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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 10.1 版 (12 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00111.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 10.1 版(4/23)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第 10.1 版 ●2 臨床像

%)

接種対象年齢の者が 26 例(52 %)であり,
接種対象年齢(当時 5 歳以上)の 26 例では,
未接種が 23 例(88 %),2 回接種が 3 例(12 %)であった.

小児死亡例の症状は,呼吸器症状以外の症状のうち,悪心・嘔吐(46%)
,意識障害(42%)


痙攣(36%),経口摂取不良(22%)などの割合が高かったことから,小児においては,痙攣,
意識障害などの神経症状や,嘔吐,経口摂取不良などの呼吸器症状以外の全身症状の出現にも
注意を払う必要がある.また,死亡に至る経緯として,中枢神経系の異常と循環器系の異常が

多く,いずれも急激な全身状態の悪化が見られたこと,内因性死亡と考えられた小児等の死亡
例 50 例においても,発症から心肺停止および死亡までの日数は,中央値がそれぞれ 2.0 日,3.0
日であり,1 週間未満の症例がそれぞれ 81%,75% を占めたことから,基礎疾患がない小児

においても,特に発症後1週間の症状の経過観察が重要であると考えられた.
流行期間を通して,
小児における致死率の上昇は確認されていないが,小児感染例の増加に伴う重症例の増加には
注意が必要である.

【小児多系統炎症性症候群 (Multisystem Inflammatory Syndrome in Children: MIS-C)】

欧米では,COVID-19 パンデミックに伴い,若年感染者の中に複数臓器に強い炎症を認め,その

中に川崎病と類似した症例のあることが報告され,小児多系統炎症性症候群(MIS-C または PIMSTS)と呼んだ.その典型的な経過は,COVID-19 の罹患後 2 ~ 6 週目に,高熱と下痢,嘔吐,腹痛

などの消化器症状と相前後して,血圧低下,ショック,心筋収縮能低下を示し,集中治療を必要と

するもので,その多くに全身の紅斑・発疹や,眼球結膜充血,口唇・口腔粘膜の発赤や,いちご舌,

指趾の発赤など,川崎病に似た症状を伴い,川崎病の診断基準を満たすものが多数見られるとされた.
一部には川崎病と同様に,冠動脈の拡張や瘤形成が報告されている.痙攣,意識障害等の神経症状

もみられ,検査所見では,リンパ球,血小板の低下が著しく,CRP, NT-proBNP または BNP,
IL- 6,D ダイマー,フェリチンなど多くの炎症性マーカーが上昇する重篤な続発症であると報じら
れた.米国 CDC では,2024 年 1 月末までに 9,645 例が登録され,死亡例は 79 例(0.8%)にの
ぼる.

一方,日本では 2020 年には症例の報告はなく,その年末から 2021 年初頭のいわゆる ‘ 第 3 波 ’

の時期になって MIS-C と考えられる症例が報告され始め,日本小児科学会が中心となって,エキス

パートコンセンサスとして,MIS-C の診断アルゴリズムを公表した(図 2-3).小児の感染者
数増加に伴い,報告が相次ぐようになり,2022 年夏から,日本小児科学会,日本集中治療医

学会,日本小児循環器学会,日本川崎病学会の連携により,MIS-C の全国調査を開始した.そ

の結果,とくに 2022 年以降のオミクロンによる小児感染者の急増により,2023 年 11 月の

時点で 120 例以上の症例が報告された.それらに基づく疫学・臨床像の分析では,下記のよ
うな結果を得ている.
1.患者背景と疫学

① SARS-CoV-2 感染後 5 ~6週後に発症した症例が最も多く,90%以上の症例が2週後から最長
10 週後までに発症していた.

② 年齢は中央値 9.1 歳,1 ~ 16 歳までが報告された.性別は男児が 63.5 %であった.

③ 患者数の時期的変動は感染増加に数週遅れてピークがあり,とくにオミクロンに置き換わってか
らの小児患者の増加に伴い増加している.

④ ワクチン接種歴があるのは 2 例のみで,95 %が未接種者であった.
⑤ 国内では,現在までに MIS-C の死亡例はみられていない.

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