よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


資料2ー5:永井委員提出資料 (7 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24877.html
出典情報 循環器病対策推進協議会(第7回 3/30)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

器病リハビリテーションは十分に普及しておらず、そのプログラムの内容や実施する期間に
ついても議論が多い。そこで回復期の循環器病とリハビリテーションのあり方、さらに医療
提供体制についても、データをもとにした研究が必要である。
4. 慢性期の循環器病
慢性期の循環器病は、完全に健常な状態に回復するわけではない。後遺症が慢性的に残る
ことが多く、また一見健康体に回復したようにみえても、強い身体的あるいは心理的ストレ
スを受けると、心不全や不整脈などの合併症を発症したり、原病が重篤化したりする。循環
器病は突然死の主要な原因であり、長い経過の間に再発することも多い。さらに心臓病は脳
卒中の原因となり、脳卒中患者が心臓病を起こすこともまれではない。このように循環器病
は、発症から数十年間の経過のなかで、多彩な病像を示しつつ、異なる病態に遷移する。
循環器病の多様な経過は、異なる高度を飛行する飛行機に譬えることができる。健常者が
高度1万メートルを順調に飛行する飛行機とすれば、慢性期の循環器疾患は、高度数百メート
ルの飛行機である。高高度であれば天候の影響を受けにくいが、低空の飛行では天候や地形
などの外的環境の影響を受けやすく、わずかなバランスの乱れにより事故に至る。また安定
飛行をするための維持機構は、両者で大きく異なる。これが循環器病管理と重症化・合併症
予防のポイントであり、どのような制御機構や危機管理システムが関わるか、状態が悪化し
たときに、効果的な介入をどのように行うべきか、さらに日常の生活管理をどのように行う
べきかを、ゲノム等のオミックスや細胞機能に視点を置いて、動物モデルと臨床例を対象に
研究することが極めて重要である。これらの研究成果を医薬品や医療機器・デバイス開発を
行い、教育啓発活動を進めれば、循環器病であっても天寿を全うすることができる。
こうした研究成果の例として、循環器病の研究者は、心臓や血管、血圧の制御機構の解析
だけでなく、近年は臓器連関による生理機能の制御という新しいコンセプトを提示してきた。
慢性期の恒常性維持機構と破綻について、遺伝子、分子、細胞、さらに臓器連関の観点から
研究を進め、適切な診断・治療法の開発を目指すことは、わが国の循環器病研究の強みであ
り、時宜にかなったものである。この視点からバイオマーカーや創薬研究が発展すれば、わ
が国のイノベーションに大きな貢献をなす。
5. 循環器病の社会経済的負担
循環器病は、社会経済的負担が大きいことも特徴である。平成29年度傷病分類別医科診療
医療費30兆8335億円のうち、循環器系疾患の占める割合は6兆782億円(19.7%)に及び、がん
以上の医療費を要している。
救急医療に関しては、平成30年度版「救急・救助の現況」(総務省消防庁)によると、救
急自動車による急病による救急出動件数のうち、脳疾患、心疾患等を含む循環器系は全体の
16.2%を占め、特に高齢者ではその割合が高い。また急病の傷病程度に疾病分類を分析する
と、死亡及び重症(長期入院)において、脳疾患や心疾患が占める割合が高い。