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参考資料4 がん検診Shared Decision Making(SDM)運用マニュアル2022年度版 (30 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34640.html
出典情報 がん検診のあり方に関する検討会(第39回 8/9)《厚生労働省》
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2)非合理な意思決定を行うことを防ぐ
ヘルスケアに関する意思決定はやや専門的であるため、情報を与えたとしても患者(受診者)が
合理的な意思決定をするかどうかが保証されないかもしれない。
合理的な意思決定から外れてしまうような思考のミスを行動経済学では認知バイアスという。認
知バイアスは、熟慮の上の意思決定ではなく、情報を簡単に判断しようとするときに生じることが多
い。こうした、簡便な情報処理のことをヒューリスティクスと呼ぶ。
(本当はそれほど確率が高くないのに)仲の良い知り合いが検診を受けなくてもがんになったこと
はないという理由でがん検診を受けなくなるというのは、利用可能性ヒューリスティクスによる認知バ
イアスである。
「知り合いの方が検診を受けなくてもがんにならなかったと言っても、あなたのがんのなりやすさ
やリスクとは本来関係ないことがらですので、別のこととして考えましょう」と言うように、ヒューリスティ
クスによりはまってしまう認知バイアスを防ぐことが出来る可能性がある。このように、経済学の観点
から見た SDM の第 2 の意義は、非合理的な意思決定を防ぐことである。ただ、ヒューリスティクス
による認知バイアスの可能性がほぼなくなった状態で、やはり受診しないという意思決定をした場
合は、やはり合理的な意思決定の結果として(経済学の観点からは)受け入れた方がよいと考える。
3)ヒューリスティクスや認知バイアスの危険性を逆に利用して受診を促す
ヒューリスティクスによるバイアスを逆に利用して、強制はせずによい行動を選択するように仕向
ける工夫をナッジという。
たとえば、「損失回避」を用いたメッセージがある。人間は同じ利得の大きさであって、「利得を得
る」というメッセージより、「利得を得るものを失う」と言う損失を強調したようなメッセージを送る方が、
インパクトつまり効用への影響が大きいという傾向がある。このように、経済学の観点からの SDM
の意義の 3 つめは、バイアスを逆に利用して受診を促すことである。
ただ、ナッジを用いた受診勧奨は、もともと心理的なバイアスが少なく合理的に判断している人
にとっては、自由な選択に介入する過度な勧奨かもしれない。ある程度合理的な患者(受診者)に
ついては、情報提供以上の施策を行って受診勧奨を行うのは、個人の自由な意思決定への介入
とのトレードオフを考慮する必要があるだろう。

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