
国際的な取り組みと今後の展望
健康格差の縮小は、がん対策を含む保健医療政策における世界的な課題です。世界保健機関
(WHO)、国際がん研究機関(IARC)などの国際機関は、健康格差を優先課題の一つと位置付け、モニタ
リングと社会的決定要因への対処を推進しています(資料 1~2)。米国、英国、オーストラリア、カナダな
ど、諸外国の保健医療計画およびがん対策計画では、健康格差の縮小と公平性の確保が全体目標や
重要な要素の一つに掲げられています(資料 3~7)。いずれの国でも公的統計を用いた健康格差のモ
ニタリングが実施されており、例えば米国の「Healthy People 2030」 (資料 3)では、それぞれの目標の
健康指標について人口全体のトレンド推移とともに、地域、教育歴、婚姻状況、人種などのグループごと
の結果が示されるだけでなく、死亡率比などの健康格差指標についても参照が可能です。また、欧州連
合(EU)も域内の健康格差の縮小を目標としており、そのポータルサイト(資料 8)では健康格差指標と対
策事例を紹介しています。2023 年 5 月に発足し国立がん研究センターも参加する国際的ながん協力の
枠組み「G7 Cancer」においても、格差の是正が重点分野の一つに掲げられています(資料 9)。健康格
差縮小のための対策としては、保健医療サービスへのアクセスの改善、経済的補助やインセンティブ、
地域コミュニティの活用など、社会環境の整備による対策が推奨されています。実際、海外ではたばこ
の値上げやがん検診受診のナビゲーターを育成する取り組みが健康格差の縮小につながったことが報
告されています。
今後の展望として、2020 年国勢調査と人口動態統計の分析では、より小地域単位の分析によりデー
5
本研究では教育歴により年齢調整死亡率が異なることが観察されましたが、教育歴が死亡率に直接
影響しているわけではなく、死亡率と関係する生活習慣や健康行動などを反映する代替指標となってい
る可能性が考えられます。本研究は性、年齢、教育歴以外の人口属性・社会経済状態(職業や所得な
ど)、喫煙などの生活習慣、健康行動、既往歴など、死亡率に影響する可能性がある特性すべてを考慮
して分析したわけではありません。したがって、本研究の結果は個人それぞれの教育歴そのものが、そ
の人の死亡率に影響する因果関係を推定したものではありません。教育歴の違いが生活習慣など死亡
率に影響するリスク要因や健康行動と関連しており、それが死亡率の違いにつながっていると考えられ
ます。実際、死亡率に影響するリスク要因や検診受診率などの健康行動が社会経済状態と関連するこ
とが報告されています。死亡率を含めた様々な指標で健康格差のモニタリングを行うことにより、疾病負
荷の高い(喫煙や塩分過多などの既知のリスク要因が多く、死亡率や罹患率が高い)集団を同定し、す
べての国民に届くよう、禁煙や生活習慣の改善に関する対策の立案につなげることが求められます。
本研究では以下の通りいくつかの限界があるため、解釈には注意が必要です。
①
女性では分析に用いたサンプル人口で推定した死亡率が全人口の死亡率より高いことから、死
亡率および格差指標を過大推計している可能性があります。
②
リンケージキーの組み合わせが他の人と重複しない人のみをサンプル人口として抽出している
ため、人口の多い市区町村に住む人がサンプル人口に含まれる可能性が低くなります。分析の
際には地域分布を補正していますが、人口の多い市区町村の特徴を十分に結果に反映できて
いない可能性があります。
③
国勢調査では教育歴が「不詳」の人が約 12%含まれていましたが、分析では除外しました。統計
学的にこの欠損値を補完した分析を行った結果、ほぼ同じ結果となることが確認されています。
国際的な取り組みと今後の展望
健康格差の縮小は、がん対策を含む保健医療政策における世界的な課題です。世界保健機関
(WHO)、国際がん研究機関(IARC)などの国際機関は、健康格差を優先課題の一つと位置付け、モニタ
リングと社会的決定要因への対処を推進しています(資料 1~2)。米国、英国、オーストラリア、カナダな
ど、諸外国の保健医療計画およびがん対策計画では、健康格差の縮小と公平性の確保が全体目標や
重要な要素の一つに掲げられています(資料 3~7)。いずれの国でも公的統計を用いた健康格差のモ
ニタリングが実施されており、例えば米国の「Healthy People 2030」 (資料 3)では、それぞれの目標の
健康指標について人口全体のトレンド推移とともに、地域、教育歴、婚姻状況、人種などのグループごと
の結果が示されるだけでなく、死亡率比などの健康格差指標についても参照が可能です。また、欧州連
合(EU)も域内の健康格差の縮小を目標としており、そのポータルサイト(資料 8)では健康格差指標と対
策事例を紹介しています。2023 年 5 月に発足し国立がん研究センターも参加する国際的ながん協力の
枠組み「G7 Cancer」においても、格差の是正が重点分野の一つに掲げられています(資料 9)。健康格
差縮小のための対策としては、保健医療サービスへのアクセスの改善、経済的補助やインセンティブ、
地域コミュニティの活用など、社会環境の整備による対策が推奨されています。実際、海外ではたばこ
の値上げやがん検診受診のナビゲーターを育成する取り組みが健康格差の縮小につながったことが報
告されています。
今後の展望として、2020 年国勢調査と人口動態統計の分析では、より小地域単位の分析によりデー
5