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資料2-11 医薬品の投与に関連する避妊の必要性等に関するガイダンスについて (5 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31510.html |
出典情報 | 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会医薬品等安全対策部会(令和4年度第4回 3/2)《厚生労働省》 |
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バイオ医薬品及び低分子医薬品を結合した薬物複合体については、両方の特性を踏まえて電子添
文の記載事項を検討することが適切である。例えば、遺伝毒性物質を結合した抗体薬物複合体につ
いては、催奇形性、胚・胎児死亡が予想されるため、避妊に関する記載を科学的な根拠とともに電
子添文に記載する必要がある。
本ガイダンスで用いる「避妊期間」という用語は、遺伝毒性のある医薬品に曝露された配偶子が
受精して妊娠すること自体を避けるための避妊が推奨される期間と性行為によって精液移行した医
薬品が腟粘膜等に接触するのを防ぐためのバリア法による避妊が推奨される期間とを意味する。な
お、避妊が推奨される期間に妊娠が確認された女性及びその男性パートナーに対しては、不必要な
妊娠の中断を避けるために、妊娠継続の判断にあたって、リスクに関するコミュニケーション及び
カウンセリングが必須である。また、遺伝毒性又は発生毒性を誘発する医薬品については、妊婦又
は妊娠を希望する女性、及びその男性パートナーに対するリスクに関するコミュニケーション及び
カウンセリングによって、疾患の重篤性、患者の状況、患者及びパートナーの価値観等を勘案し、
当該医薬品の使用可否について慎重に検討されることが必要である。
4.1 遺伝毒性のある医薬品
4.1.1 男性患者に関する避妊
アルキル化剤等、遺伝毒性のある抗悪性腫瘍剤の精子形成への影響を検討した多くの試験によっ
て、分裂中の細胞が遺伝毒性の影響を受けやすいことが示されている(Arnon et al. 2001)。した
がって、遺伝毒性のある医薬品を使用している男性患者のDNA損傷が生じた精子が受精した場合、
胚・胎児に影響が認められる可能性がある。このため、最終投与日からの血中の消失期間(半減期
の5倍の期間。実データがあれば、医薬品が体内から消失する時間の実データの期間に置き換えても
よい。以下、同様。)に、さらに3か月を加えた期間の避妊(表1を参照)により、遺伝毒性のある
医薬品による胚・胎児への毒性のリスクは最小限に抑えられると考えられる。この3か月間には、
精子形成期間と未射出精子の滞留期間が含まれる(Meistrich. 2009)。最終投与日から上記期間
経過後であれば、形成される精子は遺伝毒性のある医薬品に曝露されず、相対的に胚・胎児への影
響は低くなると考えられることから、上記を超える期間については、避妊を必須としなくてもよい
と考えられる。
遺伝毒性のある医薬品を使用している男性患者の女性パートナーでは、精液移行した医薬品が腟
粘膜等から吸収され、原始卵胞から排卵に至る発育途上の卵胞、胚及び胎児への曝露により遺伝毒
性リスクが想定される。そのため、遺伝毒性のある医薬品を使用している男性患者は、女性パート
ナーが避妊をしていても、バリア法によって精液と腟粘膜等の接触を回避する必要がある。精液移
行した遺伝毒性のある医薬品が腟粘膜等に接触したと想定される場合の女性パートナーの避妊期間
は、遺伝毒性のある医薬品を使用する女性患者と同じである(「4.1.2 女性患者に関する避
妊」の項を参照とする)。
なお、遺伝毒性の機序が染色体異数性誘発性(aneugenicity)のみと考えられる医薬品は、遺伝
毒性がなく発生毒性のみを有する医薬品と同じ対応を行う(4.2.1を参照)。
4.1.2 女性患者に関する避妊
遺伝毒性のある医薬品により胚・胎児が直接影響を受けるか、卵子のDNA損傷が生じる可能性が
ある。顆粒膜細胞や卵子のDNAが傷害を受けた卵胞の多くは、アポトーシスによる卵胞閉鎖によっ
て喪失すると考えられている(Winship et al. 2018)。一方、精子とは異なり、卵子は胎児期から
第1減数分裂前期の途中で細胞周期が停止しており、排卵まで分裂・増殖しない。また、卵子のDNA
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文の記載事項を検討することが適切である。例えば、遺伝毒性物質を結合した抗体薬物複合体につ
いては、催奇形性、胚・胎児死亡が予想されるため、避妊に関する記載を科学的な根拠とともに電
子添文に記載する必要がある。
本ガイダンスで用いる「避妊期間」という用語は、遺伝毒性のある医薬品に曝露された配偶子が
受精して妊娠すること自体を避けるための避妊が推奨される期間と性行為によって精液移行した医
薬品が腟粘膜等に接触するのを防ぐためのバリア法による避妊が推奨される期間とを意味する。な
お、避妊が推奨される期間に妊娠が確認された女性及びその男性パートナーに対しては、不必要な
妊娠の中断を避けるために、妊娠継続の判断にあたって、リスクに関するコミュニケーション及び
カウンセリングが必須である。また、遺伝毒性又は発生毒性を誘発する医薬品については、妊婦又
は妊娠を希望する女性、及びその男性パートナーに対するリスクに関するコミュニケーション及び
カウンセリングによって、疾患の重篤性、患者の状況、患者及びパートナーの価値観等を勘案し、
当該医薬品の使用可否について慎重に検討されることが必要である。
4.1 遺伝毒性のある医薬品
4.1.1 男性患者に関する避妊
アルキル化剤等、遺伝毒性のある抗悪性腫瘍剤の精子形成への影響を検討した多くの試験によっ
て、分裂中の細胞が遺伝毒性の影響を受けやすいことが示されている(Arnon et al. 2001)。した
がって、遺伝毒性のある医薬品を使用している男性患者のDNA損傷が生じた精子が受精した場合、
胚・胎児に影響が認められる可能性がある。このため、最終投与日からの血中の消失期間(半減期
の5倍の期間。実データがあれば、医薬品が体内から消失する時間の実データの期間に置き換えても
よい。以下、同様。)に、さらに3か月を加えた期間の避妊(表1を参照)により、遺伝毒性のある
医薬品による胚・胎児への毒性のリスクは最小限に抑えられると考えられる。この3か月間には、
精子形成期間と未射出精子の滞留期間が含まれる(Meistrich. 2009)。最終投与日から上記期間
経過後であれば、形成される精子は遺伝毒性のある医薬品に曝露されず、相対的に胚・胎児への影
響は低くなると考えられることから、上記を超える期間については、避妊を必須としなくてもよい
と考えられる。
遺伝毒性のある医薬品を使用している男性患者の女性パートナーでは、精液移行した医薬品が腟
粘膜等から吸収され、原始卵胞から排卵に至る発育途上の卵胞、胚及び胎児への曝露により遺伝毒
性リスクが想定される。そのため、遺伝毒性のある医薬品を使用している男性患者は、女性パート
ナーが避妊をしていても、バリア法によって精液と腟粘膜等の接触を回避する必要がある。精液移
行した遺伝毒性のある医薬品が腟粘膜等に接触したと想定される場合の女性パートナーの避妊期間
は、遺伝毒性のある医薬品を使用する女性患者と同じである(「4.1.2 女性患者に関する避
妊」の項を参照とする)。
なお、遺伝毒性の機序が染色体異数性誘発性(aneugenicity)のみと考えられる医薬品は、遺伝
毒性がなく発生毒性のみを有する医薬品と同じ対応を行う(4.2.1を参照)。
4.1.2 女性患者に関する避妊
遺伝毒性のある医薬品により胚・胎児が直接影響を受けるか、卵子のDNA損傷が生じる可能性が
ある。顆粒膜細胞や卵子のDNAが傷害を受けた卵胞の多くは、アポトーシスによる卵胞閉鎖によっ
て喪失すると考えられている(Winship et al. 2018)。一方、精子とは異なり、卵子は胎児期から
第1減数分裂前期の途中で細胞周期が停止しており、排卵まで分裂・増殖しない。また、卵子のDNA
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