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高齢者の「生きがい」の規定要因について ―「役割」と「孤独感」を中心とした分析― 藤森 克彦(PDF形式:356KB) (10 ページ)
出典
公開元URL | https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r03/zentai/pdf_index.html |
出典情報 | 令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果(6/14)《内閣府》 |
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4.まとめ
以上のように、高齢者全体の生きがい保有に正の影響をもたらす規定要因としては、主
観的健康状態が良いこと、家計に心配事がないこと、家族内に役割があること、社会活動
に参加していること、があげられる。一方、高齢者の生きがい保有に負の影響をもたらす
規 定 要 因 と し て は 、未 婚 で あ る こ と 、離 別 し て い る こ と 、孤 独 感 が 高 い こ と が あ げ ら れ る 。
本稿で着目した「役割」や「孤独感」という点では、家族について役割をもつことや社
会 活 動 に 参 加 す る こ と は 、 高 齢 者 の 生 き が い に 正 の 影 響 を も た ら す 要 因 と い え る 3。 一 方 、
孤独感は、高齢者の生きがいに負の影響をもたらす要因である。
次に、
「 未 婚 の 高 齢 者 」や「 離 別 し た 高 齢 者 」に つ い て 生 き が い の 規 定 要 因 を み る と 、孤
独感が高いと生きがいに負の影響をもたらす規定要因になっていること は共通である。
一方、
「 未 婚 の 高 齢 者 」に つ い て は 、単 身 世 帯 で あ る こ と が 二 人 以 上 世 帯 で あ る こ と に 比
べて生きがい保有に正の影響をもたらす規定要因となっている。これは、やや意外な結果
である。この点、未婚の高齢者が二人以上世帯となる場合、子どもが同居人になる比率は
極めて低く、兄弟姉妹や親(本人または配偶者の親)が同居人になることが考えられる。
実際、本調査では、二人以上世帯に属する未婚の高齢者の同居人の比率をみると、兄弟姉
妹 57.1% 、親 24.5% 、子 4.1% 、そ の 他 16.3% と な っ て い る 。そ し て 、未 婚 の 高 齢 者 が 親
と同居する場合、親がかなり高齢であることが考えられ、要介護状態であることも少なく
ないと思われる。また、兄弟姉妹と同居している場合も、一定程度 介護を必要としている
兄弟姉妹がいる可能性がある。二人以上世帯に属する未婚の高齢者が、単身世帯に属する
未婚の高齢者に比べて、生きがいを持ちにくい背景には、こうした「老老介護」が要因に
なっているのかもしれない。
また、
「 離 別 し た 高 齢 者 」で は 、家 計 の 心 配 事 が な い こ と や 、主 観 的 健 康 状 態 が 良 い こ と
は、そうでない場合に比べて、生きがいに正の影響をもたらす規定要因になっている。
以上のように、全体として高齢期に生きがいをもつには、良い健康状態や家計に心配事
がないことに加えて、家族内で役割をもつことや社会活動に参加すること、さらに孤独感
が低いことが重要だと考えられる。
以上
3
な お 、 仕 事 を も つ こ と は 必 ず し も 有 意 な 差 が 認 め ら れ な い が 、 p =0.083 で あ り 有 意 傾 向 に あ る 差 が
認められる。
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以上のように、高齢者全体の生きがい保有に正の影響をもたらす規定要因としては、主
観的健康状態が良いこと、家計に心配事がないこと、家族内に役割があること、社会活動
に参加していること、があげられる。一方、高齢者の生きがい保有に負の影響をもたらす
規 定 要 因 と し て は 、未 婚 で あ る こ と 、離 別 し て い る こ と 、孤 独 感 が 高 い こ と が あ げ ら れ る 。
本稿で着目した「役割」や「孤独感」という点では、家族について役割をもつことや社
会 活 動 に 参 加 す る こ と は 、 高 齢 者 の 生 き が い に 正 の 影 響 を も た ら す 要 因 と い え る 3。 一 方 、
孤独感は、高齢者の生きがいに負の影響をもたらす要因である。
次に、
「 未 婚 の 高 齢 者 」や「 離 別 し た 高 齢 者 」に つ い て 生 き が い の 規 定 要 因 を み る と 、孤
独感が高いと生きがいに負の影響をもたらす規定要因になっていること は共通である。
一方、
「 未 婚 の 高 齢 者 」に つ い て は 、単 身 世 帯 で あ る こ と が 二 人 以 上 世 帯 で あ る こ と に 比
べて生きがい保有に正の影響をもたらす規定要因となっている。これは、やや意外な結果
である。この点、未婚の高齢者が二人以上世帯となる場合、子どもが同居人になる比率は
極めて低く、兄弟姉妹や親(本人または配偶者の親)が同居人になることが考えられる。
実際、本調査では、二人以上世帯に属する未婚の高齢者の同居人の比率をみると、兄弟姉
妹 57.1% 、親 24.5% 、子 4.1% 、そ の 他 16.3% と な っ て い る 。そ し て 、未 婚 の 高 齢 者 が 親
と同居する場合、親がかなり高齢であることが考えられ、要介護状態であることも少なく
ないと思われる。また、兄弟姉妹と同居している場合も、一定程度 介護を必要としている
兄弟姉妹がいる可能性がある。二人以上世帯に属する未婚の高齢者が、単身世帯に属する
未婚の高齢者に比べて、生きがいを持ちにくい背景には、こうした「老老介護」が要因に
なっているのかもしれない。
また、
「 離 別 し た 高 齢 者 」で は 、家 計 の 心 配 事 が な い こ と や 、主 観 的 健 康 状 態 が 良 い こ と
は、そうでない場合に比べて、生きがいに正の影響をもたらす規定要因になっている。
以上のように、全体として高齢期に生きがいをもつには、良い健康状態や家計に心配事
がないことに加えて、家族内で役割をもつことや社会活動に参加すること、さらに孤独感
が低いことが重要だと考えられる。
以上
3
な お 、 仕 事 を も つ こ と は 必 ず し も 有 意 な 差 が 認 め ら れ な い が 、 p =0.083 で あ り 有 意 傾 向 に あ る 差 が
認められる。
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