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資料2-9-2 一般社団法人日本医学会連合 健康医療分野におけるビッグデータに関する委員会 御提出資料 (17 ページ)
出典
公開元URL | https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2409_04medical/241125/medical03_agenda.html |
出典情報 | 規制改革推進会議 健康・医療・介護ワーキング・グループ(第3回 11/25)《内閣府》 |
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・個人の同意に拠らない、倫理に関する新たなガバナンスモデルの構築
日本では、「同意の取得」が要配慮個人情報である健康・医療データの取扱いの前提・起点となっ
ているが、患者・市民と医療従事者との間の情報の非対称性に関する議論は不充分である。医療の
専門化が進む中で、説明の語彙から内容に至るまで患者・市民には容易に理解しづらい内容が増
えているが、それでも 2 次利用を推進するためには伝える努力をし、理解を得たうえで同意を求めな
ければならない。また、同意さえ取っておけば問題ないという風潮も問題である。つまり、現在の手法
以外のアプローチにより補完することも検討するべき時期に来ている。例えば、「APPA(Authorized
Public Purpose Access) 65」という手法は同意がない場合でもあらかじめ公益のために利用できる個人
情報の定義と適用範囲を設定しておくものである。さらには、情報利用のリスクベネフィットの理解が
困難な場合には、患者・市民に代わり個人情報の取扱いに許可を与える専門機関等の整備も必要
と考える。以上より、個人の同意に拠らない、倫理に関する新たなガバナンスモデルを構築すること
を提言する。
・ELSI 研究の推進と情報モラル教育の推進
2023 年前半から世界を席巻した ChatGPT の驚くべき性能は医療従事者や研究者の想像力・創
造力の向上を支援し業務負担を軽減することは可能であろう。既に、世界中で学術研究や教育現場
での生成 AI の利用に関する是非の議論が生じている。また、精密医療においても、今後個別化医
療の進展の中で個人の遺伝情報や習慣、行動情報を用いるために、ELSI(Ethical, Legal and Social
Issues)研究が重要である。
歴史的に、人はイノベーションを目の当たりにすると潜在的な恐れを抱き、時には反発も起こすが、
結果的に冷静にその機能や影響を見つめ、一定の規制等を用いながら有効に社会実装を進めてき
た。しかしながら、現在のように益々多様化する社会において、サービスや情報が高度化・多様化し
複雑に相互関連する中で、そのような判断を個人はもちろん一定の領域で進めることも難しくなりつ
つある。情報量が爆発的に増加する一方、人口減少や働き方改革にも対応しなければならない現
状において、AI を医療・医学領域でどう活用すべきか、活用成果をどのように評価すべきか等を真
摯に考える必要がある。また、AI を倫理に反せず活用するための情報モラル教育(公平性や透明性、
個人情報の保護等)も早急に必要と考える。以上より、ELSI 研究および情報モラル教育を推進する
ことを提言する。
4) データ利活用促進のための人材育成
健康・医療分野のビッグデータは、日本が抱える多様な領域の様々な社会課題解決や発展にも
活用されるであろう。例えば、社会保障政策や創薬、医療機器開発、健康・医療ビジネス開発等の
他に、飲食業やスポーツ産業、観光業、農業、芸術等活用し得る分野は多岐にわたる。データ活用
を社会にとって適正に進めるには、まずは、生物統計学や疫学、機械学習、AI 開発等の知識や技
術を有するデータサイエンティストが必要である。残念ながら、このような人材やその育成システムは
日本には不足しており、その育成は喫緊の課題である。近年、大学のデータサイエンス学部等の設
置も増えており大学院プログラムも活発に育成活動を行っているが、公的補助金の利用によるもの
が多くプログラムの継続性などの課題があり、さらなる強化が望まれる。
また、上記のデータサイエンティストは動的に発展する健康・医療情報領域の現場のシステムや
運用に必ずしも精通しているわけではないため、データサイエンティストへデータを提供する予防医
療や臨床、医療 ICT 等の実務に関する専門性を持つ人材の育成もまた必要である。健康・医療領
域の現場のデータフローを熟知し、システムや業務(データ発生源・収集・保存・管理等)に携わり、
あるいはデータの品質管理を行う人材の支援がデータサイエンスには不可欠である。このような人材
は、研究デザインを理解し、研究デザインに合致した質の高いデータを抽出し提供できなければな
65
APPA – Authorized Public Purpose Access: Building Trust into Data Flows for Well-being and Innovation. WORLD ECONOMIC
FORUM, 2020.1.17. [https://www.weforum.org/publications/appa-authorized-public-purpose-access-building-trust-into-dataflows-for-well-being-and-innovation/(cited 2023.10.27)]
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日本では、「同意の取得」が要配慮個人情報である健康・医療データの取扱いの前提・起点となっ
ているが、患者・市民と医療従事者との間の情報の非対称性に関する議論は不充分である。医療の
専門化が進む中で、説明の語彙から内容に至るまで患者・市民には容易に理解しづらい内容が増
えているが、それでも 2 次利用を推進するためには伝える努力をし、理解を得たうえで同意を求めな
ければならない。また、同意さえ取っておけば問題ないという風潮も問題である。つまり、現在の手法
以外のアプローチにより補完することも検討するべき時期に来ている。例えば、「APPA(Authorized
Public Purpose Access) 65」という手法は同意がない場合でもあらかじめ公益のために利用できる個人
情報の定義と適用範囲を設定しておくものである。さらには、情報利用のリスクベネフィットの理解が
困難な場合には、患者・市民に代わり個人情報の取扱いに許可を与える専門機関等の整備も必要
と考える。以上より、個人の同意に拠らない、倫理に関する新たなガバナンスモデルを構築すること
を提言する。
・ELSI 研究の推進と情報モラル教育の推進
2023 年前半から世界を席巻した ChatGPT の驚くべき性能は医療従事者や研究者の想像力・創
造力の向上を支援し業務負担を軽減することは可能であろう。既に、世界中で学術研究や教育現場
での生成 AI の利用に関する是非の議論が生じている。また、精密医療においても、今後個別化医
療の進展の中で個人の遺伝情報や習慣、行動情報を用いるために、ELSI(Ethical, Legal and Social
Issues)研究が重要である。
歴史的に、人はイノベーションを目の当たりにすると潜在的な恐れを抱き、時には反発も起こすが、
結果的に冷静にその機能や影響を見つめ、一定の規制等を用いながら有効に社会実装を進めてき
た。しかしながら、現在のように益々多様化する社会において、サービスや情報が高度化・多様化し
複雑に相互関連する中で、そのような判断を個人はもちろん一定の領域で進めることも難しくなりつ
つある。情報量が爆発的に増加する一方、人口減少や働き方改革にも対応しなければならない現
状において、AI を医療・医学領域でどう活用すべきか、活用成果をどのように評価すべきか等を真
摯に考える必要がある。また、AI を倫理に反せず活用するための情報モラル教育(公平性や透明性、
個人情報の保護等)も早急に必要と考える。以上より、ELSI 研究および情報モラル教育を推進する
ことを提言する。
4) データ利活用促進のための人材育成
健康・医療分野のビッグデータは、日本が抱える多様な領域の様々な社会課題解決や発展にも
活用されるであろう。例えば、社会保障政策や創薬、医療機器開発、健康・医療ビジネス開発等の
他に、飲食業やスポーツ産業、観光業、農業、芸術等活用し得る分野は多岐にわたる。データ活用
を社会にとって適正に進めるには、まずは、生物統計学や疫学、機械学習、AI 開発等の知識や技
術を有するデータサイエンティストが必要である。残念ながら、このような人材やその育成システムは
日本には不足しており、その育成は喫緊の課題である。近年、大学のデータサイエンス学部等の設
置も増えており大学院プログラムも活発に育成活動を行っているが、公的補助金の利用によるもの
が多くプログラムの継続性などの課題があり、さらなる強化が望まれる。
また、上記のデータサイエンティストは動的に発展する健康・医療情報領域の現場のシステムや
運用に必ずしも精通しているわけではないため、データサイエンティストへデータを提供する予防医
療や臨床、医療 ICT 等の実務に関する専門性を持つ人材の育成もまた必要である。健康・医療領
域の現場のデータフローを熟知し、システムや業務(データ発生源・収集・保存・管理等)に携わり、
あるいはデータの品質管理を行う人材の支援がデータサイエンスには不可欠である。このような人材
は、研究デザインを理解し、研究デザインに合致した質の高いデータを抽出し提供できなければな
65
APPA – Authorized Public Purpose Access: Building Trust into Data Flows for Well-being and Innovation. WORLD ECONOMIC
FORUM, 2020.1.17. [https://www.weforum.org/publications/appa-authorized-public-purpose-access-building-trust-into-dataflows-for-well-being-and-innovation/(cited 2023.10.27)]
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