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重症児を対象とした児童発達支援施設と他の福祉施設との連携及び嘱託医の役割に関する調査報告 (4 ページ)
出典
公開元URL | https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=1398 |
出典情報 | 重症児を対象とした児童発達支援施設と他の福祉施設との連携及び嘱託医の役割に関する調査報告(5/30)《日本小児科学会》 |
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りしていない」が半数以上を占めた。特に
「主治医が遠方にいる場合は、嘱託医を通
じて地域の医師会、医療機関とのつながり
を持つようにしていますか?」という問い
対して、
「全くしていない」
、
「あまりしてい
ない」という答えが 126 施設中 94 施設を
占めた。
一方、指示書に関しては、変更のある時
のみに再発行してもらう施設が多く、年齢
や成長・発達、病状の進展などを十分に反
映できているのかが懸念された(表 6)
。
特に、ここ 2-3 年は、新型コロナ感染症の
影響が強く、主治医とも電話でのやりとり
だけになる場合が多かったことが自由記述
でも述べられていた。学校等への指示書が
医療情報提供料として保険で算定されてい
ることと比較して、通所事業所における指
示書の位置づけが不十分であり、今後、制
度面での改革も必要との意見も寄せられて
いた。
主治医と嘱託医との連携に関する自由記
述では、51 施設から意見・コメントが寄せ
られた。複数の課題を指摘した施設もあり、
コード化したところ計 70 のコードが得ら
れた。これらのコードをカテゴリー別に分
類し、含まれるコード数の多いカテゴリー
から順に示した(表 7)
。カテゴリーごとに
含まれているコメント(コード内容)を表の
右欄に示した。
「嘱託医の位置づけが不明」としたカテ
ゴリーに含まれる意見・コメントが最も多
く 23 コメントが寄せられていた。その中で
は、
「嘱託医の役割がはっきりとしないため
形骸化している」ことが繰り返し指摘され
ていた。また、2 番目に「主治医との関係の
難しさ」のカテゴリーに含まれるものが 14
コメントを占めた。新型コロナウイルス感
染症の影響もあり、実際に顔を合わす機会
は少なく、医師になかなか連絡できないも
どかしさも書かれており、新型コロナウイ
ルス感染が主治医との関係にも影響を与え
ていたことが伺われた。数は少ないものの
主治医と嘱託医の連携がうまくできている
事例の紹介も含まれており、今後の参考に
していく必要があると考えられた。
まとめ・考察
今回の調査に協力した施設の多くは定員
数が 5 人の小規模施設であった。しかしな
がら、その多く(98%)が医療的ケア児を
受け入れていた。大槻らは、2021 年に全
国から無作為に選んだ児童発達支援、放課
後デイサービスを対象とした調査を行い、
249 か所の事業所のうち医療的ケア児を受
け入れていたのはその 22.1%であったこと
を報告している 6)。重心型児童発達支援
は、地域における医療的ケアを考える上で
は欠かせない施設と言える。
一方で、重心型児童発達支援間の道府
県、政令都市レベルでネットワークが「あ
り」と答えたのは 38.4%、市町村レベルに
おける地域の福祉・教育機関とのネットワ
ークが「あり」と答えたのは 151 施設中
52 施設(34.4%)であった。いずれも
40%にも達しておらず、多くの重心型児童
発達支援は、地域のネットワークに十分に
参加できていないと考えられた。定期的に
連絡会を持ち、さらに研修会、症例検討会
まで行っている児童発達支援も存在する
が、それらは全体から考えると極めて少数
と推測された。
地域の福祉・教育機関とのネットワーク
として、151 施設中 87 施設で、保育所等
との並行通園・通所が行われていた。しか
し、保育所・園側の体制が整っていない、
連携・情報共有が進んでいないなどの声が
数多く寄せられていた。一方で、ほとんど
の施設が、今後、並行通所・並行通園が必
要と考えていた。
これらの地域におけるネットワークがで
きない原因として「中心となる団体がな
い」ことが挙げられていた。実際のネット
ワーク運営においても、自治体の関与が大
きな要因となっており、行政側からのサポ
ートが必要と考えられた。医療的ケア児支
援法の施行により、医療的ケア児支援セン
ター、医療的ケアコーディネーターからの
積極的な働きかけが増え、改善していくこ
とを期待したい。
嘱託医の現状に関しては、ごく一部の好
事例を除き、多くの施設が、「嘱託医の位
置づけが不明」と指摘していた。「主治医
との関係が難しい」との意見も多く挙げら
4
「主治医が遠方にいる場合は、嘱託医を通
じて地域の医師会、医療機関とのつながり
を持つようにしていますか?」という問い
対して、
「全くしていない」
、
「あまりしてい
ない」という答えが 126 施設中 94 施設を
占めた。
一方、指示書に関しては、変更のある時
のみに再発行してもらう施設が多く、年齢
や成長・発達、病状の進展などを十分に反
映できているのかが懸念された(表 6)
。
特に、ここ 2-3 年は、新型コロナ感染症の
影響が強く、主治医とも電話でのやりとり
だけになる場合が多かったことが自由記述
でも述べられていた。学校等への指示書が
医療情報提供料として保険で算定されてい
ることと比較して、通所事業所における指
示書の位置づけが不十分であり、今後、制
度面での改革も必要との意見も寄せられて
いた。
主治医と嘱託医との連携に関する自由記
述では、51 施設から意見・コメントが寄せ
られた。複数の課題を指摘した施設もあり、
コード化したところ計 70 のコードが得ら
れた。これらのコードをカテゴリー別に分
類し、含まれるコード数の多いカテゴリー
から順に示した(表 7)
。カテゴリーごとに
含まれているコメント(コード内容)を表の
右欄に示した。
「嘱託医の位置づけが不明」としたカテ
ゴリーに含まれる意見・コメントが最も多
く 23 コメントが寄せられていた。その中で
は、
「嘱託医の役割がはっきりとしないため
形骸化している」ことが繰り返し指摘され
ていた。また、2 番目に「主治医との関係の
難しさ」のカテゴリーに含まれるものが 14
コメントを占めた。新型コロナウイルス感
染症の影響もあり、実際に顔を合わす機会
は少なく、医師になかなか連絡できないも
どかしさも書かれており、新型コロナウイ
ルス感染が主治医との関係にも影響を与え
ていたことが伺われた。数は少ないものの
主治医と嘱託医の連携がうまくできている
事例の紹介も含まれており、今後の参考に
していく必要があると考えられた。
まとめ・考察
今回の調査に協力した施設の多くは定員
数が 5 人の小規模施設であった。しかしな
がら、その多く(98%)が医療的ケア児を
受け入れていた。大槻らは、2021 年に全
国から無作為に選んだ児童発達支援、放課
後デイサービスを対象とした調査を行い、
249 か所の事業所のうち医療的ケア児を受
け入れていたのはその 22.1%であったこと
を報告している 6)。重心型児童発達支援
は、地域における医療的ケアを考える上で
は欠かせない施設と言える。
一方で、重心型児童発達支援間の道府
県、政令都市レベルでネットワークが「あ
り」と答えたのは 38.4%、市町村レベルに
おける地域の福祉・教育機関とのネットワ
ークが「あり」と答えたのは 151 施設中
52 施設(34.4%)であった。いずれも
40%にも達しておらず、多くの重心型児童
発達支援は、地域のネットワークに十分に
参加できていないと考えられた。定期的に
連絡会を持ち、さらに研修会、症例検討会
まで行っている児童発達支援も存在する
が、それらは全体から考えると極めて少数
と推測された。
地域の福祉・教育機関とのネットワーク
として、151 施設中 87 施設で、保育所等
との並行通園・通所が行われていた。しか
し、保育所・園側の体制が整っていない、
連携・情報共有が進んでいないなどの声が
数多く寄せられていた。一方で、ほとんど
の施設が、今後、並行通所・並行通園が必
要と考えていた。
これらの地域におけるネットワークがで
きない原因として「中心となる団体がな
い」ことが挙げられていた。実際のネット
ワーク運営においても、自治体の関与が大
きな要因となっており、行政側からのサポ
ートが必要と考えられた。医療的ケア児支
援法の施行により、医療的ケア児支援セン
ター、医療的ケアコーディネーターからの
積極的な働きかけが増え、改善していくこ
とを期待したい。
嘱託医の現状に関しては、ごく一部の好
事例を除き、多くの施設が、「嘱託医の位
置づけが不明」と指摘していた。「主治医
との関係が難しい」との意見も多く挙げら
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