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電動モルセレータに係る「使用上の注意」の改訂について (8 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190382_00010.html
出典情報 薬事・食品衛生審議会 医療機器・再生医療等製品安全対策部会(令和3年度第2回 3/16)《厚生労働省》
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電動モルセレータ使用についての見解
子宮筋腫の術前診断で手術を行い、術後に始めて悪性と判明する頻度は、モルセレータを用いる頻度の比較的高い
(54.8% 使用)腹腔鏡下子宮筋腫核出術で19,853 例中7例、0.04%(平均年齢 37.8歳)でありました。なお、悪性と診
断された7例中1 例に播種が起こっています。この播種例にはモルセレータが使用されていました。一方、モルセレータを
用いる頻度の比較的低い(4.6%使用)腹腔鏡下子宮全摘術(腹腔鏡補助下子宮全摘術、腟上部切断術を含む)において術
後に始めて悪性と判明する頻度は48,916例中65例、0.13%(平均年齢 50.7歳)でしたが、うち9例に播種(全体の
0.009%)が起こっています。すなわちわが国では、モルセレータを用いる頻度の高い腹腔鏡下子宮筋腫核出術において、
子宮筋腫の術前診断で手術を行いながら術後に始めて悪性と判明する頻度は米国FDA の発表より極めて低いことがわか
りました。本統計は2014年におこなったアンケートとほぼ同様な傾向を示しており、術後悪性と判明する頻度が米国と比
べ低い理由は、わが国ではMRI 検査、超音波検査、細胞診、血清LDH 測定などの術前検査により悪性疾患の除外診断が
的確に行われているためと考えます。しかしながら、術後にはじめて悪性と判明する症例があること、子宮肉腫以外の悪
性疾患が術後に判明している例もみられること、さらに現時点では電動モルセレータの使用が播種の原因になっていると
は断言できないものの、電動モルセレータ使用後の播種例があることが分かりました。電動モルセレータは、腹腔鏡下
筋腫核出術においては54.8%(2014年 80.4%)、腹腔鏡下子宮摘出術および腟上部切断術においては、4.6%(2014年
8.9%)の症例で使用されており、2014年アンケートより使用頻度が減少していますが、バッグを用いた子宮筋腫および
子宮組織の回収は、今回アンケートにおいて使わない、と回答した83施設を除き、何らかの形で組織回収バッグを使っ
ていることも明らかになっていますので、日本においては電動モルセレータ使用時においても十分な注意を自発的に図
っていることが推察されます。
腹腔鏡下手術はその侵襲の小ささから、痛みが少ない、社会復帰が早いなどのメリットを持っており、モルセレータは
そのメリットをいかすための機器であります。モルセレータを使用しない場合は、創部が一部大きくなり、腹腔鏡手術の
メリットを生かせない可能性が生じます。バッグを使用して電動モルセレータを使用した場合のメリットについては未だ知見
が不足しています。バッグ使用下に子宮筋腫を体外回収した場合とバッグ非使用で電動モルセレータを使用した場合の違い
を検討したランダム化比較試験のメタ解析1)によると、前者は手術時間がやや長くなる以外に両群に差異がみられず、
有益であるかどうかの結論が得られておりません。術後に悪性疾患が見られる頻度が少ないことがその原因と考えられ
ます。しかし悪性疾患に対し電動モルセレータを使用すると、病変の飛散は一定頻度で生じているため、モルセレータ
の使用が万が一予後を悪くするとすれば看過することができないことも事実であります。開腹、腹腔鏡の術式を問わず、
100% 確実な術前診断は不可能であるものの、術前検査で可能な限り病変の良悪性について検討することは重要といえま
す。

アンケート結果や以上の見解を踏まえ、今後も引き続き低侵襲手術のメリットを生かすために、術前検査で子宮頸がん、
子宮体がん、子宮肉腫など悪性疾患の除外に努めると共に、以下の基準のとおり、被実施者へインフォームドコンセント
をさらに徹底し、被実施者に十分な情報提供の実施と、被実施者自身の自己決定に基づき使用する事を勧告します。また、
引き続き機器添付文書の【警告】【禁忌・禁止】【使用上の注意】を順守するようにしてください。

【電動モルセレータ使用に関する適応基準】
電動モルセレータ使用が適切と考えられる対象
1.

術前検査(MRI 検査、超音波検査、細胞診、組織診、血清LDH 測定など)によって悪性の除外診断が適正に
行われている場合。

2.

被実施者へのインフォームドコンセントにより、開腹、腹腔鏡下を問わず100%確実な術前診断は不可能であり、
想定されていなかったがん組織、とくに子宮肉腫を腹腔内に播種させるリスクがある可能性を被実施者が承諾さ
れ電動モルセレータ使用を希望された場合。

3.

米国においては、年齢50歳以上または閉経後である被実施者は電動モルセレータ使用対象外であること、電動
モルセレータ使用時には子宮および子宮筋腫組織の回収にバッグを使うことが義務付けられていることの説明

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