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資料3-11―① 押谷先生・鈴木先生・西浦先生・脇田先生提出資料 (9 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00395.html |
出典情報 | 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード (第110回 12/14)《厚生労働省》 |
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とが指摘されている 37。
このような医療のひっ迫が起こる理由としては、COVID-19 の診療のための病院ベッド
など医療資源を別に確保することが求められていることや、流行時に医療従事者の欠勤が
増えることなども関連していると考えられるが、パンデミック以前にも医療体制には余裕
がなかったところに非常に多くの感染者や医療を必要とする重症者が生じることによって
医療ひっ迫は起きていると考えるべきだと考えられる。
循環器系の合併症の項で、イングランドの心血管系の原因による超過死亡が増加してい
るという例をあげたが、これは COVID-19 が直接の原因になっているだけではなく、医療
がひっ迫することで COVID-19 以外の適切な医療が提供できなくなったことによるという
可能性も指摘されている
。国内でも流行の拡大とともに一般医療の制限をせざるを得な
28
い状況が生まれており、このような一般医療への影響が長期的にどのような健康被害をも
たらすのかについても十分な検討をする必要がある。日本でも超過死亡が増えているが、
それには一般医療への負荷が影響している可能性もあり、その要因についてさらに解析す
る必要がある。
2) 社会機能へのインパクト
WHO の PISA でもインパクトの項目で医療だけではなく社会機能に対するインパクトも
考慮するように求めている。国内でも流行が急速に拡大した第 6 波・第 7 波では、欠勤者
が増えたことにより交通機関などに影響がでたことが報告されている。濃厚接触者の基準
が緩和されたことにより濃厚接触者としての欠勤者は減っているが、この対応は逆に職場
でのクラスター発生のリスクを増大させることにつながる可能性がある。また今後さらに
流行規模が大きくなれば、罹患や罹患後症状による欠勤者が増え、社会機能維持に支障が
生じるリスクも存在している。一方で、感染症法に基づく公衆衛生対応(行動制限)を継
続することによる社会や経済に対するインパクトも発生している点には留意が必要である。
III. COVID-19 パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか
1)今後予測される状況
COVID-19 のパンデミックもどこかの時点で季節性インフルエンザと同じような特徴を
もった感染症になると考えられる。しかし、ここまで見てきたように COVID-19 は季節性
インフルエンザとは明らかに違う特徴を持った感染症であり、季節性インフルエンザと同
じような特徴を持った感染症になるとしても相当の時間を要すると考えられる。
英国の SAGE (Scientific Advisory Group for Emergencies)は 2022 年 1 月に発表した
中・長期的予測の中で、今後の疫学的状況は以下の 3 つの要因によって決まるとしている。
つまり、①変異株の出現、②新たな子どもの出生や免疫の減弱による感受性者の増加、③
人の接触のパターンの変化や季節性、の 3 つの要因である。さらにこの文書では、この先
の数年間の状況は極めて不確実で、流行の波を繰り返し、安定した状況になるのには何年
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このような医療のひっ迫が起こる理由としては、COVID-19 の診療のための病院ベッド
など医療資源を別に確保することが求められていることや、流行時に医療従事者の欠勤が
増えることなども関連していると考えられるが、パンデミック以前にも医療体制には余裕
がなかったところに非常に多くの感染者や医療を必要とする重症者が生じることによって
医療ひっ迫は起きていると考えるべきだと考えられる。
循環器系の合併症の項で、イングランドの心血管系の原因による超過死亡が増加してい
るという例をあげたが、これは COVID-19 が直接の原因になっているだけではなく、医療
がひっ迫することで COVID-19 以外の適切な医療が提供できなくなったことによるという
可能性も指摘されている
。国内でも流行の拡大とともに一般医療の制限をせざるを得な
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い状況が生まれており、このような一般医療への影響が長期的にどのような健康被害をも
たらすのかについても十分な検討をする必要がある。日本でも超過死亡が増えているが、
それには一般医療への負荷が影響している可能性もあり、その要因についてさらに解析す
る必要がある。
2) 社会機能へのインパクト
WHO の PISA でもインパクトの項目で医療だけではなく社会機能に対するインパクトも
考慮するように求めている。国内でも流行が急速に拡大した第 6 波・第 7 波では、欠勤者
が増えたことにより交通機関などに影響がでたことが報告されている。濃厚接触者の基準
が緩和されたことにより濃厚接触者としての欠勤者は減っているが、この対応は逆に職場
でのクラスター発生のリスクを増大させることにつながる可能性がある。また今後さらに
流行規模が大きくなれば、罹患や罹患後症状による欠勤者が増え、社会機能維持に支障が
生じるリスクも存在している。一方で、感染症法に基づく公衆衛生対応(行動制限)を継
続することによる社会や経済に対するインパクトも発生している点には留意が必要である。
III. COVID-19 パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか
1)今後予測される状況
COVID-19 のパンデミックもどこかの時点で季節性インフルエンザと同じような特徴を
もった感染症になると考えられる。しかし、ここまで見てきたように COVID-19 は季節性
インフルエンザとは明らかに違う特徴を持った感染症であり、季節性インフルエンザと同
じような特徴を持った感染症になるとしても相当の時間を要すると考えられる。
英国の SAGE (Scientific Advisory Group for Emergencies)は 2022 年 1 月に発表した
中・長期的予測の中で、今後の疫学的状況は以下の 3 つの要因によって決まるとしている。
つまり、①変異株の出現、②新たな子どもの出生や免疫の減弱による感受性者の増加、③
人の接触のパターンの変化や季節性、の 3 つの要因である。さらにこの文書では、この先
の数年間の状況は極めて不確実で、流行の波を繰り返し、安定した状況になるのには何年
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