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資料4-1 感染症定期報告感染症別文献一覧表[321KB] (2 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40727.html |
出典情報 | 薬事審議会 医薬品等安全対策部会(令和6年度第1回 6/19)《厚生労働省》 |
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ID
感染症(PT)
出典
概要
Hediウイルス(HEDV)とWuxiangウイルス(WUXV)は、2018年に中国山西省で採
集されたサシチョウバエから初めて分離された、フレボウイルス属ブニヤウイル
ス目フェヌイウイルス科に属する新興ウイルスである。現在、両ウイルスによる
疾患の報告はないが、WUXVが様々な哺乳類細胞系で増殖し顕著な細胞変成
効果を示すこと、マウスで神経症状や死亡を引き起こすこと、WUXVが分離され
た地域のヒトとニワトリの血清からWUXV中和抗体が検出されたことが報告され
ている。一方でHEDVに関する研究は限られており、哺乳類細胞(BHK-21細胞)
で複製するが細胞変性効果は示さないことが報告されている。本研究ではウイ
ルスが発見された地域のヒトと哺乳類におけるHEDVとWUXVの感染状況を調
査するために、ウエスタンブロット法を用いて原因不明の感染症による発熱患
者、地域の動物(イヌ、ニワトリ)の血清試料におけるHEDV、WUXV IgG抗体の
陽性率を調べた。2021年4月13日~2021年8月26日に、中国山西省Yangquan
市の原因不明の発熱を発症した患者から合計29例のヒト血清試料を収集した。
さらに、31例のイヌ血清試料が山西省Yangquan市のペット病院で収集され、36
例のニワトリ血清試料(20例は2018年の山西省Yangquan市由来、16例は2019
年のWuxiang郡由来)が収集された。ヒト血清試料のHEDV陽性率は17.24%
(5/29)、WUXV陽性率は68.96%(20/29)であった。イヌ血清試料のHEDV陽性
率は87.10%(27/31)、WUXV陽性率は70.97%(22/31)であった。ニワトリ血清
試料のHEDV陽性率は47.22%(17/36)、WUXV陽性率は52.78%(19/36)であっ
た。本研究の結果はYangquan市とWuxiang郡のヒト、イヌ、ニワトリにおける
HEDV感染とWUXV感染の存在を示した。これは新たに分離されたサシチョウバ
エ媒介ウイルスの感染状態と疾患との関係を調査した、最初の調査である。
HEDVとWUXVが発熱などの特定の疾患に関与しているかどうかを確定させるこ
とはできなかったが、サシチョウバエ媒介ウイルスはヒトと動物の両方で疾患を
引き起こす可能性がある人獣共通病原体であるため、継続的な監視が不可欠
である。
3 ウイルス感染
Front Cell Infect
Microbiol. 13(2024)
1291937
4 ウイルス感染
問題点:日本において新規オズウイルスによる初めてのヒト感染例が確認され
た。
【概要】新たにヒトにおいて感染することが認められた感染症に関する報告。オ
ズウイルス(Oz virus:OZV)はオルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に分類さ
れる新規RNAウイルスである。2018年に日本でタカサゴキララマダニ
(Amblyomma testudinarium)より分離同定され、野生動物(ニホンザル、イノシ
シ、シカ)の血清抗体調査によって国内での広い分布が予測されていたが、世
界的にヒトでの発症や死亡事例は確認されていなかった。今回初めて、発熱・
倦怠感等を主訴として受診し心筋炎により死亡した患者が、ウイルス学的・病
理学的にOZV感染症と診断された。
【症例】2022年初夏、海外渡航歴のない茨城県在住の70代女性に倦怠感、食
欲低下、嘔吐、関節痛、39℃の発熱が確認された。SARS-CoV-2は陰性であっ
た。肺炎の疑いで抗生剤を処方され、在宅での経過観察中に症状が増悪し、体
動困難となり紹介転院となった。来院時、身体所見として右鼠径部に皮下出血
が認められたが皮疹はみられなかった。入院時、右鼠径部に飽血に近い状態
のマダニの咬着が確認されたため、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を含
NIIDホームページ.
む節足動物媒介感染症が疑われた。入院後の検査ではリケッチア感染症・
https://www.niid.go.jp/
SFTSは否定された。入院後、房室ブロックが認められペースメーカーを留置し
niid/ja/diseases/a/ozv
た。各種検査では心筋炎が疑われたが、その後脈拍が安定したためペースメー
/2630-idsc/iasrカーは抜去した。入院20日目には意識障害及び多発脳梗塞が確認され抗凝固
news/12108療法を開始した。入院26日目、突如心室細動が生じて死亡し、病理解剖が行わ
521p01.html
れた。
【OZV感染症診断の経緯】入院時に採取された全血、血清及び尿に対し、茨城
県衛生研究所において実施した次世代シーケンサーによるメタゲノム解析と
MePIC v2.0を用いた検索で、すべての検体からOZVの遺伝子断片が検出され
た。さらに国立感染症研究所で完全長ウイルスゲノム解析等を実施し、分離さ
れた病原体がOZVであることを確認した。検査結果と病理組織所見より、本症
例はOZV感染により生じたウイルス性心筋炎によって死亡したOZV感染症と診
断した。
【考察】心筋生検及び病理解剖組織では心筋炎の像が観察され、ウイルス核酸
断片が心筋細胞から検出されており、OZVによるウイルス性心筋炎が本症例の
主たる病態として矛盾しない。OZVはマダニから分離されているウイルスである
ことと、本症例ではマダニの咬着が認められたことから、マダニが本ウイルスを
媒介した可能性が考えられる。一方で、咬着していたマダニがもともとOZVを保
有していたかは不明で、本症例が実際にマダニの刺咬によりもたらされたことを
示す確実な証拠は得られていない。OZVのヒトへの感染経路は明らかになって
おらず、今後の調査が必要である。
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感染症(PT)
出典
概要
Hediウイルス(HEDV)とWuxiangウイルス(WUXV)は、2018年に中国山西省で採
集されたサシチョウバエから初めて分離された、フレボウイルス属ブニヤウイル
ス目フェヌイウイルス科に属する新興ウイルスである。現在、両ウイルスによる
疾患の報告はないが、WUXVが様々な哺乳類細胞系で増殖し顕著な細胞変成
効果を示すこと、マウスで神経症状や死亡を引き起こすこと、WUXVが分離され
た地域のヒトとニワトリの血清からWUXV中和抗体が検出されたことが報告され
ている。一方でHEDVに関する研究は限られており、哺乳類細胞(BHK-21細胞)
で複製するが細胞変性効果は示さないことが報告されている。本研究ではウイ
ルスが発見された地域のヒトと哺乳類におけるHEDVとWUXVの感染状況を調
査するために、ウエスタンブロット法を用いて原因不明の感染症による発熱患
者、地域の動物(イヌ、ニワトリ)の血清試料におけるHEDV、WUXV IgG抗体の
陽性率を調べた。2021年4月13日~2021年8月26日に、中国山西省Yangquan
市の原因不明の発熱を発症した患者から合計29例のヒト血清試料を収集した。
さらに、31例のイヌ血清試料が山西省Yangquan市のペット病院で収集され、36
例のニワトリ血清試料(20例は2018年の山西省Yangquan市由来、16例は2019
年のWuxiang郡由来)が収集された。ヒト血清試料のHEDV陽性率は17.24%
(5/29)、WUXV陽性率は68.96%(20/29)であった。イヌ血清試料のHEDV陽性
率は87.10%(27/31)、WUXV陽性率は70.97%(22/31)であった。ニワトリ血清
試料のHEDV陽性率は47.22%(17/36)、WUXV陽性率は52.78%(19/36)であっ
た。本研究の結果はYangquan市とWuxiang郡のヒト、イヌ、ニワトリにおける
HEDV感染とWUXV感染の存在を示した。これは新たに分離されたサシチョウバ
エ媒介ウイルスの感染状態と疾患との関係を調査した、最初の調査である。
HEDVとWUXVが発熱などの特定の疾患に関与しているかどうかを確定させるこ
とはできなかったが、サシチョウバエ媒介ウイルスはヒトと動物の両方で疾患を
引き起こす可能性がある人獣共通病原体であるため、継続的な監視が不可欠
である。
3 ウイルス感染
Front Cell Infect
Microbiol. 13(2024)
1291937
4 ウイルス感染
問題点:日本において新規オズウイルスによる初めてのヒト感染例が確認され
た。
【概要】新たにヒトにおいて感染することが認められた感染症に関する報告。オ
ズウイルス(Oz virus:OZV)はオルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に分類さ
れる新規RNAウイルスである。2018年に日本でタカサゴキララマダニ
(Amblyomma testudinarium)より分離同定され、野生動物(ニホンザル、イノシ
シ、シカ)の血清抗体調査によって国内での広い分布が予測されていたが、世
界的にヒトでの発症や死亡事例は確認されていなかった。今回初めて、発熱・
倦怠感等を主訴として受診し心筋炎により死亡した患者が、ウイルス学的・病
理学的にOZV感染症と診断された。
【症例】2022年初夏、海外渡航歴のない茨城県在住の70代女性に倦怠感、食
欲低下、嘔吐、関節痛、39℃の発熱が確認された。SARS-CoV-2は陰性であっ
た。肺炎の疑いで抗生剤を処方され、在宅での経過観察中に症状が増悪し、体
動困難となり紹介転院となった。来院時、身体所見として右鼠径部に皮下出血
が認められたが皮疹はみられなかった。入院時、右鼠径部に飽血に近い状態
のマダニの咬着が確認されたため、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を含
NIIDホームページ.
む節足動物媒介感染症が疑われた。入院後の検査ではリケッチア感染症・
https://www.niid.go.jp/
SFTSは否定された。入院後、房室ブロックが認められペースメーカーを留置し
niid/ja/diseases/a/ozv
た。各種検査では心筋炎が疑われたが、その後脈拍が安定したためペースメー
/2630-idsc/iasrカーは抜去した。入院20日目には意識障害及び多発脳梗塞が確認され抗凝固
news/12108療法を開始した。入院26日目、突如心室細動が生じて死亡し、病理解剖が行わ
521p01.html
れた。
【OZV感染症診断の経緯】入院時に採取された全血、血清及び尿に対し、茨城
県衛生研究所において実施した次世代シーケンサーによるメタゲノム解析と
MePIC v2.0を用いた検索で、すべての検体からOZVの遺伝子断片が検出され
た。さらに国立感染症研究所で完全長ウイルスゲノム解析等を実施し、分離さ
れた病原体がOZVであることを確認した。検査結果と病理組織所見より、本症
例はOZV感染により生じたウイルス性心筋炎によって死亡したOZV感染症と診
断した。
【考察】心筋生検及び病理解剖組織では心筋炎の像が観察され、ウイルス核酸
断片が心筋細胞から検出されており、OZVによるウイルス性心筋炎が本症例の
主たる病態として矛盾しない。OZVはマダニから分離されているウイルスである
ことと、本症例ではマダニの咬着が認められたことから、マダニが本ウイルスを
媒介した可能性が考えられる。一方で、咬着していたマダニがもともとOZVを保
有していたかは不明で、本症例が実際にマダニの刺咬によりもたらされたことを
示す確実な証拠は得られていない。OZVのヒトへの感染経路は明らかになって
おらず、今後の調査が必要である。
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