インフルエンザに関連した超過死亡数の推移
目的：
コロナ禍およびそれ以前における(1)インフルエンザに関連した死亡の超過死亡数、および(2)全死亡の超過死亡数を算出する。

データ：

• 超過死亡数：人口動態統計の死亡個票を元に算出（米国CDCと同じ方法論を採用）。ある時点（週単位）の実際の死亡数が、例年の同時期の数値から予測される死亡数の点
推定値、もしくは予測死亡数の予測区間の95%上限値を上回った分と定義する。
• 全国、全年齢の2012年から2021年までデータを利用（死因別は2021年8月まで、全死亡は2021年11月までアクセス可能）。 5年前までの前後3週間を参照期間として予測死亡
数を推定した。それに伴い推定期間は2017–2021年。また、(1)においては感度分析として3年前までの前後3週間を参照期間とした予測死亡数も推定した（推定期間は2015–
2021年）。
• インフルエンザに関連した死亡は、ICD-10のインフルエンザコード（J10-J11）による死亡報告だけでは判断できない。インフルエンザに感染していると思われる症状がある患
者全てがインフルエンザの検査を受けているわけではない。検査感度が必ずしも高いわけではない。二次性の細菌性肺炎を続発して死亡に至る事例が少なくない[1]。

• これらの理由により、先行研究[2-4]にのっとり、ICD-10のJ09-J18コード（インフルエンザ及び肺炎）をインフルエンザに関連した死亡と定義した。
1. Thompson WW, et al. Estimating influenza-associated deaths in the United States. Am J Public Health 2009; 99 Suppl 2: S225-30.
2. Sotomayor V, et al. Estimating the burden of influenza-associated hospitalizations and deaths in Chile during 2012-2014. Influenza Other Respir Viruses 2018; 12(1):
138-45.
3. Yu X, et al. Excess pneumonia and influenza mortality attributable to seasonal influenza in subtropical Shanghai, China. BMC Infect Dis 2017; 17(1): 756.
4. Salto-Quintana JN, et al. Post-pandemic influenza-associated mortality in Mexico. Pathog Glob Health 2019; 113(2): 67-74.
5. Schanzer DL, et al. Estimating influenza deaths in Canada, 1992-2009. PLoS One 2013; 8(11): e80481
暫定結果：
• J09-J18コード（インフルエンザ及び肺炎）はあくまでインフルエンザに関連した死亡のproxy（代理）であることは注意が必要である。
• 2017年1月より、国際疾病分類 ICD-10の2013年版に準拠した死因選択方法の変更がなされ、これまで肺炎が原死因とされた死亡の一部が、アルツハイマー等認知症や
COPDを原死因とする考え方に変わった。 (1)の感度分析の2020年以降の推定値を除き、全てその影響を受けていることは注意が必要である（超過が検出されにくく、過少が
検出されやすい）。実際に、 2017年の過小死亡はその影響を大きく受けた結果の可能性がある。

• インフルエンザに関連した死亡の超過死亡数は、2018/2019シーズンが最大で1,158–6,301人（ページ9参照）。
• 感度分析でも同様に2018/2019シーズンが最大（3,723–11,836人）（ページ10参照）。
• 全死亡の超過死亡数は、2020/2021シーズンが最大で8,620–41,497人（ページ11参照） 。
厚生労働行政推進調査事業費補助金（新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業） 「新型コロナウイルス感染症等の感染症サーベイラン
ス体制の抜本的拡充に向けた人材育成と感染症疫学的手法の開発研究」 分担研究課題：COVID19等の影響による超過死亡の評価に関する研究

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