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○医療経済実態調査の結果に対する見解について-4-2 (11 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00125.html |
出典情報 | 中央社会保険医療協議会 総会(第502回 12/3)《厚生労働省》 |
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令和3年 12 月3日
公益社団法人 日本歯科医師会
第 23 回 中医協・医療経済実態調査結果
(個人立歯科診療所)について
歯科診療所に占める個人立歯科診療所割合は経年的に減少しているものの直近でも 77.6%
(令和元年)と約 8 割を占め、地域歯科医療を担う中核としてその役割を果たしており、新型
コロナウイルス感染症の収束が見えないなか、様々な困難に直面しつつ地域住民の口腔健康管
理に使命感をもって診療に従事している。
本調査は、数年前より回答率向上の観点から、青色申告での省略形式提出も可能となり、こ
こ数回のなかでは今回は最も有効回答率が高く、調査への理解や関心度が高まっていることが
うかがえた(図 1)。
個人立歯科診療所の令和 2 年度の損益差額をみると、前年度比で▲8.4%であり、コロナ関連
の補助金を加味しても▲2.0%と厳しい状況が明らかとなった(表 1)。また、損益差額の分布を
みると、平均値や中央値に示される層と最頻値の層とは大きく乖離しており、右に裾の長い分
布を示し、歯科診療所間の格差が大きくなっている。特に都市部等では、テレワークの推進な
どの影響による患者の受診行動の変化などから、地域間での格差が顕在化する可能性もあり、
更なる精査も必要と考えられた(図2)
。
個人立歯科診療所のうち、省略形式で回答をした歯科診療所では、比較的規模が小さいが、
保険診療収益とともに介護収益の落ち込みが明らかであった。詳細な調査に対応できる歯科診
療所は比較的規模が大きく、税務関連業務等を委託できる歯科診療所が多いと考えられるが、
医業・介護費用からは「より小規模な歯科診療所ほど切り詰める部分が少なく、経営が困難と
なっている」ことが示唆され、引き続き注視していく必要がある(表2)
。
また、医業・介護費用に関しては前年度比で▲1.1%であり、給与費はほぼ横ばい、委託費用
や減価償却費用またその他の医業費用は 3~6%の減少であるのに対し、医薬品費及び歯科材料
費に関しては 6~7%の増加となっていた(表 1)。歯科材料費増加の原因として、欠損補綴治
療で通常使用される貴金属のパラジウム価格が、令和元年 10 月頃より自動車の触媒や工業用
途の需要の高まりによって急騰したことも影響している。令和 2 年度診療報酬改定直後に歯科
用貴金属の材料価格制度の見直しが行われたが、抜本的な解決には至っていない。また、新型
コロナウイルス感染症への対応として、これまでのスタンダード・プリコーションに加えて、
外科的処置や飛沫が多い歯科治療の特性を踏まえた医療機関ごとの様々な感染予防策の実施、
特に密を避けるための患者予約調整や処置前後の含嗽剤使用、換気対策などこれまで以上の対
応を迫られるなか、歯科材料費の高騰の影響も計り知れない。給与費を含めた経費の切りつめ
が限界のなか、受診控えなどの影響で厳しいと言われてきた歯科業界にとって更に経験したこ
とのない状況が続いている。コロナ対策として補助金や様々な診療報酬上の措置がなされてき
たが、今回の医療経済実態調査結果からも、補助金を加味しても依然として厳しい経営実態が
確認できた。また、数十年にわたる経年変化(図 3)からも歯科診療所の経営状況は回復傾向
になく、安全安心を前提とした歯科医療提供体制を継続的に維持するための早急な方策や対応
が必要不可欠である。
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公益社団法人 日本歯科医師会
第 23 回 中医協・医療経済実態調査結果
(個人立歯科診療所)について
歯科診療所に占める個人立歯科診療所割合は経年的に減少しているものの直近でも 77.6%
(令和元年)と約 8 割を占め、地域歯科医療を担う中核としてその役割を果たしており、新型
コロナウイルス感染症の収束が見えないなか、様々な困難に直面しつつ地域住民の口腔健康管
理に使命感をもって診療に従事している。
本調査は、数年前より回答率向上の観点から、青色申告での省略形式提出も可能となり、こ
こ数回のなかでは今回は最も有効回答率が高く、調査への理解や関心度が高まっていることが
うかがえた(図 1)。
個人立歯科診療所の令和 2 年度の損益差額をみると、前年度比で▲8.4%であり、コロナ関連
の補助金を加味しても▲2.0%と厳しい状況が明らかとなった(表 1)。また、損益差額の分布を
みると、平均値や中央値に示される層と最頻値の層とは大きく乖離しており、右に裾の長い分
布を示し、歯科診療所間の格差が大きくなっている。特に都市部等では、テレワークの推進な
どの影響による患者の受診行動の変化などから、地域間での格差が顕在化する可能性もあり、
更なる精査も必要と考えられた(図2)
。
個人立歯科診療所のうち、省略形式で回答をした歯科診療所では、比較的規模が小さいが、
保険診療収益とともに介護収益の落ち込みが明らかであった。詳細な調査に対応できる歯科診
療所は比較的規模が大きく、税務関連業務等を委託できる歯科診療所が多いと考えられるが、
医業・介護費用からは「より小規模な歯科診療所ほど切り詰める部分が少なく、経営が困難と
なっている」ことが示唆され、引き続き注視していく必要がある(表2)
。
また、医業・介護費用に関しては前年度比で▲1.1%であり、給与費はほぼ横ばい、委託費用
や減価償却費用またその他の医業費用は 3~6%の減少であるのに対し、医薬品費及び歯科材料
費に関しては 6~7%の増加となっていた(表 1)。歯科材料費増加の原因として、欠損補綴治
療で通常使用される貴金属のパラジウム価格が、令和元年 10 月頃より自動車の触媒や工業用
途の需要の高まりによって急騰したことも影響している。令和 2 年度診療報酬改定直後に歯科
用貴金属の材料価格制度の見直しが行われたが、抜本的な解決には至っていない。また、新型
コロナウイルス感染症への対応として、これまでのスタンダード・プリコーションに加えて、
外科的処置や飛沫が多い歯科治療の特性を踏まえた医療機関ごとの様々な感染予防策の実施、
特に密を避けるための患者予約調整や処置前後の含嗽剤使用、換気対策などこれまで以上の対
応を迫られるなか、歯科材料費の高騰の影響も計り知れない。給与費を含めた経費の切りつめ
が限界のなか、受診控えなどの影響で厳しいと言われてきた歯科業界にとって更に経験したこ
とのない状況が続いている。コロナ対策として補助金や様々な診療報酬上の措置がなされてき
たが、今回の医療経済実態調査結果からも、補助金を加味しても依然として厳しい経営実態が
確認できた。また、数十年にわたる経年変化(図 3)からも歯科診療所の経営状況は回復傾向
になく、安全安心を前提とした歯科医療提供体制を継続的に維持するための早急な方策や対応
が必要不可欠である。
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