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資料3-3―② 西浦先生提出資料 (1 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00395.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード (第110回 12/14)《厚生労働省》 |
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超過死亡が目立つ中での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の致死率に関する考察
2022 年 12 月 13 日
西浦 博
1. 問題設定
静岡県資料[1]によると、2022 年 7 月 1 日から 11 月 30 日における COVID-19 の BA.5
亜系統感染によると思われる 60 歳未満および 60 歳以上それぞれの致死率は 0.004%
(=10/260031)および 0.59%(=315/53419)と算出された。うち、コロナが主たる死因とさ
れ る も の だ け を 検 討 し た 致 死 率 は 60 歳 未 満 お よ び 60 歳 以 上 そ れ ぞ れ の
0.001%(=3/260031)および 0.29%(=156/53419)であった。これらを利用して、季節性イ
ンフルエンザの致死率との比較についての言及が行われた。同様の資料は静岡県だけでな
く、例えば大阪府[2]では、令和 4 年 6 月 25 日から 9 月 26 日における 60 歳未満および 60
歳以上それぞれの致死率を 0.01%および 0.75%と推定し、それと季節性インフルエンザと
の比較を行った。また、東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議[3]では令和
4 年 7 月 1 日から 9 月 30 日における 50 歳台、60 歳台、70 歳台、80 歳台、90 歳台の致死
率をそれぞれ 0.025%、0.075%、0.404%、1.434%、2.958%と推定した。
これら出典に限らず、疾病間で致死率の単純な比較計算が行われる傾向がある。しかし、
本計算による致死率の比較議論には以下の問題を伴う:
(1) 流行に起因すると考える超過死亡が多数見られる中、上記の計算には多くの者が
COVID-19 に関連して亡くなっているだろう事実が反映されない
(2) これまでに、循環器疾患など特定の死因による死亡の超過を認める傾向がある。積極
的に COVID-19 と特定死因による超過死亡との因果関係を疑う中で、直接的な観察
による死亡だけで致死率の比較検討を行うべきでない
(3) 不完全な観察に基づく議論が行われる中で、精密な比較が求められる。そのため、死
因統計に関するデータ生成過程を十分に理解した上で死亡リスクと向き合うことが
望ましい。
もちろん、慣例上、観察データとして直接的に手に入る範囲内での計算に基づく致死率が
算出されていることから、上記の計算は導出過程に係るエラーやバイアスを理解した上で
使用する限り、致死率そのものの計算としては本質的に誤りではない。ただし、疾病間の比
較や流行のインパクトを考察する上で、推定上の落とし穴に十分に向かい合えているかと
問われると、その点においては誤りであることを疑う必要がある。本稿の目的は、致死率の
データ生成過程について現行の致死率比較に関する議論の問題を明示し、未観察情報の致
死率推定値への影響について暫定的に定量化することである。
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2022 年 12 月 13 日
西浦 博
1. 問題設定
静岡県資料[1]によると、2022 年 7 月 1 日から 11 月 30 日における COVID-19 の BA.5
亜系統感染によると思われる 60 歳未満および 60 歳以上それぞれの致死率は 0.004%
(=10/260031)および 0.59%(=315/53419)と算出された。うち、コロナが主たる死因とさ
れ る も の だ け を 検 討 し た 致 死 率 は 60 歳 未 満 お よ び 60 歳 以 上 そ れ ぞ れ の
0.001%(=3/260031)および 0.29%(=156/53419)であった。これらを利用して、季節性イ
ンフルエンザの致死率との比較についての言及が行われた。同様の資料は静岡県だけでな
く、例えば大阪府[2]では、令和 4 年 6 月 25 日から 9 月 26 日における 60 歳未満および 60
歳以上それぞれの致死率を 0.01%および 0.75%と推定し、それと季節性インフルエンザと
の比較を行った。また、東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議[3]では令和
4 年 7 月 1 日から 9 月 30 日における 50 歳台、60 歳台、70 歳台、80 歳台、90 歳台の致死
率をそれぞれ 0.025%、0.075%、0.404%、1.434%、2.958%と推定した。
これら出典に限らず、疾病間で致死率の単純な比較計算が行われる傾向がある。しかし、
本計算による致死率の比較議論には以下の問題を伴う:
(1) 流行に起因すると考える超過死亡が多数見られる中、上記の計算には多くの者が
COVID-19 に関連して亡くなっているだろう事実が反映されない
(2) これまでに、循環器疾患など特定の死因による死亡の超過を認める傾向がある。積極
的に COVID-19 と特定死因による超過死亡との因果関係を疑う中で、直接的な観察
による死亡だけで致死率の比較検討を行うべきでない
(3) 不完全な観察に基づく議論が行われる中で、精密な比較が求められる。そのため、死
因統計に関するデータ生成過程を十分に理解した上で死亡リスクと向き合うことが
望ましい。
もちろん、慣例上、観察データとして直接的に手に入る範囲内での計算に基づく致死率が
算出されていることから、上記の計算は導出過程に係るエラーやバイアスを理解した上で
使用する限り、致死率そのものの計算としては本質的に誤りではない。ただし、疾病間の比
較や流行のインパクトを考察する上で、推定上の落とし穴に十分に向かい合えているかと
問われると、その点においては誤りであることを疑う必要がある。本稿の目的は、致死率の
データ生成過程について現行の致死率比較に関する議論の問題を明示し、未観察情報の致
死率推定値への影響について暫定的に定量化することである。
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