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(資料3)参考資料 (60 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25241.html |
出典情報 | 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会(第9回 3/16)《厚生労働省》 |
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身体的拘束に関する裁判所の決定(令和3年10月最高裁決定)
事案の概要
○
医療保護入院中の患者が亡くなったのは、違法に身体的拘束を開始・継続した等の過失によるものであるとして、患者の
相続人が病院側を相手に損害賠償請求を提起
→ ・1審(金沢地裁判決令和2年1月31日判時2455号41頁)は、病院側勝訴
・患者側が控訴した控訴審(名古屋高裁金沢支部判決令和2年12月16日判時2504号95頁)は、患者側勝訴
⇒ 病院側は上告受理申立を行ったが、最高裁は不受理決定(最高裁決定令和3年10月19日)。
これにより、患者側勝訴の控訴審判決が確定
裁判所(控訴審)の判断の要旨(身体的拘束の非代替性に関する部分)
○
精神科病院に入院中の者に対する身体的拘束については、精神保健福祉法及び告示第130号で必要な基準が定められてい
るところ、その内容は合理的なものであるといえるから、本件身体的拘束の違法性の有無を判断するに当たっては、告示第
130号で定める基準の内容をも参考にして判断するのが相当である。
○ 告示第130号の「身体的拘束以外によい代替方法がない場合」(第4の2本文)に当たるかについて検討するに、
・ 特に注射に対する亡Eの抵抗は激しく、12月13日には看護師5名で押さえ付けて注射した際に看護師に対して頭突
きを加え、退室しようとする看護師に殴りかかろうとするなどの暴力行為があり、このことからすると、看護師の安全を
確保しつつ亡Eに対する注射その他の必要な医療行為を行う必要があるところ、
・ F医師ほか看護師8名で対応した12月14日の診察の際には亡Eに興奮、抵抗は見られず、大人数で対応すると入院
患者が不穏にならず力ずくで制止しないでよいことが経験的にあるというのであれば、一時的に人員を割くことによって
必要な医療行為等を実施することができるものといえ、「身体的拘束以外によい代替方法がない場合」に当たるとみるこ
とは困難である。
○ これに対し、被控訴人は、12月14日のように看護師8名での対応と同様な対応を常に継続することは人員的に極め
て困難である旨主張しており、必要な場面において十分な人員を確保できない場合が生じることも想定される。しかしなが
ら、亡Eに対して必要な医療行為等を行うといった限定的な場面において、被控訴人病院には、その都度、相当数の看護師
を確保しなければならないことによる諸々の負担等が生じるとしても、身体的拘束は入院患者にとっては重大な人権の制限
となるものであるから、告示第130号の趣旨に照らすと、患者の生命や身体の安全を図るための必要不可欠な医療行為等
を実施するのに十分な人員を確保することができないような限定的な場面においてのみ身体的拘束をすることが許されるも
のと解され、必要な診察を問題なくすることができた12月14日午後1時45分の時点では「身体的拘束以外によい代替
方法がない場合」には当たらなかったものというべきである。
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事案の概要
○
医療保護入院中の患者が亡くなったのは、違法に身体的拘束を開始・継続した等の過失によるものであるとして、患者の
相続人が病院側を相手に損害賠償請求を提起
→ ・1審(金沢地裁判決令和2年1月31日判時2455号41頁)は、病院側勝訴
・患者側が控訴した控訴審(名古屋高裁金沢支部判決令和2年12月16日判時2504号95頁)は、患者側勝訴
⇒ 病院側は上告受理申立を行ったが、最高裁は不受理決定(最高裁決定令和3年10月19日)。
これにより、患者側勝訴の控訴審判決が確定
裁判所(控訴審)の判断の要旨(身体的拘束の非代替性に関する部分)
○
精神科病院に入院中の者に対する身体的拘束については、精神保健福祉法及び告示第130号で必要な基準が定められてい
るところ、その内容は合理的なものであるといえるから、本件身体的拘束の違法性の有無を判断するに当たっては、告示第
130号で定める基準の内容をも参考にして判断するのが相当である。
○ 告示第130号の「身体的拘束以外によい代替方法がない場合」(第4の2本文)に当たるかについて検討するに、
・ 特に注射に対する亡Eの抵抗は激しく、12月13日には看護師5名で押さえ付けて注射した際に看護師に対して頭突
きを加え、退室しようとする看護師に殴りかかろうとするなどの暴力行為があり、このことからすると、看護師の安全を
確保しつつ亡Eに対する注射その他の必要な医療行為を行う必要があるところ、
・ F医師ほか看護師8名で対応した12月14日の診察の際には亡Eに興奮、抵抗は見られず、大人数で対応すると入院
患者が不穏にならず力ずくで制止しないでよいことが経験的にあるというのであれば、一時的に人員を割くことによって
必要な医療行為等を実施することができるものといえ、「身体的拘束以外によい代替方法がない場合」に当たるとみるこ
とは困難である。
○ これに対し、被控訴人は、12月14日のように看護師8名での対応と同様な対応を常に継続することは人員的に極め
て困難である旨主張しており、必要な場面において十分な人員を確保できない場合が生じることも想定される。しかしなが
ら、亡Eに対して必要な医療行為等を行うといった限定的な場面において、被控訴人病院には、その都度、相当数の看護師
を確保しなければならないことによる諸々の負担等が生じるとしても、身体的拘束は入院患者にとっては重大な人権の制限
となるものであるから、告示第130号の趣旨に照らすと、患者の生命や身体の安全を図るための必要不可欠な医療行為等
を実施するのに十分な人員を確保することができないような限定的な場面においてのみ身体的拘束をすることが許されるも
のと解され、必要な診察を問題なくすることができた12月14日午後1時45分の時点では「身体的拘束以外によい代替
方法がない場合」には当たらなかったものというべきである。
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