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資料4-1 感染症定期報告感染症別文献一覧表[476KB] (2 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44308.html |
出典情報 | 薬事審議会 医薬品等安全対策部会(令和6年度第2回 10/24)《厚生労働省》 |
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感染症(PT)
出典
概要
アストロウイルスは多数の宿主に感染可能な、種間伝播を特徴とする低分子RNAウイルスで、ヒト、
コウモリ、ペット動物(イヌ、ネコ)、家畜(ブタ、ニワトリ、ウシ)、イノシシやラットなどの野生動物を含
む80種以上の宿主から検出されている。感染は無症状の場合から全身性疾患を引き起こす場合ま
であるが、ヒトアストロウイルスは高齢者や免疫不全患者における下痢や胃腸症状との関連が最も
多く、幼児における胃腸炎の原因としてはロタウイルスに次いで2番目に多い。
アストロウイルスは臨床的にも農業的にも重要で公衆衛生上の懸念の可能性があるにもかかわら
ず、最も研究されていない腸管系RNAウイルスである。本研究ではポーランドの野生動物、ペット動
物(イヌ、ネコ)、家畜(ブタ)における感染を調査した。野生動物、ペット動物166匹から腸試料を採取
し、脾臓、リンパ節、腎臓をプールした組織試料を野生動物352匹、ペット動物(ネコ、イヌ)31匹、ブタ
52頭から得た。腸試料、組織試料ホモジネート中のアストロウイルスRNA検出、サンガー配列決定、
RdRp遺伝子のヌクレオチド配列に基づく系統発生解析が行われた。
アストロウイルスRNAは、腸試料ではアカギツネ(n=9、陽性率13.6%)、ラット(n=2、22.2%)、ネコ
(n=1、3.6%)から検出され、組織試料ではブタ(n=8、15.4%)、イノシシ(n=2、2.8%)、アカギツネ
(n=6、4.4%)、ラット(n=3、33.3%)から検出された。本研究のアストロウイルスと参照株のヌクレオチ
ド配列の同一性の割合はブタ、アカギツネ、ラット株で75.9~93.6%の範囲であった。これはアストロ
ウイルスのようなRNAウイルスの進化の歴史は宿主の進化の歴史に従うという一般的な記述を確認
し、種間伝播事象がよくあることではなく例外的であることを示している。しかし種間伝播事象は複数
回立証されているので、除外することはできない。
本研究ではポーランドの野生動物、ペット動物、ブタ集団からアストロウイルスが初めて検出された
ことを報告し、アストロウイルスが野外の動物で頻繁に循環する病原体であることを確認した。
6 ウイルス感染
Viruses. 16(2024)80
7 ウイルス感染
2024年1月27日、中国のNational Health Commissionは、ヒトのインフルエンザA(H10N5)ウイルスと
季節性インフルエンザA(H3N2)の同時感染の確定例1例を世界保健機関(WHO)に通知した。世界
でヒトの鳥インフルエンザA(H10N5)感染が報告されたのは、この症例が初めてである。
本症例は、2023年11月30日に咳嗽などの症状を呈したAnhui Province、Xuancheng Prefecture出身
の60歳超の女性の農業従事者において発生した。女性は2023年12月16日に死亡した。
WHO ホームページ.
Zhejiang Provinceの保健当局は、地元の医療施設が実施した核酸検査、ウイルス培養、遺伝子
https://www.who.int/e シークエンシングを受け、2024年1月22日に患者のサンプルから季節性インフルエンザA(H3N2)サ
mergencies/disease- ブタイプと鳥インフルエンザA(H10N5)サブタイプウイルスを分離した。
outbreakこの患者は、2023年11月26日にアヒル1羽を購入する際に、生きた家禽に接触していた。冷蔵庫に
news/item/2024保管されていたアヒルの肉からの7つのサンプルがH10N5の検査に陽性を示し、2つのサンプルがN5
DON504
に陽性を示した(赤血球凝集素の結果は無し)。この患者にはブタやその他の哺乳類との接触歴は
無かったことなどについて記載。
当局による調査と検査では、ヒトの感染が疑われる新たな感染者は検出されていない。現在入手可
能な疫学情報は、鳥インフルエンザA(H10Nx)ウイルスがヒトの間で持続的に感染する能力を獲得し
ていないことを示唆している。したがって、ヒトからヒトへの感染の可能性は低いと考えられる。(2024
年2月13日付け)
8 エボラ出血熱
エボラウイルス属6種のうち4種は、ヒトの致死的疾患を引き起こし得る人獣共通感染症病原体であ
る。そのうちの1種であるブンディブギョウイルス(BDBV)は、2007年にウガンダ西部の致死的出血性
疾患アウトブレイクで発見された。BDBVヒト症例はこれまでに211例確認され、致死率は33.6%であ
る。コウモリはエボラウイルスの保有宿主である可能性が常に示唆されているが、ほぼすべてのア
ウトブレイクで初発症例の感染源は不明である。ブタは非病原性のレストンエボラウイルスに自然感
染し、実験ではヒト病原性であるエボラウイルスに感染しやすいことが示されている。他のエボラウイ
ルス属に対するブタの感受性や、公衆衛生リスクにおける役割等は不明である。これらの理由から、
家畜のブタのBDBVに対する感受性を明らかにすることを目的とした研究を実施した。
研究はカナダの関係機関が提示する方針に従い、封じ込めレベル4施設で実施された。6週齢ブタ計
14頭を研究に用いた。2つのコホートで1頭ずつ、対照として感染前にサンプリングと剖検を行った。
コホート1の6頭、コホート2の5頭の遠位咽頭にカテーテルを用いてBDBV接種材料を配置して感染さ
Transbound Emerg Dis. せ、コホート2の1頭は培地を偽接種し伝播対照個体とした。ブタは安楽死(コホート1は感染後4、6、8
2024(2024)5350769
日目、コホート2は10、21、28日目にそれぞれ2頭ずつ安楽死)まで直腸・口腔・鼻腔スワブ試料、鼻
腔洗浄液試料、血液試料の採取、直腸温度測定、室内に吊るしたロープによるコホートごとの唾液
試料採取が行われた。L遺伝子を標的とする各試料のrRT-PCRで、血液以外の全ての試料から
BDBV RNAが検出された。体温上昇を呈した2頭以外に臨床症状は認められず、剖検では肺とリン
パ節に肉眼的病変が認められた。剖検で採取された多様な呼吸器試料、リンパ節試料で感染性ウ
イルスが分離された。脾臓、嗅球、大脳からの低レベルのウイルス検出もそれぞれ1頭ずつで認めら
れた。
本研究は、家畜のブタがBDBVに感受性であることを示す最初の実験的感染研究である。結果は、
粘膜曝露後の無症状のブタにおいて増殖性感染の発生、組織播種、感染性ウイルス排出が起こり
得ること、上気道と下気道にウイルス量が多く呼吸器粘膜が重要であることを示した。エボラウイル
スの中間宿主・増幅宿主としてのブタの役割は、ヒトの公衆衛生と食料安全保障の両方にとって懸
念事項である。
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感染症(PT)
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概要
アストロウイルスは多数の宿主に感染可能な、種間伝播を特徴とする低分子RNAウイルスで、ヒト、
コウモリ、ペット動物(イヌ、ネコ)、家畜(ブタ、ニワトリ、ウシ)、イノシシやラットなどの野生動物を含
む80種以上の宿主から検出されている。感染は無症状の場合から全身性疾患を引き起こす場合ま
であるが、ヒトアストロウイルスは高齢者や免疫不全患者における下痢や胃腸症状との関連が最も
多く、幼児における胃腸炎の原因としてはロタウイルスに次いで2番目に多い。
アストロウイルスは臨床的にも農業的にも重要で公衆衛生上の懸念の可能性があるにもかかわら
ず、最も研究されていない腸管系RNAウイルスである。本研究ではポーランドの野生動物、ペット動
物(イヌ、ネコ)、家畜(ブタ)における感染を調査した。野生動物、ペット動物166匹から腸試料を採取
し、脾臓、リンパ節、腎臓をプールした組織試料を野生動物352匹、ペット動物(ネコ、イヌ)31匹、ブタ
52頭から得た。腸試料、組織試料ホモジネート中のアストロウイルスRNA検出、サンガー配列決定、
RdRp遺伝子のヌクレオチド配列に基づく系統発生解析が行われた。
アストロウイルスRNAは、腸試料ではアカギツネ(n=9、陽性率13.6%)、ラット(n=2、22.2%)、ネコ
(n=1、3.6%)から検出され、組織試料ではブタ(n=8、15.4%)、イノシシ(n=2、2.8%)、アカギツネ
(n=6、4.4%)、ラット(n=3、33.3%)から検出された。本研究のアストロウイルスと参照株のヌクレオチ
ド配列の同一性の割合はブタ、アカギツネ、ラット株で75.9~93.6%の範囲であった。これはアストロ
ウイルスのようなRNAウイルスの進化の歴史は宿主の進化の歴史に従うという一般的な記述を確認
し、種間伝播事象がよくあることではなく例外的であることを示している。しかし種間伝播事象は複数
回立証されているので、除外することはできない。
本研究ではポーランドの野生動物、ペット動物、ブタ集団からアストロウイルスが初めて検出された
ことを報告し、アストロウイルスが野外の動物で頻繁に循環する病原体であることを確認した。
6 ウイルス感染
Viruses. 16(2024)80
7 ウイルス感染
2024年1月27日、中国のNational Health Commissionは、ヒトのインフルエンザA(H10N5)ウイルスと
季節性インフルエンザA(H3N2)の同時感染の確定例1例を世界保健機関(WHO)に通知した。世界
でヒトの鳥インフルエンザA(H10N5)感染が報告されたのは、この症例が初めてである。
本症例は、2023年11月30日に咳嗽などの症状を呈したAnhui Province、Xuancheng Prefecture出身
の60歳超の女性の農業従事者において発生した。女性は2023年12月16日に死亡した。
WHO ホームページ.
Zhejiang Provinceの保健当局は、地元の医療施設が実施した核酸検査、ウイルス培養、遺伝子
https://www.who.int/e シークエンシングを受け、2024年1月22日に患者のサンプルから季節性インフルエンザA(H3N2)サ
mergencies/disease- ブタイプと鳥インフルエンザA(H10N5)サブタイプウイルスを分離した。
outbreakこの患者は、2023年11月26日にアヒル1羽を購入する際に、生きた家禽に接触していた。冷蔵庫に
news/item/2024保管されていたアヒルの肉からの7つのサンプルがH10N5の検査に陽性を示し、2つのサンプルがN5
DON504
に陽性を示した(赤血球凝集素の結果は無し)。この患者にはブタやその他の哺乳類との接触歴は
無かったことなどについて記載。
当局による調査と検査では、ヒトの感染が疑われる新たな感染者は検出されていない。現在入手可
能な疫学情報は、鳥インフルエンザA(H10Nx)ウイルスがヒトの間で持続的に感染する能力を獲得し
ていないことを示唆している。したがって、ヒトからヒトへの感染の可能性は低いと考えられる。(2024
年2月13日付け)
8 エボラ出血熱
エボラウイルス属6種のうち4種は、ヒトの致死的疾患を引き起こし得る人獣共通感染症病原体であ
る。そのうちの1種であるブンディブギョウイルス(BDBV)は、2007年にウガンダ西部の致死的出血性
疾患アウトブレイクで発見された。BDBVヒト症例はこれまでに211例確認され、致死率は33.6%であ
る。コウモリはエボラウイルスの保有宿主である可能性が常に示唆されているが、ほぼすべてのア
ウトブレイクで初発症例の感染源は不明である。ブタは非病原性のレストンエボラウイルスに自然感
染し、実験ではヒト病原性であるエボラウイルスに感染しやすいことが示されている。他のエボラウイ
ルス属に対するブタの感受性や、公衆衛生リスクにおける役割等は不明である。これらの理由から、
家畜のブタのBDBVに対する感受性を明らかにすることを目的とした研究を実施した。
研究はカナダの関係機関が提示する方針に従い、封じ込めレベル4施設で実施された。6週齢ブタ計
14頭を研究に用いた。2つのコホートで1頭ずつ、対照として感染前にサンプリングと剖検を行った。
コホート1の6頭、コホート2の5頭の遠位咽頭にカテーテルを用いてBDBV接種材料を配置して感染さ
Transbound Emerg Dis. せ、コホート2の1頭は培地を偽接種し伝播対照個体とした。ブタは安楽死(コホート1は感染後4、6、8
2024(2024)5350769
日目、コホート2は10、21、28日目にそれぞれ2頭ずつ安楽死)まで直腸・口腔・鼻腔スワブ試料、鼻
腔洗浄液試料、血液試料の採取、直腸温度測定、室内に吊るしたロープによるコホートごとの唾液
試料採取が行われた。L遺伝子を標的とする各試料のrRT-PCRで、血液以外の全ての試料から
BDBV RNAが検出された。体温上昇を呈した2頭以外に臨床症状は認められず、剖検では肺とリン
パ節に肉眼的病変が認められた。剖検で採取された多様な呼吸器試料、リンパ節試料で感染性ウ
イルスが分離された。脾臓、嗅球、大脳からの低レベルのウイルス検出もそれぞれ1頭ずつで認めら
れた。
本研究は、家畜のブタがBDBVに感受性であることを示す最初の実験的感染研究である。結果は、
粘膜曝露後の無症状のブタにおいて増殖性感染の発生、組織播種、感染性ウイルス排出が起こり
得ること、上気道と下気道にウイルス量が多く呼吸器粘膜が重要であることを示した。エボラウイル
スの中間宿主・増幅宿主としてのブタの役割は、ヒトの公衆衛生と食料安全保障の両方にとって懸
念事項である。
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