よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


プレスリリース ヒトiPS細胞から作製した心筋球移植による心臓再生に成功 (2 ページ)

公開元URL https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/topics/2024/04/26186522.php
出典情報 ヒトiPS細胞から作製した心筋球移植による心臓再生に成功-移植後の不整脈を抑えた細胞移植治療が可能に(4/26)《信州大学ほか》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

1. 研究の背景
心筋梗塞を含む全ての心疾患の終末像である心不全患者が国内外で増加しています。重症

心不全に対する根本的治療法は心臓移植しかなく、ドナー心臓の不足が社会的課題となって
います。そこで、ヒト iPS 細胞を用いた心筋再生治療は心臓移植に代わる治療法として注目

されていますが、移植後の腫瘍化および不整脈のリスクが臨床応用における大きなハードル
となっていました。腫瘍化のリスクに関しては、慶應大のグループが、心筋細胞のみを純化
精製する手法を開発することで、リスクを低減することに成功しています(Tohyama S, et al.
Cell Metabolism 2016, iScience 2020)。

一方で、移植後の不整脈のリスクに関しては、信州大学のグループにより、これまで凍結

保存された心筋細胞を様々な動物モデルに移植し、移植直後から約数か月間に渡って、心室
頻拍(VT)等の不整脈が出現することが明らかにされてきましたが(Shiba Y, Nature 2016)、

具体的な解決策は存在しませんでした。

今回、本共同研究チームは、臨床用のヒト iPS 細胞から臨床グレードの培養液を用いて、

高純度の心筋細胞(主に心室筋)を製造し、心筋球を作製しました。有効性と安全性をヒト
に最も近い霊長類モデルで検証するために、心筋梗塞を発症させたカニクイザルにその心筋

球を移植したところ、移植した心筋細胞が長期に渡って生着し、サルの心機能を回復させる
ことに成功しました。また、従来の報告と比較して移植後に発生する心室性不整脈の副作用
が格段に少ないことを明らかにしました。

この研究成果は、移植後に発生する心室性不整脈という大きな課題を解決し、心臓の再生

医療の実現化を大きく加速するものと考えます。
2. 研究の成果

(1)臨床用ヒト iPS 細胞と同等の iPS 細胞から心筋細胞および心筋球を作製しました。

臨床用 iPS 細胞と同等の iPS 細胞から心筋細胞へ分化誘導を行い、純化精製を行うことによ
り 99%以上の純度の心筋細胞が得られました。作製した心筋細胞は、パッチクランプ法によ

る解析により心室筋タイプの活動電位パターンを示し、βアドレナリン受容体アゴニストで
あるイソプロテレノール、カリウムチャネルブロッカーであるアミオダロン、HCN ブロッカ

ーであるイバブラジンに対して用量依存的に応答することを確認しました。免疫染色により、
ほとんどの細胞がα-アクチニン陽性、ビメンチン陰性の心筋細胞であり、それらの多くは心

室筋マーカーである MLC2V を発現していました。また、コネキシン 43 や N-カドヘリン等

の接着タンパクを豊富に発現していました。