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血液バイオマーカーを用いて、超早期段階での脳アミロイドPET検査結果の予測を実現-アルツハイマー病の早期診断と治療に光- (5 ページ)

公開元URL https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2024/release_20240523.pdf
出典情報 血液バイオマーカーを用いて、超早期段階での脳アミロイドPET検査結果の予測を実現-アルツハイマー病の早期診断と治療に光-(5/23)《東京大学》
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用語解説
注 1: J-TRC コホート:アルツハイマー病(AD)において、認知症期に先行する無症候期(プレ
クリニカル期)などの早期段階の方を効率的に見出してコホート化し、予防のための治験の促
進などを目指す臨床研究コホート。第 1 段階の J-TRC ウェブスタディは、インターネットを介
して認知機能やアルツハイマー病のリスク因子を調べ、より詳細な研究や治験に導くための臨
床研究登録システムで、2019 年 11 月より開始され、現在までに 14190 名の登録を得ている。
50-85 歳までの方々がインターネットを介してホームページ(https://www.j-trc.org)から同
意の取得、基本情報登録の後に、15 分程度で実施可能な 2 種類の認知機能(記憶・思考力)テ
スト(認知機能指標:CFI と Cogstate(コグステート))を受検、以降、3 ヶ月ごとにインター
ネット上で検査を反復し、経時的なスコアの変化等に基づき追跡検査を行い、セルフモニタリ
ングとしても活用可能。第 2 段階の J-TRC オンサイト研究において、脳にアミロイドの上昇が
疑われる方をコホート化する。ウェブスタディの参加者を医療研究機関に招いてアミロイド
PET 検査などの詳細な評価を直接行い、プレクリニカル AD(無症候でアミロイド上昇)やプロ
ドローマル AD (MCI 期)と判断された方についてはコホートに加わって頂き、定期的な評価を
行いながら、希望に応じて薬剤治験の参加に向けた案内を行っている。すでに 45 名が治験に参
加、15 名が治験薬投与に到達されている。
注 2:スレオニン 217 リン酸化タウ(p-tau217):血液、脳脊髄液中に検出される、スレオニン
217 残基がリン酸化されたタウタンパク質。AD 脳におけるアミロイドβ蓄積などの病理学的変
化を最も高感度かつ特異的に検出するバイオマーカーとして注目されている。AD 脳には初期に
アミロイドβが蓄積し、その影響を受けて神経細胞内にタウタンパク質が蓄積し、変性脱落と
認知機能障害が生じる。蓄積したタウタンパク質は多数のアミノ酸残基でリン酸化を受けてい
るが、その中でも 217 番のリン酸化された p-tau217 は、タウタンパク質の蓄積が PET スキャ
ンなどの方法で明らかになるよりも早い段階から血液、脳脊髄液に漏れ出て鋭敏に上昇し、ア
ミロイド蓄積を早期から検出可能とすることが 2020 年頃から世界的に注目されるようになっ
た(Palmqvist S ら、JAMA 324:772-781, 2020 ほか)。本検査法は最初にイーライ・リリー社研
究所において Jeffrey Dage 博士(現・インディアナ大)らにより創出され、本研究においても
オリジナルの方法で測定が行われたが、現在内外の診断薬専門企業により p-tau217 の様々な
測定系が開発されはじめている。
注 3: プレクリニカル(期)AD:画像診断やバイオマーカーにより、脳にアミロイドβ蓄積など
AD の病理学的変化の存在が推定されるが、認知機能は正常である状態をいう。プロドローマル
期と正常の中間状態と考えられる。今後の AD の早期治療のための治療薬開発において最も重
要な対象となることが期待されることから、レカネマブを用いた AHEAD、ドナネマブを用いた
Trailblazer ALZ3 などの国際治験が行われている。
注 4:プロドローマル(期)AD:AD の病理学的変化があり、客観的にも物忘れなどの認知機能低
下症状を認めるが、日常生活機能は保たれており、まだ認知症に至っていないと診断される時
期をさす。「MCI 期の AD」とほぼ同義である。抗アミロイドβ抗体薬治療の適応となる初期 AD
(early AD)の中では、その前半期に相当する。
注 5:バイオマーカー:ある疾患に関して、その病的な過程や治療法に対する反応の指標とし
て、体外から客観的に測定可能な特性をさす。血液検査や画像診断の結果などが代表的で、た
とえば糖尿病におけるヘモグロビン A1c, AIDS における CD4 陽性リンパ球数などがある。AD に
おいては脳脊髄液中の Aβ(1-42)の減少、リン酸化タウの増加などの体液性バイオマーカー、
アミロイド PET スキャンなどの画像バイオマーカーなどが代表的であり、本研究で対象とした
血液バイオマーカーも注目されている。

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