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プレスリリース:国際共同研究により世界最大規模の腎臓がんの全ゲノム解析を実施 日本人の7割に未知の発がん要因を発見 (5 ページ)

公開元URL https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2024/0514/index.html
出典情報 国際共同研究により世界最大規模の腎臓がんの全ゲノム解析を実施 日本人の7割に未知の発がん要因を発見(5/14)《国立がん研究センターほか》
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遺伝子における変異の頻度は、各国で大きな差は見られませんでした(図 5)。日本人症例で多く検出さ
れた SBS12 は、がんドライバー遺伝子変異に特に多いわけではありませんでした。この理由としては、
まだ SBS12 を持つ症例の全ゲノム解析データが少なく、十分な統計解析ができなかったことが考えられ
ます。一方で淡明細胞型腎細胞がんの極めて強い危険因子であるアリストロキア酸注 7 に曝露された症
例では、がんドライバー遺伝子にもアリストロキア酸関連の変異パターンが検出され、アリストロキア酸
ががんドライバー遺伝子の突然変異に強く関与していることが明らかになりました。
(A)

(C)

(B)
80

%国別の突然変異症例の割合
of cases
73 39 10

40

0

67 38 16 18

Canada

66 44 14 15

Czechia

61 42

6

14

Japan

88 38 12

6

Lithuania

54

0

8

Poland

69 52 16

5

Romania

8

71 33 13 15

Russia

70 36 13 17

Serbia

100 40

0

40

Thailand

66 53 15

6

UK

100
80
60
40
20
0

PB VH
R L
SE M1
TD
BA 2
P1

20

Brazil

VHL
PBRM1
SETD2
BAP1
MTOR
KDM5C
PTEN
TP53
ARID1A
ATM
PIK3CA
KMT2C
NFE2L2
SAMHD1
YLPM1
TET2
CUL3
MGA
TSC1
FAT1

突然変異が検出された症例の割合
% of cases

60

5

図 5. 各国のがんドライバー遺伝子変異の割合
展望
本研究は、食道扁平上皮がんに次いで行われた全ゲノム解析を用いた国際的な大規模がん疫学研
究であり、各国の発がん分子機構の違いが明らかになり、疫学研究における全ゲノム解析の有用性を
改めて示しました。特に日本症例から特徴的な変異パターンが発見されました。原因となる物質は現在
のところ分かっていませんが、その解明に向けて多施設共同研究によって国内の各地域からサンプル
を集め、全ゲノム解析を行う研究計画を進めています。今後の研究でその原因物質やこの変異パターン
によって誘発されるドライバー異常が明らかになれば、日本における淡明細胞型腎細胞がんの新たな
予防法や治療法の開発が期待されます。
現在国内では全ゲノム解析等実行計画注 8 を推進するための国立研究開発法人日本医療研究開発
機構(AMED)プロジェクトが開始され、多くのがん種について日本人症例の大規模な全ゲノムデータが
集積されています。これらの研究においても変異シグネチャー解析を用いることで、日本における様々な
がん種の発がん分子機構の解明とがん予防への応用が期待されます。
発表論文
雑誌名: Nature
タイトル: Geographic variation of mutagenic exposures in kidney cancer genomes
著者:
Sergey Senkin, Sarah Moody, Marcos Diaz-Gay, Behnoush Abedi-Ardekani, Thomas Cattiaux,
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