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資料2ー5:永井委員提出資料 (5 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24877.html
出典情報 循環器病対策推進協議会(第7回 3/30)《厚生労働省》
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循環器病対策の重要性と研究の方向性
研究代表者 永井 良三 自治医科大学 学長
「ヒトは血管と共に老いる」といわれる。人間は一生の間に必ず循環器病を罹患するため
に、脳卒中、心臓血管病その他の循環器病は、高齢化の進む世界各国の重大な健康・医療上
の課題である。とくに高齢社会となったわが国では、できるだけ介護を受けずに自立した人
生を過ごせるように、健康寿命を延伸することが喫緊の課題である。しかし循環器病は必ず
しも高齢者の疾患ではなく、小児期、青壮年期、高齢期のいずれの年代でも発症する。例え
ば、先天性心臓・血管病は出生数の1%に生じ、時代で変わることはない。かつて不治の病だ
ったこれらの疾患は、外科手術により成人に達することが可能となったものの、いずれ心不
全や難治性不整脈を高頻度で発症する。こうした循環器病患児約1万人が毎年成年に達して
おり、治療と管理の体制構築が急がれている。また働き盛りの世代では、ストレス、過食、
運動不足が続くと、高血圧や動脈硬化を基にした循環器病を生ずることは広く知られている。
循環器病対策の重要性は、循環器病が我が国の主要な死亡原因であることからも明らかで
ある。2018(平成30)年の人口動態統計によると、心疾患は死亡原因の第2位、脳血管疾患は
第4位、両者を合わせた死亡者数は年間31万人に及び、悪性新生物に匹敵する。脳心血管疾
患の重要な原因となる高血圧患者を含めると、我が国の循環器病患者数は数千万人に達する。
心臓病や脳卒中は死亡率が高いだけでなく、生涯にわたる管理が必要となる点で重要であ
る。心臓発作や脳卒中で救命されたとしても、その後、心不全、不整脈、運動障害、不随意
運動などで身体機能が低下し、健康寿命短縮の要因となるからである。
このように循環器病には、感染症やがんとは異なる医学的および社会的側面がある。した
がって循環器病を克服するための研究は、循環器病固有の特徴を踏まえることが重要である。
1. 循環器病のリスク因子と経過
成人で発症する循環器病の多くは、糖尿病、腎臓病、高脂血症、高血圧などを背景に、数
十年の経過を経て発症する。これらの疾患には、遺伝素因に加えて、食事や運動などの生活
習慣が複合的に関与する。
このため循環器病では、生涯にわたる多角的な対策が重要である。循環器病を発症する前
であれば、生活習慣やリスクの管理、とくにメタボリック症候群、糖尿病、高血圧、高脂血
症の予防と管理、脳、心臓、血管、腎臓等による臓器障害の予防、循環器病の発症後は急性
期、回復期、慢性期の治療とリハビリが重要である。さらに循環器病が安定期に入っても、
重症化、合併症発症、再発の防止に、最大限の注意を払わなければならない。
これらの複合的に作用する要因がどのようにして循環器病のリスクとなり、発症や重症化
に至るか、その機序はほとんど不明である。このため循環器病の克服には、そのメカニズム