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06 参考資料2 おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査報告 (10 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37506.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第23回 1/24)《厚生労働省 |
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2024.01.10 11.23.40
EDAIN WING 4.0 佐藤
Page 11(1)
KyorinWPS/70573−8983/sho01−15/ky389353898310061948
令和 6 年 1 月 1 日
101―(101)
認めたものの報告医が副反応と判断していない 818 例
いるものは無菌性髄膜炎である.日本で現在市販され
から,0〜4 週間に副反応が疑われる症状を認めたもの
ているおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎発症
の報告医が副反応と判断していない 516 例の差)で,
率は,添付文書の記載によると 0.1% 未満
(2,300 人接種
これは 10 万回接種あたり 514 例となっている.
あたり 1 人程度)
(星野株),0.1% 未満(1,600 人接種あ
報告医に副反応とは判断されていない何らかの症状
たり 1 人程度)
(鳥居株)とされている.Nagai3)らは
の発生報告頻度は 1 歳児の初回接種が最も多く,その
21,465 例を対象とした前方視的観察研究において,ウ
症状として最も多く認めたのは接種後 4 週間まで,8
イルス学的に証明されたワクチン接種後の無菌性髄膜
週間までの報告ともに発熱で,次に感冒症状や上気道
炎発症率は,0.04%(星野株),0.06%(鳥居株)と報告
炎症状であった.また,4 週間までと 8 週間までに報告
している.Muta4)らはこのデータを基にワクチン接種
された症状の出現割合は類似しており,いずれも 1 歳
後の無菌性髄膜炎発症率について年齢群別に検討を行
児の初回接種において報告が多かった.
い,3 歳未満では 0.018%,3 歳以上では 0.078% であり,
【中枢神経などに重篤/特異な症状を認めた症例】
年長児接種の方が有意に高いことを示した(相対リス
一次調査においてワクチン接種後に中枢神経などに
ク 4.35,95% 信頼区間 1.05〜18.2,
p=0.04)
.
重篤/特異な症状を認めた症例
(無菌性髄膜炎,脳炎・
近年,おたふくかぜワクチン接種後無菌性髄膜炎発
脳症,急性小脳失調症)は 14 例であった(表 3).この
症頻度が減少傾向であることを示唆する報告がなされ
うち接種後 4 週間以内に発症した症例は 12 例であっ
ている.中山5)らは,星野株ワクチン市販後調査報告に
た.なお,1 例については主治医がワクチンの副反応で
基づき,ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の頻度は 2014
はないと報告している.診断名の内訳は無菌性髄膜炎
年以降では約 3 万接種で 1 例以下と報告している.
が 10 例(疑い 2 例を含む)と最も多く,急性脳炎,急
Kumihashi6)らは,医療機関および企業からの報告によ
性脳症,髄膜脳炎,急性小脳失調症が 1 例ずつであっ
る医薬品副作用データベースを用いて調査を行い,
た.無菌性髄膜炎疑いの 1 例を除き全例が入院してい
2004 年から 2015 年における鳥居株ワクチン接種後の
た.おたふくかぜワクチン株が検出されたと報告され
無菌性髄膜炎は 10 万接種で 1.3 から 4.4 であったと報
た症例は 7 例,これらに加えて 1 例は LAMP 法でム
告している.Ohfuji7)らも企業からの副反応報告に基づ
ンプスウイルスを検出しているものの,ワクチン株と
く解析で,鳥居株ワクチン接種後の無菌性髄膜炎が,
野生株の判別はできていない.
10 万接種あたり 7.90(1998〜2000 年)から 2.78(2016〜
なお,二次調査において 3 例から検体が確保され,
2018 年)まで減少したことを示している.
国立感染症研究所において解析を行った.1 例
(接種時
今回の調査で 4 週間フォローできた 59,573 例にお
年齢 1 歳 1 か月男児)は髄液と便から Real time PCR
ける無菌性髄膜炎(8 例)・急性脳炎(1 例)
・無菌性髄
法でムンプスウイルス遺伝子が検出され,便からノロ
膜炎疑い(2 例)の発生報告頻度は 0.018%(10 万接種
ウイルス遺伝子が検出された.ウイルス分離でもムン
あたり 18.5)であった.また,8 週間フォローできた
プスウイルスが分離された.もう 1 例(接種時年齢 1
58,783 例における無菌性髄膜炎(8 例)
・急性脳炎(1
歳 0 か月男児)は急性期髄液のみサンプルが保存され
例)・髄膜脳炎(1 例),無菌性髄膜炎疑い(2 例)の発
てあり,ムンプスウイルスのみが検出され,その他の
生報告頻度は 0.020%(10 万接種あたり 20.4)であっ
病原体は検出されなかった.ムンプスウイルスの野生
た.
株かワクチン株かの判定は,SH 遺伝子領域,560〜728
先行研究における無菌性髄膜炎の発生報告頻度は,
bp(ムンプスウイルスの 6,130〜6,689 bp 周辺)の多様
本研究と比較すると低いものから高いものまで様々で
性領域のシークエンスにより確定し,2 例から検出さ
あった.添付文書に引用されている Nagai らの報告3)
れたウイルスは接種したおたふくかぜワクチン株に完
より低かったのは,Nagai らの報告では,接種年齢層が
全一致していた.なお,2 回目接種の 6 歳児(接種時年
3 歳以上の初回接種小児が多く含まれていたことが挙
齢 6 歳 2 か月男児)では,髄液検査未実施のため急性
げられる.一方,市販後調査に比べると高い結果となっ
期血清,尿,唾液および回復期血清について病原体検
たのは,おたふくかぜワクチンが任意接種のため,市
索を行ったが,検出された病原体はなかった.
販後調査への報告頻度が低かった可能性が考えられ
【精巣炎・卵巣炎,難聴,急性膵炎の報告】
る.また,本研究のデザインとして接種後に副反応を
接種後に副反応を疑う症状として,
精巣炎・卵巣炎,
認めた症例が報告されやすい点(特に過去接種例)に
難聴,急性膵炎の報告はなかった.
考
察
おたふくかぜワクチンの副反応で特に重要視されて
も留意が必要である.
前向きに 8 週間フォローできた 44,708 例について
検討すると,無菌性髄膜炎を発症した症例は 4 例,無
菌性髄膜炎疑い 2 例で,急性脳炎・髄膜脳炎症例はな
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令和 6 年 1 月 1 日
101―(101)
認めたものの報告医が副反応と判断していない 818 例
いるものは無菌性髄膜炎である.日本で現在市販され
から,0〜4 週間に副反応が疑われる症状を認めたもの
ているおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎発症
の報告医が副反応と判断していない 516 例の差)で,
率は,添付文書の記載によると 0.1% 未満
(2,300 人接種
これは 10 万回接種あたり 514 例となっている.
あたり 1 人程度)
(星野株),0.1% 未満(1,600 人接種あ
報告医に副反応とは判断されていない何らかの症状
たり 1 人程度)
(鳥居株)とされている.Nagai3)らは
の発生報告頻度は 1 歳児の初回接種が最も多く,その
21,465 例を対象とした前方視的観察研究において,ウ
症状として最も多く認めたのは接種後 4 週間まで,8
イルス学的に証明されたワクチン接種後の無菌性髄膜
週間までの報告ともに発熱で,次に感冒症状や上気道
炎発症率は,0.04%(星野株),0.06%(鳥居株)と報告
炎症状であった.また,4 週間までと 8 週間までに報告
している.Muta4)らはこのデータを基にワクチン接種
された症状の出現割合は類似しており,いずれも 1 歳
後の無菌性髄膜炎発症率について年齢群別に検討を行
児の初回接種において報告が多かった.
い,3 歳未満では 0.018%,3 歳以上では 0.078% であり,
【中枢神経などに重篤/特異な症状を認めた症例】
年長児接種の方が有意に高いことを示した(相対リス
一次調査においてワクチン接種後に中枢神経などに
ク 4.35,95% 信頼区間 1.05〜18.2,
p=0.04)
.
重篤/特異な症状を認めた症例
(無菌性髄膜炎,脳炎・
近年,おたふくかぜワクチン接種後無菌性髄膜炎発
脳症,急性小脳失調症)は 14 例であった(表 3).この
症頻度が減少傾向であることを示唆する報告がなされ
うち接種後 4 週間以内に発症した症例は 12 例であっ
ている.中山5)らは,星野株ワクチン市販後調査報告に
た.なお,1 例については主治医がワクチンの副反応で
基づき,ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の頻度は 2014
はないと報告している.診断名の内訳は無菌性髄膜炎
年以降では約 3 万接種で 1 例以下と報告している.
が 10 例(疑い 2 例を含む)と最も多く,急性脳炎,急
Kumihashi6)らは,医療機関および企業からの報告によ
性脳症,髄膜脳炎,急性小脳失調症が 1 例ずつであっ
る医薬品副作用データベースを用いて調査を行い,
た.無菌性髄膜炎疑いの 1 例を除き全例が入院してい
2004 年から 2015 年における鳥居株ワクチン接種後の
た.おたふくかぜワクチン株が検出されたと報告され
無菌性髄膜炎は 10 万接種で 1.3 から 4.4 であったと報
た症例は 7 例,これらに加えて 1 例は LAMP 法でム
告している.Ohfuji7)らも企業からの副反応報告に基づ
ンプスウイルスを検出しているものの,ワクチン株と
く解析で,鳥居株ワクチン接種後の無菌性髄膜炎が,
野生株の判別はできていない.
10 万接種あたり 7.90(1998〜2000 年)から 2.78(2016〜
なお,二次調査において 3 例から検体が確保され,
2018 年)まで減少したことを示している.
国立感染症研究所において解析を行った.1 例
(接種時
今回の調査で 4 週間フォローできた 59,573 例にお
年齢 1 歳 1 か月男児)は髄液と便から Real time PCR
ける無菌性髄膜炎(8 例)・急性脳炎(1 例)
・無菌性髄
法でムンプスウイルス遺伝子が検出され,便からノロ
膜炎疑い(2 例)の発生報告頻度は 0.018%(10 万接種
ウイルス遺伝子が検出された.ウイルス分離でもムン
あたり 18.5)であった.また,8 週間フォローできた
プスウイルスが分離された.もう 1 例(接種時年齢 1
58,783 例における無菌性髄膜炎(8 例)
・急性脳炎(1
歳 0 か月男児)は急性期髄液のみサンプルが保存され
例)・髄膜脳炎(1 例),無菌性髄膜炎疑い(2 例)の発
てあり,ムンプスウイルスのみが検出され,その他の
生報告頻度は 0.020%(10 万接種あたり 20.4)であっ
病原体は検出されなかった.ムンプスウイルスの野生
た.
株かワクチン株かの判定は,SH 遺伝子領域,560〜728
先行研究における無菌性髄膜炎の発生報告頻度は,
bp(ムンプスウイルスの 6,130〜6,689 bp 周辺)の多様
本研究と比較すると低いものから高いものまで様々で
性領域のシークエンスにより確定し,2 例から検出さ
あった.添付文書に引用されている Nagai らの報告3)
れたウイルスは接種したおたふくかぜワクチン株に完
より低かったのは,Nagai らの報告では,接種年齢層が
全一致していた.なお,2 回目接種の 6 歳児(接種時年
3 歳以上の初回接種小児が多く含まれていたことが挙
齢 6 歳 2 か月男児)では,髄液検査未実施のため急性
げられる.一方,市販後調査に比べると高い結果となっ
期血清,尿,唾液および回復期血清について病原体検
たのは,おたふくかぜワクチンが任意接種のため,市
索を行ったが,検出された病原体はなかった.
販後調査への報告頻度が低かった可能性が考えられ
【精巣炎・卵巣炎,難聴,急性膵炎の報告】
る.また,本研究のデザインとして接種後に副反応を
接種後に副反応を疑う症状として,
精巣炎・卵巣炎,
認めた症例が報告されやすい点(特に過去接種例)に
難聴,急性膵炎の報告はなかった.
考
察
おたふくかぜワクチンの副反応で特に重要視されて
も留意が必要である.
前向きに 8 週間フォローできた 44,708 例について
検討すると,無菌性髄膜炎を発症した症例は 4 例,無
菌性髄膜炎疑い 2 例で,急性脳炎・髄膜脳炎症例はな