よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


血液バイオマーカーを用いて、超早期段階での脳アミロイドPET検査結果の予測を実現-アルツハイマー病の早期診断と治療に光- (2 ページ)

公開元URL https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2024/release_20240523.pdf
出典情報 血液バイオマーカーを用いて、超早期段階での脳アミロイドPET検査結果の予測を実現-アルツハイマー病の早期診断と治療に光-(5/23)《東京大学》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

これまでの検討では、人種間差の有無や、特に日本人での有用性に関する大規模なデータはほ
とんど得られていませんでした。
AD の早期・無症候段階にあたるプレクリニカル期 AD(注 3)や軽度認知障害(MCI)に相当
するプロドローマル期(注 4)において得られた本研究の成果により、今後 AD の早期段階での
適時適切な診断と、予防・治療への途が開かれるものと期待されます。

発表内容
<背景>
本邦の認知症患者数は 2022 年時点で 443 万人、2060 年には 645 万人に達し、認知症の予備
軍とされる軽度認知障害(MCI)の人も 632 万人まで増えると推計されています(2024 年厚生
労働省研究班)。AD はその半数以上を占め、超高齢社会を迎えた日本の重要な課題となってい
ます。2023 年からわが国でも、AD 脳に蓄積し、発症の原因となるアミロイド β(Aβ)に対し
て作用する抗 Aβ 抗体薬の臨床使用が始まり、脳内 Aβ 蓄積評価の重要性が高まっています。
脳における Aβ の蓄積を推定する方法としては、アミロイド PET 検査や脳脊髄液検査によるバ
イオマーカー(注 5)の測定などが実施されていますが、検査可能な医療機関が限られ高額と
なること、脳脊髄液の採取や放射線被曝に伴う侵襲性などの問題から、より簡便な評価法への
期待が高まっています。過去 30 年にわたり、血液を用いた AD 脳病理変化の推定は困難でした
が、近年血液バイオマーカーの開発が加速し、AD 患者の血漿中に検出される Aβ やリン酸化タ
ウなどの病因タンパク質の変化を測定することにより、PET 検査や脳脊髄液検査に匹敵する診
断能力が得られる可能性が示されてきました。しかし認知症期に先行する MCI 期や、さらに早
い無症候期(プレクリニカル期)などの超早期段階における性能は十分に実証されておらず、
さらに人種差の検討や、日本人における検討も十分に行われていませんでした。
<研究成果>
研究グループは、Aβ の蓄積が始まっているが無症状であり、発症の前駆時期と考えられる
「プレクリニカル期」や、認知機能の低下はあるが認知症に至っていない「プロドローマル期」
(MCI 期)の AD の人を診断・追跡し、予防・治療法の実現を目指す J-TRC オンサイト研究を 2019
年から開始し、2024 年 4 月末の時点で、700 名の参加者に対してアミロイド PET スキャン、血
液バイオマーカー測定等の検査を行ってきました。今回、474 名の血液検体を対象に、質量分
析法を用いた Aβ(1-42) (以下 Aβ42)や Aβ(1-40) (以下 Aβ40)の測定(島津テクノリサーチ
社に委託し測定)、Meso Scale Discovery プラットフォームを用いたスレオニン 217 リン酸化
タウ(p-tau217)
(イーライ・リリー社研究所との共同研究により測定; 注 2)を定量し、測定
結果や臨床データを組み合わせることにより、脳アミロイド検出の標準となる PET 画像の視覚
的 診 断 結 果 を ど の 程 度 正 確 に 予 測 で き る か を 検 討 し ま し た 。 ROC ( Receiver Operating
Characteristic)解析では、Area Under the Curve (AUC)(注 6)の値が、Aβ42/Aβ40 比では
0.85、p-tau217 では 0.91 と優れた値を示し、アミロイド PET 画像結果を高い効率で予測でき
る性能が確認されました。p-tau217 と Aβ42 の比や、p-tau217 と Aβ42/Aβ40 の比などを組
み合わせたモデル化を行うと、特に認知機能が正常な群では脳アミロイド PET 結果の予測能が
さらに向上することを、日本人を対象とした大規模な J-TRC コホートにおいて明らかにしまし
た(図 1)。また Lund 大学 Oskar Hansson 教授らとの共同研究により、スウェーデンの BioFINDER
コホート(注 7)研究においても、血漿 Aβ,p-tau217 を組み合わせた指標がアミロイド PET の
結果を予測する性能は、日本人の J-TRC コホートと同等であることが確認され、血漿 Aβと ptau217 による脳アミロイド PET 予測能の人種、コホートを越えた再現性が実証されました。

2 / 6