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資 料 1 感染症安全対策体制整備事業(令和5年度)実績報告 (1 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42777.html |
出典情報 | 薬事審議会 血液事業部会 安全技術調査会(令和6年度第1回 8/30)、運営委員会(第2回 8/30)(合同会議)《厚生労働省》 |
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令和6年度第1回安全技術調査会
資料1
感染症安全対策体制整備事業 (令和 5 年度) 実績報告
事業代表者: 水上 拓郎 国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター センター長
報告者: 関 洋平 国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター第一室 室長
1.
事業の目的
輸血用血液製剤を含む血液製剤は、ヒト血液を原料とするためウイルス等の病原体混入のリスクが常に
存在しており、日本では HIV や、HCV、HBV、梅毒、パルボウイルス B19 等に関しては、血清学的検査や
核酸増幅検査が実施されており極めて高い安全性が保持されてきた。しかし、グローバル化が進む現代に
おいて、国内ではほとんど発生例のないような感染症、特に海外での新興・再興感染症が国内に輸入され、
問題となることが少なくない。そこで、平成 25 年度より新たな病原体が移入した場合に備えて国立感染症
研究所と厚生労働省血液対策課、日本赤十字社とが連携し 「感染症安全対策体制整備事業」 を開始した。
本事業では日本の献血血液への混入リスクのある病原体について、血中ウイルス量の低い無症候感染
者が献血する場合を想定し、高感度の核酸検査法の開発や標準品・参照品パネルを整備し、将来的な血
液の安全性対策に資することを目的としている (図 A, 表 A)。令和 5 年度は、2022 年 5 月以降、欧米を中
心として流行し、国内においても実際に輸入感染症例の発生が報告されたエムポックスについて、その原
因ウイルスの核酸検査のための国内参照品を整備し、多施設により値付けのための共同測定を行なった。
2.
実施内容
エムポックスウイルスに対する高感度核酸検査法の国内標準品の整備
グローバル化が進み訪日外国人数、出国日本人数が年々増加している。特に、新型コロナウイルス感染
症のパンデミックにより人流が一時抑制されていたが、2023 年 5 月の WHO による「国際的に懸念される公
衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の宣言終了や、国内における感染症法上の位置付けが「新型インフルエ
ンザ等感染症」から「5 類感染症」へ類型変更されたことに伴い様々な規制が緩和され、急速に人流が回復
しているところであり、日本には存在しない病原体が旅行者や帰国者から持ち込まれるリスクが増大してい
ると考えられる。
エムポックス(Mpox)は、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルス(MPXV)によ
る感染症で、齧歯類をはじめとする野生動物との接触によりヒトに感染する。ヒト-ヒト感染に関しては、濃厚
接触者の感染や、リネン類を介した医療従事への感染事例が報告されていたが、稀であった。しかし、
2022 年春にヒト-ヒト感染により Mpox が世界的に流行し、WHO は 2022 年 7 月 23 日に PHEIC に該当す
ると宣言した。2023 年 5 月に同宣言は解除されているが、本邦においても輸入感染症として 2022 年 7 月
25 日に国内 1 例目の患者が報告されて以降、2023 年 3 月初旬をピークに、以後も散発的な患者の発生
が報告され、2024 年 8 月 2 日現在、248 名の症例が確認されている。症例の 99%は男性であり、その多く
が男性同性間性的接触者(MSM)であったことから、特定の集まり等を介して世界的に広まったと推察され
ている。潜伏期間は 5〜21 日(平均 12 日)とされ、無症候感染者からの感染事例も報告されていることか
ら、無症候感染者が献血ドナーとなる可能性があり、実際に 2023 年、タイでの流行時に発症前の患者から
の献血により輸血に至った事例も報告されている。現在のところ輸血による MPXV 感染事例は報告されて
いないが、無症候感染者を含む MPXV 感染者の血液からウイルス DNA が検出されていることや、2022 年
に流行した MPXV は比較的症状が軽いクレード 2b に属していたが、コンゴにおいて 2023 年以降、より病
原性の強いクレード 1a の感染者が数多く報告され、また、性交渉による感染事例も報告されていることから
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資料1
感染症安全対策体制整備事業 (令和 5 年度) 実績報告
事業代表者: 水上 拓郎 国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター センター長
報告者: 関 洋平 国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター第一室 室長
1.
事業の目的
輸血用血液製剤を含む血液製剤は、ヒト血液を原料とするためウイルス等の病原体混入のリスクが常に
存在しており、日本では HIV や、HCV、HBV、梅毒、パルボウイルス B19 等に関しては、血清学的検査や
核酸増幅検査が実施されており極めて高い安全性が保持されてきた。しかし、グローバル化が進む現代に
おいて、国内ではほとんど発生例のないような感染症、特に海外での新興・再興感染症が国内に輸入され、
問題となることが少なくない。そこで、平成 25 年度より新たな病原体が移入した場合に備えて国立感染症
研究所と厚生労働省血液対策課、日本赤十字社とが連携し 「感染症安全対策体制整備事業」 を開始した。
本事業では日本の献血血液への混入リスクのある病原体について、血中ウイルス量の低い無症候感染
者が献血する場合を想定し、高感度の核酸検査法の開発や標準品・参照品パネルを整備し、将来的な血
液の安全性対策に資することを目的としている (図 A, 表 A)。令和 5 年度は、2022 年 5 月以降、欧米を中
心として流行し、国内においても実際に輸入感染症例の発生が報告されたエムポックスについて、その原
因ウイルスの核酸検査のための国内参照品を整備し、多施設により値付けのための共同測定を行なった。
2.
実施内容
エムポックスウイルスに対する高感度核酸検査法の国内標準品の整備
グローバル化が進み訪日外国人数、出国日本人数が年々増加している。特に、新型コロナウイルス感染
症のパンデミックにより人流が一時抑制されていたが、2023 年 5 月の WHO による「国際的に懸念される公
衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の宣言終了や、国内における感染症法上の位置付けが「新型インフルエ
ンザ等感染症」から「5 類感染症」へ類型変更されたことに伴い様々な規制が緩和され、急速に人流が回復
しているところであり、日本には存在しない病原体が旅行者や帰国者から持ち込まれるリスクが増大してい
ると考えられる。
エムポックス(Mpox)は、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルス(MPXV)によ
る感染症で、齧歯類をはじめとする野生動物との接触によりヒトに感染する。ヒト-ヒト感染に関しては、濃厚
接触者の感染や、リネン類を介した医療従事への感染事例が報告されていたが、稀であった。しかし、
2022 年春にヒト-ヒト感染により Mpox が世界的に流行し、WHO は 2022 年 7 月 23 日に PHEIC に該当す
ると宣言した。2023 年 5 月に同宣言は解除されているが、本邦においても輸入感染症として 2022 年 7 月
25 日に国内 1 例目の患者が報告されて以降、2023 年 3 月初旬をピークに、以後も散発的な患者の発生
が報告され、2024 年 8 月 2 日現在、248 名の症例が確認されている。症例の 99%は男性であり、その多く
が男性同性間性的接触者(MSM)であったことから、特定の集まり等を介して世界的に広まったと推察され
ている。潜伏期間は 5〜21 日(平均 12 日)とされ、無症候感染者からの感染事例も報告されていることか
ら、無症候感染者が献血ドナーとなる可能性があり、実際に 2023 年、タイでの流行時に発症前の患者から
の献血により輸血に至った事例も報告されている。現在のところ輸血による MPXV 感染事例は報告されて
いないが、無症候感染者を含む MPXV 感染者の血液からウイルス DNA が検出されていることや、2022 年
に流行した MPXV は比較的症状が軽いクレード 2b に属していたが、コンゴにおいて 2023 年以降、より病
原性の強いクレード 1a の感染者が数多く報告され、また、性交渉による感染事例も報告されていることから
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