とくに看過できないのは、死亡退院の件数が多いことである。20 年以上長期入院の減少
は、人口の減少や死亡退院の影響が否めない。実際、令和元年 6 月中及び令和 2 年 6 月中の
退院者の転帰は、死亡退院者数が障害福祉施設への地域移行者数を上回っている。
■退院後転帰×在院期間
退院後転帰
在宅
他院の精神病床
自院の精神病床以外の病床
他院の精神病床以外の病床
障害福祉施設
介護施設
死亡
不明
合計
※令和2年6月中の退院患者対象

総数
17,398
1,250
462
3,272
1,497
3,124
1,921
93
29,017

1ヶ月未満
4,044
313
92
480
152
152
122
17
5,372

在院期間
1ヶ月以上 3ヶ月以上 6ヶ月以上 1年以上 5年以上 10年以上
20年以上
3ヶ月未満 6ヶ月未満 1年未満 5年未満 10年未満 20年未満
7,727
4,120
921
533
35
12
6
427
206
125
119
29
18
13
107
71
49
109
22
8
4
815
483
386
700
192
124
92
502
490
157
152
29
10
5
856
1,101
524
424
37
15
15
297
284
293
601
167
92
64
43
15
7
8
2
1
0
10,774
6,770
2,462
2,646
513
280
199

不明
0
0
0
0
0
0
1
0
1

■退院後転帰×在院期間
退院後転帰

総数

在宅
19,569
他院の精神病床
1,305
自院の精神病床以外の病床
409
他院の精神病床以外の病床
3,206
障害福祉施設
1,360
介護施設
3,103
死亡
1,998
不明
76
合計
31,026
※令和元年6月中の退院患者対象

1ヶ月未満
3,962
306
95
486
130
139
111
19
5,248

在院期間
1ヶ月以上 3ヶ月以上 6ヶ月以上 1年以上 5年以上 10年以上
20年以上
3ヶ月未満 6ヶ月未満 1年未満 5年未満 10年未満 20年未満
9,263
4,403
1,065
706
86
52
32
495
220
93
128
28
22
13
124
41
44
68
20
13
4
890
460
351
643
184
108
84
476
374
156
185
26
8
5
997
953
496
448
43
20
7
372
292
285
585
188
96
69
30
20
3
3
0
0
1
12,647
6,763
2,493
2,766
575
319
215

不明
0
0
0
0
0
0
0
0
0

②医療保護入院者の身上に配慮しない家族等の問題
旧保護者制度は、保護者に対して法に基づく義務が生じていた。家族等の同意に改正され
て法に基づく義務こそ生じていないが、依然として同意した家族には医療保護入院者の身
上に配慮することが必要とされている。しかし、医療保護入院者の中には、同意を与えた家
族等と音信不通状態になっている者が少なからずいる。家族等が死亡して身寄りがない例
だけではなく、あからさまに精神科病院に入院だけさせて能動的に関係を断とうとする家
族等も散見される。
③現場における退院手続きの認識の混乱
巷では、医療保護入院の退院に家族等の同意が必要であるとする認識が思いのほか定着
している。また、３）の問題と相まって家族等から退院の同意が取れないことを理由に長期
入院となっている者が相当数いる。平成 24 年度検討においても、入院制度に関する議論の
結果の中に「保護者の同意がなければ退院することができない状況もあり得るため、入院が
長期化しやすい。」が課題としてあげられており、従前から指摘されていたことがわかる。
しかし、医療保護入院は、精神科病院管理者が精神障害者を入院させる制度である。法第
33 条には、入院時の手続きとして精神保健指定医の判断と家族等の同意が規定されている
2