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生活機能の自立・非自立、都市規模別にみた高齢者 小林 江里香 (12 ページ)

公開元URL https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r03/zentai/pdf_index.html
出典情報 令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果(6/14)《内閣府》
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4.まとめと考察
生活機能の非自立者は自立者に比べて心理的ウェルビーイングが低く、この点には都市規
模による違いはみられなかった。特に、非自立者の5割強は生きがい(喜びや楽しみ)を感
じておらず、非自立者の主観的な生活の質の向上が課題であることが改めて示された。非自
立者のウェルビーイングが低い理由としては、家族・親族内での役割、近所付き合い、社会
活動への参加のどの側面でみても自立者に比べて乏しいことが挙げられる。生活機能と社会
関係・活動との関係については、生活機能の低下によって社会関係や活動が制限されるだけ
でなく、社会関係・活動が乏しい人ほど生活機能が低下しやすいことも報告されている 5)6) 。
また、自力でできないことが増えるにつれてウェルビーイングが低下し、活動参加への意欲
や自信をなく すという 悪循環に 陥る ことも考 えられる。
このような悪循環を断ち切るには、生活機能が低下した人の特性に配慮した、非自立者が
参加しやすい趣味・学習、健康づくりや住民同士の交流の場を、近隣に増やしていく必要が
ある。コロナ下という事情はあるが、現状では非自立者の約6割はこの1年に自主的活動に
参 加 し て お ら ず ( 表 5 )、 外 出 機 会 も 乏 し い ( 図 3 )。 住 民 が 主 体 的 に 取 り 組 む 健 康 づ く り や
趣味・学習などのグループ活動は、介護予防に資する「通いの場」として、介護保険法に基
づ く 一 般 介 護 予 防 事 業 で も 推 進 さ れ て い る 7 )。 住 民 主 体 の 介 護 予 防 活 動 は 、 前 述 の 地 域 包 括
ケ ア シ ス テ ム 2 ) の 中 に も 位 置 づ けら れ て いるが 、 こ の シス テ ム が持続 可 能 な もの に な るため
には、高齢者自身が介護予防活動の運営に参加したり、自立高齢者が非自立高齢者の生活支
援(見守り、外出支援など)を行うボランティア活動に参加するなど、地域の支え手として
活 躍 す る こ と が 期 待 さ れ る 。 し か し な が ら 、「 高 齢 者 の 支 援 ( 家 事 援 助 、 移 送 等 )」 を 実 施 し
た人は 自立 者に 限っ て も 2. 5 %と少 ない のが 現状で あり (表 5)、自 立高齢 者に おけ る地 域 貢
献型活動への 参加率の 向上も課題と して残さ れている。
さらに、高齢者の社会参加の促進には、外出しやすい物理的環境やわかりやすい情報提供
も重要である。回答者の8割は自立者のため、全体の集計では非自立者の視点が反映されに
くいが、生活機能別の分析を行うことで、非自立者は自立者に比べて近隣の物理的環境に多
くの不便さを感じ、日常生活で必要な情報により不満を感じていることが明らかになった。
物 理 的 環 境 につ い て は、 大 都 市 の 住民 の ほ うが 不 便 さ を 認識 し て いる 傾 向 が あ った が ( 表8 )、
大都市以外の地域では、自家用車での移動が多く、徒歩や公共交通機関での移動の機会が少
ないなど、移 動手段の 違い によるの かもしれ ない 。
全体として、都市規模による差は生活機能による差ほど顕著ではなかったが、物理的環境
以外にも大都市の自立高齢者が他地域と異なる傾向を示した点があった。例えば、自立高齢
者内の比較では、大都市では家族・親族内役割を持たない割合が中都市や小都市・町村に比
べ て 高 く ( 表3 )、 こ れに は 独 居 率 の高 さ ( 図1 ) が 関 係 して い る と 思 わ れ る 。 また 、 大 都市
では互助的な近所付き合いや、生活環境改善など町会等の地域組織で取り組むことの多い地
域 貢 献 型 活 動へ の 参 加率 も 低 い が (表 4 、 表5 )、 地 縁 ・ 血 縁 ネ ットワ ー ク の 弱 さは 大 都 市の
特徴でもあり、それ自体を大きく変えようとするのは現実的ではない。大都市では、住民ボ
ランティアが「サロン」や「コミュニティカフェ」などゆるやかな関係性で住民同士の交流
を楽しめる場を運営するなど、都市の特徴や住民のニーズに合った活動を模索していく必要
があるだろう 。

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