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資料2-9-2 一般社団法人日本医学会連合 健康医療分野におけるビッグデータに関する委員会 御提出資料 (15 ページ)

公開元URL https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2409_04medical/241125/medical03_agenda.html
出典情報 規制改革推進会議 健康・医療・介護ワーキング・グループ(第3回 11/25)《内閣府》
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討し定めてきた。このような診療領域毎に標準のデータ項目が各臨床学会によって定まれば、電子
カルテにあらかじめデータ項目セットを設定し構造化データとして適切なタイミングで入力を行うこと
により、診療の中でガイドラインに関連する入力がされた場合には、電子カルテから医療従事者への
能動的なガイドライン支援などのアドバイスを出すことが容易となる。また、多臨床領域に対応する電
子カルテと一定の臨床領域に特化した PHR の連携が効果的に行われる可能性が高くなる。このよう
に、臨床的な標準データ項目セットの策定は、1 次利用の診療支援や患者支援に直接繋がり、2 次
利用の際にも加工作業が軽減され精度も向上する。つまり、電子カルテのデータや医療サービスの
質を向上するための有効な手段として、各臨床学会が各診療領域の主要な疾患やユースケースに
対し、データ項目セットを策定しその運用方法を定めるべきである。日本医学会連合は、上記の医
療分野を代表する専門臨床学会を分科会に持つため推進・支援をすることが可能である。
医療従事者の働き方改革が進みつつある中、医療従事者に負担が少ない形で適切に運用がで
きる ICT 環境やユーザインタフェイスの整備もまた必要である。デジタルネイティブとも呼ばれる Z 世
代は、現在、既に後期研修医、同世代の看護師などをカバーするに至っている。今後の主たる電子
カルテユーザであるこの世代の意見を電子カルテや PHR、それらのユーザインタフェイス、機能の開
発に最大限採用すべきであろう。それを怠り、現状の環境で今以上にデータの質を改善しようとすれ
ば、それだけ利用者である医療従事者の負担が増える可能性が高い。以上より、医療従事者の働き
方改革に順行する ICT 環境、ユーザインタフェイスの整備を提言する。
3) 健康・医療分野の個別法としての「健康・医療情報活用法」の制定
日本では、2005 年に個人情報保護法が全面施行されたが、医療分野における運用の特殊性によ
る課題、例えば、当時の法制度を健康・医療分野のデータで運用すると、データ活用よりもデータ保
護へ偏っていることや個人情報を取得する主体により制度が異なること、個人情報の定義が曖昧で
匿名化を明確に定義することが困難であること、実効性のある悪用防止ができないこと、海外の法制
度と異なり十分な保護制度があると認められないことなどが挙げられ、医療分野の個別法の必要性
も論じられてきた 62。その後、2015 年、2020 年、2021 年に個人情報保護制度(ガイドラインなどを含
む)の改正が行われ、また 2 次利用を目的とした次世代医療基盤法が 2017 年に制定され指摘され
るような課題には一定の改善がみられた。しかし、臨床研究領域においても、国民 ID や同意取得等
の倫理的考え方や法制度に様々な制限が存在する中での研究実施を余儀なくされ、研究の量や質
が伸び悩み、成果が蓄積せず、人材育成も進まないという悪循環に陥っている。また、遺伝情報や
バイオバンクの活用の検討は進んでいない。国際的な DX 競争の中で海外のヘルスケア先進国とは
ますます差が開くばかりか沈下する可能性が高い。以上より、全面的に健康医療データの運用を網
羅し、将来的に遺伝情報やバイオバンク、画像情報の取扱い等の運用も念頭においた健康医療分
野個別法の制定を提言する。
また、第 2 章で述べたとおり、行政の調査が生み出す公的データベースの多くは学術研究目的の
利用が可能であるが、実際には制約が大きく研究利用が進みづらい運用がある。例えば、データ解
析を行う場所(オンサイトセンターやリモートアクセス)等に関する制約が各根拠法やガイドラインの差
異により事業によって異なること(例えば、全国がん登録・NDB)が挙げられる。加えて、データの匿
名加工化により解析精度が落ちることにより希少疾患等の研究推進が阻まれること(例えば、全国が
ん登録・NDB・MID-NET🄬🄬) 等が挙げられる。データ利活用が適切かつ円滑に促進されるための合
理的な各根拠法やガイドライン等の改正も併せて必要と考える。
さらに、公的なデータベース活用では、データ提供者(国民)のみならずデータ利活用者(アカデ
ミア・企業・政府等)に対してもデータ利活用の信頼を得ることや透明性を確保することも必要である。
認定された機関がデータの利用に際しての審査や国民へのデータの利用通知等も検討し、審査か
ら論文化、提供されたデータの削除に至るまでのトレーサビリティを管理し、当該の研究に必要とな
る各種データを連結し、品質を満たした過剰ではないデータセットを提供するなど、例えば EHDS の
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山本隆一. 医療 DX 進展するデジタル医療に関する最新動向と関連知識 Vol.14 診療情報の利活用と個人情報保護法. 医学のあ
ゆみ. 2023, Vol.285, No.2:159-64.

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