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参考資料3 令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)「日本専門医機構における医師専門研修シーリングによる医師偏在対策の効果検証」総括研究報告書 (90 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41573.html
出典情報 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会(令和6年度第1回 7/19)《厚生労働省》
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【補足資料 4】海外調査報告
1.ドイツ
ドイツでは健康保険への加入が義務付け
られており、法定健康保険(SHI)制度、ある
いは民間健康保険(PHI)制度によって提供さ
れる。ドイツの医療制度のガバナンスは複雑
で分権的である点に特徴がある。連邦レベル
と州レベルに分かれ、さらに共同体的な自治
組織も存在する。連邦政府(連邦保健省など)
が全体的な法的枠組みを定める一方、州政府
は病院計画や公衆衛生サービスに責任を持
つ。しかし、SHI 制度では共同体的組織(連
邦共同委員会や連邦保険医協会など)に決定
権が委ねられている。連邦共同委員会
(Gemeinsamer Bundesausschuss:G-BA)には、
疾病金庫、病院、その他提供者の団体が集ま
り、詳細な規則を定めている。連邦共同委員
会は、SHI 制度における共同自治システム内
の最高意思決定機関である。外来医療、歯科
医療、病院医療に関するすべての決定は、連
邦共同委員会の本会議を通じて行われる。ま
た、新技術、医薬品、医療機器を包括給付費
用に含めるかどうかの決定、価格設定と償還
契約の交渉、医療水準 に関する定義も行う。
医療制度における公衆衛生、外来・入院、
長期療養の各セクターは、それぞれ異なる法
律の適用を受け、組織、財政、償還の面で分
離されている。このうち、基本的に、外来は
保険医が担い(保険医診療)、入院は病院が担
う(病院診療)制度となっており、財源等が
異なる。なお、保険医診療は、家庭医診療と
専門医診療とに区分される。
こうした医療制度の下、ドイツの医師免許
については連邦医師法(Bundesärzteordnung:
BÄO)第 3 条に規定されており、連邦政府が
所掌している。同法の第 3 条第 1 項第 4 号で
は、医師免許を取得するため の要件として、
最短 8 か月、最長 12 か月の病院などでの臨
床研修を含む、最低 5,500 時間、最短 6 年間
の大学医学教育の後、同法に定める医師試験
に合格することが必要となっている。大学医
学教育や医師試験等の詳細については、連邦
保健省の医師免許令(ÄApprO 2002)で規定さ
れている。
ドイツでは基本的に診療科を自由に標榜
することはできない。診療科や専門医、重点
診療域などの名称を標榜するためには、州医
師会が卒後教育として行う専門臨床研修を
修了し試験に合格することが求められる。こ
の専門臨床研修は 5~6 年間であり、わが国
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の初期臨床研修と専門研修のように分かれ
てはいない。また、専門医取得を考える医師
は、それぞれ希望する病院の診療科に応募す
ることができる。つまり、この段階で医師偏
在対策としての定員枠調整が行われている
わけではない。
専門研修病院の認定や専門医試験の実施、
資格の交付などは各州医師会が担っており、
連邦医師会では学会など各診療科専門団体
との協議等により標準プログラムをとりま
とめ各州医師会に提示するといった取組を
行っている。卒後研修を修了すると医師は医
籍登録を行い、保険医の許可申請を行うこと
ができる(社会法典第 5 編 95 条 2 項)。申請
を受け付けた許可委員会が申請者の開業希
望地について審査し許可を与える。この許可
委員会のメンバーは、州保険医協会、疾病金
庫州連合会及び代替金庫の代表者である。許
可を受けた医師は、当該地域の保険医協会の
会員となることが必要であり、保険医として
保険診療に従事することとなる。
病院の診療科や医師数は病院の裁量で決
定されるが、開業医に関しては需要計画制度
による制約がある。この需要計画は、連邦共
同委員会が定める基準に基づき、州保険医協
会が疾病金庫州連合会及び代替金庫(州委員
会)の同意を得て、策定するものである。需
要計画では、州内の市や郡等に応じた「計画
区域」が設定され、この計画区域と専門医の
診療科に応じて設けられている「医師グルー
プ(Arztgruppen)」ごとに医師と住民の人数の
比率が定められる。実際の比率が定められた
比率の 110%を上回る計画区域は過剰区域と
認定され保険医の許可が制限される。過剰認
定は、州委員会が行う。一方、過少区域とさ
れた計画区域については、保険医協会が当該
地域の開業医に経済的補償を行うなど優遇
措置を設けているが、それでも解消されない
場合は、州委員会が他地域の開業許可制限を
行うよう許可委員会に対し命じなければな
らないとされている。
このように、ドイツでは、医療提供体制の
確保は州政府が責任を負い、各州医師会が卒
後教育として専門研修を行っている。また、
専門研修の定員枠という形ではなく、保険医
として専門医が開業する際に、州保険医協会
と疾病金庫州連合会等が地域での需要計画
に基づき、地域内の需要に応じた供給量の確
保という観点から、医師偏在対策を講じてい
るという点に特徴がある。