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院内がん登録2012年10年生存率報告書 (3 ページ)
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公開元URL | https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/pdf/hosp_c_reg_surv_10_2012.pdf |
出典情報 | 院内がん登録2012年10年生存率報告書(2/13)《国立がん研究センター》 |
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生存率について
がん医療を評価する重要な一つの指標として、生存
率がある。伝統的に、診断後あるいは治療後 5 年経過
した時の生存率が治癒の目安とされており、がん(部位)
によっては 10 年生存率が治癒の目安とされることもある。
この報告書では、がん診療連携拠点病院 2012 年全国
集計の結果を踏まえて、2012 年に診断された例の 10 年
生存率を集計した。
信頼性の高い生存率を算定するためには、患者の生
存確認を行うことが重要であるため、自施設への来院情
報だけにたよらずに、患者の生存状況を把握する生存
確認調査(いわゆる予後調査)が必須となる。この生存
状況の把握が不十分な場合には真の値よりも高い生存
率となることが知られている。また、生存率は生存状況
把握割合以外にも生存率を算出した対象集団の基礎
疾患の頻度や年齢分布などの偏りなどによっても大きな
影響が出る。このように生存率の結果の解釈には様々
な要因が影響することに留意する必要がある。
一方で、がんによる生存への影響を把握したいときに
は、「疾病特異的生存率」、「相対生存率」、「ネット・サ
バイバル(Net Surival)」が用いられる。「疾病特異的生
存率」は、実測生存率で計算される対象にはがん以外
の死因による死亡も死亡の中に含まれるため、がん以
外の死因による死亡を、「打ち切り」として計算している。
この疾病特異的生存率を正確に推定するためには、が
んが死因でないかどうかが判定できなければならず、そ
のために原死因を用いて判定するか、それ以外の死因
も含めて判定するかで結果が変わってくる。現在の日本
の現状において、この死因の把握はかなり困難である。
これに対し「相対生存率」は、実測生存率を対象と同
じ性・年齢、診断年(歴年)の一般の日本人集団で「が
んではなかった場合の生存率」という考えによる期待生
存率を算出し、それを実際の生存率で割って算出する
方法である。疾患特異的生存率のように個々の死因を
把握する必要がないため、国際的によく用いられている。
この期待生存率の算出方法の違いから、EdererⅠ法、
EdererⅡ法、Hakulinen 法などがこれまでに開発されて
きてきた。
1)生存状況把握割合の意味
生存率の算出において、先行研究における試算では、
生存状況把握割合によって院内のデータのみを使って
計算した場合、5 年相対生存率が真の値よりも 10~15%
高く推定されてしまうことがあるとの報告がある。そのた
め、わが国で先行して施設別生存率の公表をしてきた
全国がんセンター協議会の集計方法 1)を踏まえて、生
存状況把握割合が 90%以上であることを基準として、こ
の基準を全がんにおいて達成した施設のデータのみを
集計の対象とした。この生存状況把握割合は国際的に
は 95%以上が望ましいとされており、わが国の院内がん
登録でもより高い把握割合をめざすべきであると考えら
れる。
3)ネット・サバイバル(Net Survival)について
相対生存率は一般的な方法の 1 つではあるが、生存
率の高いがん種において理論上 100%以上になることが
生じるなど課題も多い。そこで、期待生存率を算出する
ことなく純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して
計算する純生存率(Net Survival、Pohar-Perme 法)が開
発された。この方法は国際的にも広く採用されている方
法であり、本報告書においても相対生存率に代わりネッ
ト・サバイバルを採用している。
2)生存率の種類
生存率には、その算出の仕方によって大きく「実測生
存率」、「疾病特異的生存率」、「相対生存率」、「ネット・
サバイバル(Net Survival)」に分けられる。
「実測生存率」は、死因に関係なく、全ての死亡を計
算に含めた生存率で、診断例に対する~年後の生存
患者の割合で示される。計算方法は複数存在するが、
Kaplan-Meier 法が頻用され、医療機関の公表する生存
率は Kaplan-Meier 法による実測生存率であることが多
い。本報告においても、実測生存率については
Kaplan-Meier 法を用いて計算している。
4)生存率をどう解釈するか
本集計による生存率は、既存の地域がん登録や全国
がんセンター協議会の集計結果に比べても、より広汎な
集計データといえるが、それでも拠点病院と一部の拠点
外病院に限ったデータであることに留意する必要がある。
なお、本報告書では、生存率に影響を与えることが想
定される情報で、かつ院内がん登録としてデータ収集さ
れている情報として、①性、②年齢、③病期(がんの進
行状況)、④観血的治療の有無(手術されたか、されな
かったか)などを参考資料として併記して示している。
1) 全国がんセンター協議会調査などでは、消息判明率と呼ばれてきたが、本報告書ではこの呼び方で表記す
る。
参考資料
がん登録実務者のためのマニュアル 生存率解析 味木和喜子
2001 年 9 月、大阪府立成人病センター調査部
がん専門施設における生存率計測の標準化 木下洋子他、
癌の臨床 第 46 巻第 10 号、2000 年 9 月、篠原出版新社
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がん医療を評価する重要な一つの指標として、生存
率がある。伝統的に、診断後あるいは治療後 5 年経過
した時の生存率が治癒の目安とされており、がん(部位)
によっては 10 年生存率が治癒の目安とされることもある。
この報告書では、がん診療連携拠点病院 2012 年全国
集計の結果を踏まえて、2012 年に診断された例の 10 年
生存率を集計した。
信頼性の高い生存率を算定するためには、患者の生
存確認を行うことが重要であるため、自施設への来院情
報だけにたよらずに、患者の生存状況を把握する生存
確認調査(いわゆる予後調査)が必須となる。この生存
状況の把握が不十分な場合には真の値よりも高い生存
率となることが知られている。また、生存率は生存状況
把握割合以外にも生存率を算出した対象集団の基礎
疾患の頻度や年齢分布などの偏りなどによっても大きな
影響が出る。このように生存率の結果の解釈には様々
な要因が影響することに留意する必要がある。
一方で、がんによる生存への影響を把握したいときに
は、「疾病特異的生存率」、「相対生存率」、「ネット・サ
バイバル(Net Surival)」が用いられる。「疾病特異的生
存率」は、実測生存率で計算される対象にはがん以外
の死因による死亡も死亡の中に含まれるため、がん以
外の死因による死亡を、「打ち切り」として計算している。
この疾病特異的生存率を正確に推定するためには、が
んが死因でないかどうかが判定できなければならず、そ
のために原死因を用いて判定するか、それ以外の死因
も含めて判定するかで結果が変わってくる。現在の日本
の現状において、この死因の把握はかなり困難である。
これに対し「相対生存率」は、実測生存率を対象と同
じ性・年齢、診断年(歴年)の一般の日本人集団で「が
んではなかった場合の生存率」という考えによる期待生
存率を算出し、それを実際の生存率で割って算出する
方法である。疾患特異的生存率のように個々の死因を
把握する必要がないため、国際的によく用いられている。
この期待生存率の算出方法の違いから、EdererⅠ法、
EdererⅡ法、Hakulinen 法などがこれまでに開発されて
きてきた。
1)生存状況把握割合の意味
生存率の算出において、先行研究における試算では、
生存状況把握割合によって院内のデータのみを使って
計算した場合、5 年相対生存率が真の値よりも 10~15%
高く推定されてしまうことがあるとの報告がある。そのた
め、わが国で先行して施設別生存率の公表をしてきた
全国がんセンター協議会の集計方法 1)を踏まえて、生
存状況把握割合が 90%以上であることを基準として、こ
の基準を全がんにおいて達成した施設のデータのみを
集計の対象とした。この生存状況把握割合は国際的に
は 95%以上が望ましいとされており、わが国の院内がん
登録でもより高い把握割合をめざすべきであると考えら
れる。
3)ネット・サバイバル(Net Survival)について
相対生存率は一般的な方法の 1 つではあるが、生存
率の高いがん種において理論上 100%以上になることが
生じるなど課題も多い。そこで、期待生存率を算出する
ことなく純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して
計算する純生存率(Net Survival、Pohar-Perme 法)が開
発された。この方法は国際的にも広く採用されている方
法であり、本報告書においても相対生存率に代わりネッ
ト・サバイバルを採用している。
2)生存率の種類
生存率には、その算出の仕方によって大きく「実測生
存率」、「疾病特異的生存率」、「相対生存率」、「ネット・
サバイバル(Net Survival)」に分けられる。
「実測生存率」は、死因に関係なく、全ての死亡を計
算に含めた生存率で、診断例に対する~年後の生存
患者の割合で示される。計算方法は複数存在するが、
Kaplan-Meier 法が頻用され、医療機関の公表する生存
率は Kaplan-Meier 法による実測生存率であることが多
い。本報告においても、実測生存率については
Kaplan-Meier 法を用いて計算している。
4)生存率をどう解釈するか
本集計による生存率は、既存の地域がん登録や全国
がんセンター協議会の集計結果に比べても、より広汎な
集計データといえるが、それでも拠点病院と一部の拠点
外病院に限ったデータであることに留意する必要がある。
なお、本報告書では、生存率に影響を与えることが想
定される情報で、かつ院内がん登録としてデータ収集さ
れている情報として、①性、②年齢、③病期(がんの進
行状況)、④観血的治療の有無(手術されたか、されな
かったか)などを参考資料として併記して示している。
1) 全国がんセンター協議会調査などでは、消息判明率と呼ばれてきたが、本報告書ではこの呼び方で表記す
る。
参考資料
がん登録実務者のためのマニュアル 生存率解析 味木和喜子
2001 年 9 月、大阪府立成人病センター調査部
がん専門施設における生存率計測の標準化 木下洋子他、
癌の臨床 第 46 巻第 10 号、2000 年 9 月、篠原出版新社
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