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感染症週報 2024年第15週(4月8日-4月14日) (13 ページ)
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公開元URL | https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2024.html |
出典情報 | 感染症週報 2024年第15週(4月8日-4月14日)(4/26)《国立感染症研究所》 |
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Infectious Diseases Weekly Report Japan
2024年 第15週
(4月8日〜 4月14日)
:通巻第26巻 第15号
注目すべき感染症
◆RSウイルス感染症
RSウイルス感染症はRSウイルス(RSV)を病原体とする、乳幼児に多く認められる急性呼吸
器感染症である。潜伏期は2〜8日であり、典型的には4〜6日とされている。主な感染経路は、
患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手指や物品等を介した接触感
染である。生後1歳までに50%以上の人が、2歳までにほぼ100%の人がRSVの初感染を受ける
が、再感染によるRSウイルス感染症も普遍的に認められる。初感染の場合、発熱、鼻汁などの
上気道症状が出現し、うち約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現するとされ
る。乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の約50〜90%がRSVによるとされる。また、早
産の新生児や早産で出生後6カ月以内の乳児、月齢24カ月以下で免疫不全を伴う、あるいは
血行動態の異常を伴う先天性心疾患や肺の基礎疾患を有する乳幼児、あるいはダウン症候群
の児は重症化しやすい傾向がある。さらに、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者にお
けるRSウイルス感染症では、肺炎の合併が認められることも明らかになっている。ただし、年
長の児や成人における再感染例では、重症となることは少ない。
RSウイルス感染症が重症化した場合には、酸素投与、輸液や呼吸器管理などの対症療法が
主体となる。RSV感染の重症化予防のため、早産児、気管支肺異形成症や先天性心疾患等を
持つハイリスク児を対象に、ヒト化抗RSV-F蛋白単クローン抗体であるパリビズマブの公的医
療保険の適用が認められている。また、乳幼児を対象としたヒト化抗RSV-F蛋白単クローン
抗体製剤で、より長期間の効果が期待できるニルセミマブが2024年3月に承認を受けた。
一方、60歳以上のハイリスク者を対象とした組換えRSウイルスワクチンが2023年9月に承
認を受け、さらに、移行抗体による乳幼児の感染予防を目的とした、妊婦を対象とする組
換えRSウイルスワクチンが2024年1月に承認を受けた。同製剤は2024年3月に60歳以上を
対象とする適応追加の承認を受けた。
RSウイルス感染症は、感染症発生動向調査の5類感染症小児科定点把握対象疾患であり、
全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から毎週報告されている。定点医療機関において、医
師が症状や所見よりRSウイルス感染症を疑い、かつ検査によってRSウイルス感染症と診断さ
れた者が報告の対象となる。本疾患の発生動向調査は小児科定点医療機関のみからの報告で
ある。
RSウイルス感染症の定点当たり報告数のピークは、2019年は第37週(3.45)、2021年は第
28週(5.99)、2022年は第30週(2.35)、2023年は第27週(3.38)にみられた(本号23ページ「グラ
フ総覧」参照)。2020年は一年を通じて週当たり報告数が少なく、ピークもみられなかった。
2019年と比べて、2021~2023年はピークに達する週が早く、2023年は2019〜2023年の5年間
でピークに達した週が最も早かった。また、2023年はピークに達するまでの継続的な増加傾向
が始まる週も2021年同様、第18週と最も早かった。
2024年の第1~15週の報告数は継続的に増加しており、各年の第12~15週までの定点当た
り報告数を比較すると、第13週以降、過去5年間の同時期と比べて定点当たり報告数は最も
多くなっている。
2019年:第12週(0.50)、第13週(0.49)、第14週(0.44)、第15週(0.52)
2020年:第12週(0.16)、第13週(0.11)、第14週(0.11)、第15週(0.09)
2021年:第12週(0.69)、第13週(0.74)、第14週(0.81)、第15週(1.12)
2022年:第12週(0.13)、第13週(0.13)、第14週(0.10)、第15週(0.13)
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases
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2024年 第15週
(4月8日〜 4月14日)
:通巻第26巻 第15号
注目すべき感染症
◆RSウイルス感染症
RSウイルス感染症はRSウイルス(RSV)を病原体とする、乳幼児に多く認められる急性呼吸
器感染症である。潜伏期は2〜8日であり、典型的には4〜6日とされている。主な感染経路は、
患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手指や物品等を介した接触感
染である。生後1歳までに50%以上の人が、2歳までにほぼ100%の人がRSVの初感染を受ける
が、再感染によるRSウイルス感染症も普遍的に認められる。初感染の場合、発熱、鼻汁などの
上気道症状が出現し、うち約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現するとされ
る。乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の約50〜90%がRSVによるとされる。また、早
産の新生児や早産で出生後6カ月以内の乳児、月齢24カ月以下で免疫不全を伴う、あるいは
血行動態の異常を伴う先天性心疾患や肺の基礎疾患を有する乳幼児、あるいはダウン症候群
の児は重症化しやすい傾向がある。さらに、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者にお
けるRSウイルス感染症では、肺炎の合併が認められることも明らかになっている。ただし、年
長の児や成人における再感染例では、重症となることは少ない。
RSウイルス感染症が重症化した場合には、酸素投与、輸液や呼吸器管理などの対症療法が
主体となる。RSV感染の重症化予防のため、早産児、気管支肺異形成症や先天性心疾患等を
持つハイリスク児を対象に、ヒト化抗RSV-F蛋白単クローン抗体であるパリビズマブの公的医
療保険の適用が認められている。また、乳幼児を対象としたヒト化抗RSV-F蛋白単クローン
抗体製剤で、より長期間の効果が期待できるニルセミマブが2024年3月に承認を受けた。
一方、60歳以上のハイリスク者を対象とした組換えRSウイルスワクチンが2023年9月に承
認を受け、さらに、移行抗体による乳幼児の感染予防を目的とした、妊婦を対象とする組
換えRSウイルスワクチンが2024年1月に承認を受けた。同製剤は2024年3月に60歳以上を
対象とする適応追加の承認を受けた。
RSウイルス感染症は、感染症発生動向調査の5類感染症小児科定点把握対象疾患であり、
全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から毎週報告されている。定点医療機関において、医
師が症状や所見よりRSウイルス感染症を疑い、かつ検査によってRSウイルス感染症と診断さ
れた者が報告の対象となる。本疾患の発生動向調査は小児科定点医療機関のみからの報告で
ある。
RSウイルス感染症の定点当たり報告数のピークは、2019年は第37週(3.45)、2021年は第
28週(5.99)、2022年は第30週(2.35)、2023年は第27週(3.38)にみられた(本号23ページ「グラ
フ総覧」参照)。2020年は一年を通じて週当たり報告数が少なく、ピークもみられなかった。
2019年と比べて、2021~2023年はピークに達する週が早く、2023年は2019〜2023年の5年間
でピークに達した週が最も早かった。また、2023年はピークに達するまでの継続的な増加傾向
が始まる週も2021年同様、第18週と最も早かった。
2024年の第1~15週の報告数は継続的に増加しており、各年の第12~15週までの定点当た
り報告数を比較すると、第13週以降、過去5年間の同時期と比べて定点当たり報告数は最も
多くなっている。
2019年:第12週(0.50)、第13週(0.49)、第14週(0.44)、第15週(0.52)
2020年:第12週(0.16)、第13週(0.11)、第14週(0.11)、第15週(0.09)
2021年:第12週(0.69)、第13週(0.74)、第14週(0.81)、第15週(1.12)
2022年:第12週(0.13)、第13週(0.13)、第14週(0.10)、第15週(0.13)
Ministry of Health, Labour and Welfare / National Institute of Infectious Diseases
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