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06 参考資料2 おたふくかぜワクチン接種後の副反応に関する全国調査報告 (12 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37506.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第23回 1/24)《厚生労働省 |
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EDAIN WING 4.0 佐藤
2024.01.10 11.23.40
Page 13(1)
KyorinWPS/70573−8983/sho01−15/ky389353898310061948
令和 6 年 1 月 1 日
103―(103)
かった.疑い例 2 例を含めた無菌性髄膜炎発生報告頻
登録があり,58,783 例について,接種後 8 週間の健康観
度は 0.013%(10 万接種あたり 13.4),1 歳児の 1 回目接
察を実施していることから,ある程度普遍的な情報が
種の発生報告頻度は 0.011%(10 万接種あたり 11.4)で
収集されていると考えている.
あった.特に 1 回目接種を実施する場合には,髄膜炎
ムンプス罹患後の難聴の予後は不良であり,その発
や脳炎・脳症などを疑う中枢神経症状に注意が必要と
症リスクは極めて大きいことから,ムンプスの発症を
言える.ワクチン接種を行っていてもその後症状を認
予防するためのおたふくかぜワクチンは小児にとって
めなかった被接種例が追跡不能になっている場合や,
重要なワクチンであると考える.一方,すべてのワク
重篤な症状を認めた医療機関が積極的に参加医療機関
チンについて言えることであるが,接種後に一定の副
に加わるなど,偏りがある可能性があるため,頻度の
反応が発生するリスクもある.日本小児科学会として
解釈には十分留意する必要があると考えられる.しか
は引き続きおたふくかぜワクチンの接種を推奨すると
しながら,頻度が低いとはいえ,おたふくかぜワクチ
ともに,接種について心配のある家族の意思決定の支
ン株が検出された症例において急性脳炎やけいれん重
援を行えるよう,家族と十分に相談し,おたふくかぜ
積を認めた症例が報告されている点は留意すべきであ
ワクチン接種の意義を理解したうえで接種されるワク
る.なお,髄膜脳炎と報告された 1 例については,退
チンとなるように,引き続き努力していくことが重要
院 2 か月後の外来で,明らかな神経学的後遺症は認め
であると考える.
なかった.急性脳炎と報告された 1 例については,接
種 8 週間後の時点では入院中であったが,現在は,リ
謝辞
本調査にご協力いただいた全国の医療機関の先生
ハビリを継続しながらフォローされている.また,エ
方,ならびに疫学解析に関するご指導をいただいた佐賀大
ピソード
(耳下腺炎・顎下腺炎,無菌性髄膜炎,脳炎・
学医学部社会医学講座原めぐみ先生,調査の事務作業なら
脳症,精巣炎・卵巣炎,難聴,急性膵炎)以外の副反
びにお問い合わせにご協力いただいた国立感染症研究所感
応を疑う症状に関しては,1 回目接種後に発熱や上気
染症疫学センターの三上純子様,日本小児科学会事務局冨
道症状が認められる点が接種後 4 週間,8 週間時点で
永真紀様,高相百里様,神奈川県衛生研究所関戸晴子様,
の健康調査の結果で明らかになった.一方で 2 回目接
最上恵美子様,大崎芳彦様,Web サイト「Mu-VSD」を構
種後に副反応を疑う症状の報告はほとんど認められて
築して下さった株式会社エバーメディカ吉永治彦先生,平
いない.
島朋義様に深謝いたします.なお本調査は AMED 菅班(研
医師が副反応と認めていないものの備考欄に症状が
究開発課題名:ワクチンの実地使用下における基礎的・臨
記載されていた症例についても詳細に検討したが,重
床 的 研 究 及 び ワ ク チ ン の 評 価・開 発 に 資 す る 研 究),
篤な症例は 1 例のみ
(表 3 最下段の症例で,急性脳症,
AMED 鈴木班(研究開発課題名:ワクチンで予防可能な疾
RS ウイルス肺炎の診断で報告医からは副反応否定的
病のサーベイランス及びワクチン効果の評価に関する研
との記載あり)であり,その他髄膜炎等の重症報告は
究)からの研究費の支弁を受けています.
なかった.1 歳児の発熱や皮膚症状(発疹,蕁麻疹)は
副反応として報告された場合とほぼ同じ報告割合で認
められており,副反応かどうかの判断は,報告した医
師の判断で大きく変わることが示唆された.
本調査の制限として,報告医療機関で調査期間中の
全接種例を登録できたかどうかを確認する手段がない
ため,エピソード等の正確な発生頻度は算出困難であ
ること,ムンプスと強く関連があるとされる病名(エ
ピソード)
についてのチェックボックスを準備したが,
それ以外の症状は自由記載としており,因果関係が明
らかではない症状や事象も報告されていること,イン
ターネット接続できない医療機関では報告しにくいこ
と,
研究へ自発的に参加した報告医による調査であり,
調査期間中に接種後に副反応を疑う症状の有無を全接
種例に確認するのは困難なこと,現在国内で接種可能
なおたふくかぜワクチン(鳥居株,星野株)のみに関
する結果であること,などがある.しかし,全国 919
名の調査協力医のうち,472 名から 1 例以上の接種例
文
献
1)国立感染症研究所.おたふくかぜワクチンに関す
るファクトシート.https://www.mhlw.go.jp/co
ntent/10601000/000351730.pdf,
( 参 照 2023-1111)
2)Orenstein WA, Offit PA, Edwards KM, et al.
th
Mumps vaccines. In : Plotkinʼs VACCINES 7
ed. Elsevier:2017:663-688.
3)Nagai T, Okafuji T, Miyazaki C, et al. A comparative study of the incidence of aseptic meningitis in symptomatic natural mumps patients
and monovalent mumps vaccine recipients in Japan. Vaccine 2007;25:2742-2747. doi:10.1016/
j.vaccine.2005.11.068.
4)Muta H, Nagai T, Ito Y, et al. Effect of age on the
incidence of aseptic meningitis following immunization with monovalent mumps vaccine. Vaccine 2015;33:6049-6053. doi:10.1016/j.vaccin
e.2015.09.068.
5)中山哲夫,伊藤尚志.ムンプス星野株ワクチン接
種後の副反応.臨床とウイルス 2018;46:187-
2024.01.10 11.23.40
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令和 6 年 1 月 1 日
103―(103)
かった.疑い例 2 例を含めた無菌性髄膜炎発生報告頻
登録があり,58,783 例について,接種後 8 週間の健康観
度は 0.013%(10 万接種あたり 13.4),1 歳児の 1 回目接
察を実施していることから,ある程度普遍的な情報が
種の発生報告頻度は 0.011%(10 万接種あたり 11.4)で
収集されていると考えている.
あった.特に 1 回目接種を実施する場合には,髄膜炎
ムンプス罹患後の難聴の予後は不良であり,その発
や脳炎・脳症などを疑う中枢神経症状に注意が必要と
症リスクは極めて大きいことから,ムンプスの発症を
言える.ワクチン接種を行っていてもその後症状を認
予防するためのおたふくかぜワクチンは小児にとって
めなかった被接種例が追跡不能になっている場合や,
重要なワクチンであると考える.一方,すべてのワク
重篤な症状を認めた医療機関が積極的に参加医療機関
チンについて言えることであるが,接種後に一定の副
に加わるなど,偏りがある可能性があるため,頻度の
反応が発生するリスクもある.日本小児科学会として
解釈には十分留意する必要があると考えられる.しか
は引き続きおたふくかぜワクチンの接種を推奨すると
しながら,頻度が低いとはいえ,おたふくかぜワクチ
ともに,接種について心配のある家族の意思決定の支
ン株が検出された症例において急性脳炎やけいれん重
援を行えるよう,家族と十分に相談し,おたふくかぜ
積を認めた症例が報告されている点は留意すべきであ
ワクチン接種の意義を理解したうえで接種されるワク
る.なお,髄膜脳炎と報告された 1 例については,退
チンとなるように,引き続き努力していくことが重要
院 2 か月後の外来で,明らかな神経学的後遺症は認め
であると考える.
なかった.急性脳炎と報告された 1 例については,接
種 8 週間後の時点では入院中であったが,現在は,リ
謝辞
本調査にご協力いただいた全国の医療機関の先生
ハビリを継続しながらフォローされている.また,エ
方,ならびに疫学解析に関するご指導をいただいた佐賀大
ピソード
(耳下腺炎・顎下腺炎,無菌性髄膜炎,脳炎・
学医学部社会医学講座原めぐみ先生,調査の事務作業なら
脳症,精巣炎・卵巣炎,難聴,急性膵炎)以外の副反
びにお問い合わせにご協力いただいた国立感染症研究所感
応を疑う症状に関しては,1 回目接種後に発熱や上気
染症疫学センターの三上純子様,日本小児科学会事務局冨
道症状が認められる点が接種後 4 週間,8 週間時点で
永真紀様,高相百里様,神奈川県衛生研究所関戸晴子様,
の健康調査の結果で明らかになった.一方で 2 回目接
最上恵美子様,大崎芳彦様,Web サイト「Mu-VSD」を構
種後に副反応を疑う症状の報告はほとんど認められて
築して下さった株式会社エバーメディカ吉永治彦先生,平
いない.
島朋義様に深謝いたします.なお本調査は AMED 菅班(研
医師が副反応と認めていないものの備考欄に症状が
究開発課題名:ワクチンの実地使用下における基礎的・臨
記載されていた症例についても詳細に検討したが,重
床 的 研 究 及 び ワ ク チ ン の 評 価・開 発 に 資 す る 研 究),
篤な症例は 1 例のみ
(表 3 最下段の症例で,急性脳症,
AMED 鈴木班(研究開発課題名:ワクチンで予防可能な疾
RS ウイルス肺炎の診断で報告医からは副反応否定的
病のサーベイランス及びワクチン効果の評価に関する研
との記載あり)であり,その他髄膜炎等の重症報告は
究)からの研究費の支弁を受けています.
なかった.1 歳児の発熱や皮膚症状(発疹,蕁麻疹)は
副反応として報告された場合とほぼ同じ報告割合で認
められており,副反応かどうかの判断は,報告した医
師の判断で大きく変わることが示唆された.
本調査の制限として,報告医療機関で調査期間中の
全接種例を登録できたかどうかを確認する手段がない
ため,エピソード等の正確な発生頻度は算出困難であ
ること,ムンプスと強く関連があるとされる病名(エ
ピソード)
についてのチェックボックスを準備したが,
それ以外の症状は自由記載としており,因果関係が明
らかではない症状や事象も報告されていること,イン
ターネット接続できない医療機関では報告しにくいこ
と,
研究へ自発的に参加した報告医による調査であり,
調査期間中に接種後に副反応を疑う症状の有無を全接
種例に確認するのは困難なこと,現在国内で接種可能
なおたふくかぜワクチン(鳥居株,星野株)のみに関
する結果であること,などがある.しかし,全国 919
名の調査協力医のうち,472 名から 1 例以上の接種例
文
献
1)国立感染症研究所.おたふくかぜワクチンに関す
るファクトシート.https://www.mhlw.go.jp/co
ntent/10601000/000351730.pdf,
( 参 照 2023-1111)
2)Orenstein WA, Offit PA, Edwards KM, et al.
th
Mumps vaccines. In : Plotkinʼs VACCINES 7
ed. Elsevier:2017:663-688.
3)Nagai T, Okafuji T, Miyazaki C, et al. A comparative study of the incidence of aseptic meningitis in symptomatic natural mumps patients
and monovalent mumps vaccine recipients in Japan. Vaccine 2007;25:2742-2747. doi:10.1016/
j.vaccine.2005.11.068.
4)Muta H, Nagai T, Ito Y, et al. Effect of age on the
incidence of aseptic meningitis following immunization with monovalent mumps vaccine. Vaccine 2015;33:6049-6053. doi:10.1016/j.vaccin
e.2015.09.068.
5)中山哲夫,伊藤尚志.ムンプス星野株ワクチン接
種後の副反応.臨床とウイルス 2018;46:187-