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資料3-10 古瀬先生提出資料 (3 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00348.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(第99回 9/14)《厚生労働省》 |
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死亡のリスクを 31%(モルヌピラビル;(6))または 89%(ニルマトレルビル/リトナビル;
(7))減少させた。いずれの抗ウイルス薬も経口投与であるため外来診療での投薬が可能で
あるが、発症から診断・処方までのタイムラグや、適応の範囲、薬剤相互作用の課題もあり、
確保されている薬剤量(ラゲブリオ約 160 万人分、パキロビッド約 200 万人分)や感染者
数に比して現在までの処方数は少ない。例えば、2022 年 7~8 月に日本で報告された累計の
感染者数は約 850 万人、重症化するリスクの高い 60 歳以上だけでも約 130 万人であるが
(8)、同期間の薬剤投与実績報告数はラゲブリオが約 35 万人分、パキロビッドが約 3 万人
分である (9)。
臨床的に意義のある抗ウイルス効果を期待するためには、インフルエンザでも COVID19 においても、発症・診断からできるだけ早期に抗ウイルス薬が投与されることが望まし
い。日本では、インフルエンザ様疾患の患者は迅速抗原検査で検査されており、インフルエ
ンザに対する抗ウイルス薬は広く処方されている。一方で COVID-19 に関しては、前段落
で述べた課題に加えて、抗ウイルス薬を処方する際の同意書取得や登録センターへの手続
きなど事務的な作業が煩雑であるといったハードルもある。処方の遅れによるリスクを低
減するためには、迅速な診断と抗ウイルス薬へのアクセスが重要であり、今後は COVID19 においても抗ウイルス薬をインフルエンザに対するものと同じ様に用いていくことが想
定される。核酸検査(PCR 法・LAMP 法)や抗原検査といった微生物学的な検査の結果に
よらない臨床診断にもとづいた処方についても、検討の余地があるかもしれない。
また、ワクチン接種済みであっても高齢者などのハイリスク群が感染した場合には、それ
以外の一般集団よりも重症化する可能性が高くなる。さらに、ワクチンを接種することので
きないハイリスク者も一定数いる。こういった観点から、ハイリスク層を守るために予防的
に用いることのできる薬剤も重要であると考えられる。実際、インフルエンザ・HIV 感染
症・水痘/帯状疱疹・サイトメガロウイルス感染症といったウイルス感染症に対しては予防
内服が行われることもある。日本では注射薬であるチキサゲビマブ/シルガビマブ(エバシ
ェルド)が COVID-19 に対して予防的に用いられる抗ウイルス薬として承認を得ているが、
濃厚接触者やハイリスク患者に対して、より簡便に用いることのできる予防的な経口薬の
開発が待たれる。
抗ウイルス薬を広く処方することで懸念されるのは、薬剤耐性変異株の出現である。実験
条件下では、ニルマトレルビル/リトナビルに対する耐性変異株が出現したことが報告され
ている。同様の薬剤耐性変異が臨床現場で生じる頻度は恐らく低いものの (7)、それが検出
された事例はあり、伝播によって薬剤耐性変異株の感染が広がる恐れもある (10)。薬剤耐
性変異の生じにくい抗ウイルス薬の開発が必要であり、変異株の出現や広がりを監視する
サーベイランスも求められる。
(7))減少させた。いずれの抗ウイルス薬も経口投与であるため外来診療での投薬が可能で
あるが、発症から診断・処方までのタイムラグや、適応の範囲、薬剤相互作用の課題もあり、
確保されている薬剤量(ラゲブリオ約 160 万人分、パキロビッド約 200 万人分)や感染者
数に比して現在までの処方数は少ない。例えば、2022 年 7~8 月に日本で報告された累計の
感染者数は約 850 万人、重症化するリスクの高い 60 歳以上だけでも約 130 万人であるが
(8)、同期間の薬剤投与実績報告数はラゲブリオが約 35 万人分、パキロビッドが約 3 万人
分である (9)。
臨床的に意義のある抗ウイルス効果を期待するためには、インフルエンザでも COVID19 においても、発症・診断からできるだけ早期に抗ウイルス薬が投与されることが望まし
い。日本では、インフルエンザ様疾患の患者は迅速抗原検査で検査されており、インフルエ
ンザに対する抗ウイルス薬は広く処方されている。一方で COVID-19 に関しては、前段落
で述べた課題に加えて、抗ウイルス薬を処方する際の同意書取得や登録センターへの手続
きなど事務的な作業が煩雑であるといったハードルもある。処方の遅れによるリスクを低
減するためには、迅速な診断と抗ウイルス薬へのアクセスが重要であり、今後は COVID19 においても抗ウイルス薬をインフルエンザに対するものと同じ様に用いていくことが想
定される。核酸検査(PCR 法・LAMP 法)や抗原検査といった微生物学的な検査の結果に
よらない臨床診断にもとづいた処方についても、検討の余地があるかもしれない。
また、ワクチン接種済みであっても高齢者などのハイリスク群が感染した場合には、それ
以外の一般集団よりも重症化する可能性が高くなる。さらに、ワクチンを接種することので
きないハイリスク者も一定数いる。こういった観点から、ハイリスク層を守るために予防的
に用いることのできる薬剤も重要であると考えられる。実際、インフルエンザ・HIV 感染
症・水痘/帯状疱疹・サイトメガロウイルス感染症といったウイルス感染症に対しては予防
内服が行われることもある。日本では注射薬であるチキサゲビマブ/シルガビマブ(エバシ
ェルド)が COVID-19 に対して予防的に用いられる抗ウイルス薬として承認を得ているが、
濃厚接触者やハイリスク患者に対して、より簡便に用いることのできる予防的な経口薬の
開発が待たれる。
抗ウイルス薬を広く処方することで懸念されるのは、薬剤耐性変異株の出現である。実験
条件下では、ニルマトレルビル/リトナビルに対する耐性変異株が出現したことが報告され
ている。同様の薬剤耐性変異が臨床現場で生じる頻度は恐らく低いものの (7)、それが検出
された事例はあり、伝播によって薬剤耐性変異株の感染が広がる恐れもある (10)。薬剤耐
性変異の生じにくい抗ウイルス薬の開発が必要であり、変異株の出現や広がりを監視する
サーベイランスも求められる。