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資料2-7 「向精神薬が自動車の運転技能に及ぼす影響の評価方法に関するガイドライン」について (5 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31510.html |
出典情報 | 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会医薬品等安全対策部会(令和4年度第4回 3/2)《厚生労働省》 |
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緒言
I.
精神疾患は、精神機能の基盤となる心理学的、生物学的、または発達過程の機能不全を
反映する個人の認知、情動制御、または行動における臨床的に意味のある障害によって特
徴づけられる症候群である。精神疾患の発症を継続的かつ長期間にわたり調査した複数の
前向きコホート研究の結果からは、精神疾患の生涯有病率は 70-80%に及ぶことが推定され
ている。また、2019 年の患者調査では本邦の医療機関を利用した精神疾患の総患者数は
500 万人を超えている。精神疾患において薬物療法は重要な治療選択肢であり、症状の軽
減とともに、社会的、職業的、又は他の重要な活動における苦痛や機能低下の改善を図る
ことが治療目標とされている。そして、精神疾患の多くが慢性疾患であり、症状の軽減後
も再燃や再発を予防するために薬物治療は欠かせないものとなっている。
これまで向精神薬1)の本邦における添付文書では、自動車の運転等危険を伴う機械の操作
に従事させないことを規定しているものが多かった。しかしながら、既に眠気などの副作用
が少ない向精神薬が使用可能になっている。このため、自動車の運転技能に及ぼす影響を検
討し適切な注意喚起を行うことは、患者の安全を守るだけでなく、治療の選択肢が広がり患
者に適切な治療薬が提供され症状の悪化及び再発防止に寄与できると考えられる。
自動車の運転は、覚醒機能、感覚機能、認知機能、精神運動機能が関与した複合的な動作
であり、神経系障害に関連する有害事象(傾眠や鎮静等)による影響だけを受けるわけでは
ない。向精神薬以外にも自動車の運転技能に影響を及ぼす可能性がある薬剤(血糖降下剤、
抗アレルギー剤等)は存在するが、自動車の運転技能に及ぼす影響は医薬品の特性により異
なり、医薬品の特性に応じた方法で評価する必要があり、本ガイドラインは向精神薬 1)を対
象とする。
本ガイドラインは、向精神薬として開発される新医薬品の自動車の運転技能に及ぼす影
響を検討するため、臨床試験の計画、実施、評価法等について標準的方法と手順を概説した
ものである。本ガイドラインに準じることにより、臨床試験を科学的かつ倫理的に行い、質
的向上が図られ、国際的にも一定の評価が得られることが期待される。しかし、医薬品の自
動車の運転技能に及ぼす影響に関する臨床的及び基礎的研究は、今後も急速に進歩するこ
とが予想され、新しい検査法、治療法が導入される時点において、本ガイドラインも適宜改
訂されるべきである。また、本ガイドラインの運用に当たっては、合理的な根拠がある場合、
必ずしも本ガイドラインに拘ることなく柔軟な対応が望まれる。また、既承認の向精神薬を
評価する場合も本ガイドラインを参考にされたい。
本ガイドラインは、個々の患者の自動車運転の適性を評価する方法を示すものではない。
自動車の運転技能には、医薬品以外に病状、年齢、そして生活習慣等も影響することがある。
1): 向精神薬は、麻薬及び向精神薬取締法で規定される向精神薬ではなく、日本標準商品分類(分類番号)の抗不安剤
(112)、催眠鎮静剤(112)
、抗てんかん剤(113)
、抗うつ剤(117)、精神神経用剤(117)
、その他の中枢神経用薬
(119)のうち不眠症、ナルコレプシー、注意欠陥/多動性障害の治療薬等をいう。
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I.
精神疾患は、精神機能の基盤となる心理学的、生物学的、または発達過程の機能不全を
反映する個人の認知、情動制御、または行動における臨床的に意味のある障害によって特
徴づけられる症候群である。精神疾患の発症を継続的かつ長期間にわたり調査した複数の
前向きコホート研究の結果からは、精神疾患の生涯有病率は 70-80%に及ぶことが推定され
ている。また、2019 年の患者調査では本邦の医療機関を利用した精神疾患の総患者数は
500 万人を超えている。精神疾患において薬物療法は重要な治療選択肢であり、症状の軽
減とともに、社会的、職業的、又は他の重要な活動における苦痛や機能低下の改善を図る
ことが治療目標とされている。そして、精神疾患の多くが慢性疾患であり、症状の軽減後
も再燃や再発を予防するために薬物治療は欠かせないものとなっている。
これまで向精神薬1)の本邦における添付文書では、自動車の運転等危険を伴う機械の操作
に従事させないことを規定しているものが多かった。しかしながら、既に眠気などの副作用
が少ない向精神薬が使用可能になっている。このため、自動車の運転技能に及ぼす影響を検
討し適切な注意喚起を行うことは、患者の安全を守るだけでなく、治療の選択肢が広がり患
者に適切な治療薬が提供され症状の悪化及び再発防止に寄与できると考えられる。
自動車の運転は、覚醒機能、感覚機能、認知機能、精神運動機能が関与した複合的な動作
であり、神経系障害に関連する有害事象(傾眠や鎮静等)による影響だけを受けるわけでは
ない。向精神薬以外にも自動車の運転技能に影響を及ぼす可能性がある薬剤(血糖降下剤、
抗アレルギー剤等)は存在するが、自動車の運転技能に及ぼす影響は医薬品の特性により異
なり、医薬品の特性に応じた方法で評価する必要があり、本ガイドラインは向精神薬 1)を対
象とする。
本ガイドラインは、向精神薬として開発される新医薬品の自動車の運転技能に及ぼす影
響を検討するため、臨床試験の計画、実施、評価法等について標準的方法と手順を概説した
ものである。本ガイドラインに準じることにより、臨床試験を科学的かつ倫理的に行い、質
的向上が図られ、国際的にも一定の評価が得られることが期待される。しかし、医薬品の自
動車の運転技能に及ぼす影響に関する臨床的及び基礎的研究は、今後も急速に進歩するこ
とが予想され、新しい検査法、治療法が導入される時点において、本ガイドラインも適宜改
訂されるべきである。また、本ガイドラインの運用に当たっては、合理的な根拠がある場合、
必ずしも本ガイドラインに拘ることなく柔軟な対応が望まれる。また、既承認の向精神薬を
評価する場合も本ガイドラインを参考にされたい。
本ガイドラインは、個々の患者の自動車運転の適性を評価する方法を示すものではない。
自動車の運転技能には、医薬品以外に病状、年齢、そして生活習慣等も影響することがある。
1): 向精神薬は、麻薬及び向精神薬取締法で規定される向精神薬ではなく、日本標準商品分類(分類番号)の抗不安剤
(112)、催眠鎮静剤(112)
、抗てんかん剤(113)
、抗うつ剤(117)、精神神経用剤(117)
、その他の中枢神経用薬
(119)のうち不眠症、ナルコレプシー、注意欠陥/多動性障害の治療薬等をいう。
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