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参考資料3:厚生労働科学研究 特別研究(野出班)の報告書 (17 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23962.html
出典情報 循環器病対策推進協議会 循環器病総合支援委員会(第1回 2/17)《厚生労働省》
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別添資料
循環器病総合支援センターと「治療と仕事の両立支援・就労支援」
本邦で推進されている「働き方改革」でも「病気の治療と仕事の両立、障害者就労の推進」が挙げら
れている他、ダイバーシティ・インクルージョンの観点、更には少子高齢化による労働人口の減少に伴
う労働人口の確保は喫緊の課題であり、脳卒中・循環器疾患患者に対する両立支援・就労支援は重要で
ある。しかし、循環器疾患・脳卒中患者の就労状況は十分とは言い難い。近年の本邦での就労年齢の循
環器疾患入院患者を対象とした疾病罹患後の復職状況に関する研究では、
循環器疾患罹患後の 75〜80%
の復職が報告されているが、罹患前に就労していた者で罹患後に離職した者は 25%程度と少なからず
認められ、その中で医療者から身体的理由により離職を勧められたのは 4〜13%と少数であり、多くは
身体上の不安による自己退職で、中には解雇や職場の不理解などを理由にした離職も認められたことが
報告されている 1, 2。尚、復職に関わる要因としては年齢や女性、非正規雇用、緊急入院患者、心不全合
併などが報告されている。一方、脳卒中については本邦の脳卒中患者数のうち約 30%は就労年齢の 65
歳未満で「若年性脳卒中」に該当し 3、特に罹患後も就労が重要であると考えらえているが、脳卒中患
者の就労に関しても十分とは言い難い。豊田らによる発症から3日以内に入院した完成型脳卒中症例を
対象にした多施設調査では、発症前の modified Rankin Scale (mRS)が 0〜1 の就労年齢患者では、発症
3 ヵ月には約 50%が mRS0〜1 まで、約 70%が mRS2 まで回復しており、発症3ヵ月後で約 50%が就
労可能な状態まで回復していることが報告されているが 4、本邦における脳卒中罹患労働者の復職率は
30〜50%、平均 44%との報告があり 5、就労可能な状態まで心身が回復した脳卒中・循環器疾患患者の
全てが復職できているわけではない。現在まで急性期治療の進歩やリハビリテーション、地域連携パス
など脳卒中・循環器疾患患者を取り巻く状況は発展してきたが、特に脳卒中後の復職率はこの 20 年間
大きく変化していないと考えられているのが現状である 5。この背景には、患者の就労には医療機関の
みならず、患者と事業所の雇用契約が関連しているため、就労支援には医療機関だけではなく事業所、
さらに労働行政・自治体との連携が必要であるものの、これらの連携が十分に行われてこなかったこと
が挙げられる。更に医療機関においては①患者の心身の就労可能なレベルまでの回復、②就労に必要な
患者の心身の状態の評価、③維持期における仕事との両立を考慮した医療の提供が必要であるが、医療
機関が急性期・回復期・維持期と専門分化している現在において、急性期から一貫して就労を視野にい
れた医療提供体制を確保していくことは重要と考えられる。
また事業所においては、本来は労働安全衛生法や労働契約法に罹患労働者の安全配慮義務が含まれ、
疾病罹患後における就労調整が期待されるが、事業所の健康管理や復職判断を行う要となる産業医や衛
生管理者は、我が国の企業の 99%以上を占める中小企業の大半に常在しておらず、本来は罹患後に就労
が可能な患者も、職場の不理解や柔軟な対応の欠如等により、就労できていないことも少なくないこと
が予測される。これらを背景に 2016 年に厚生労働省から「事業場における治療と職業生活の両立支援
のガイドライン」が発表された(2019 年に改訂)6。両立支援のガイドラインは雇用形態に関わらずすべ
ての労働者において、反復・継続して治療が必要となる疾病で、短期で治癒しない疾患(脳卒中や心疾患
も含む)を抱える労働者(患者)の、治療と仕事の両立支援の手引きであり、この活用が期待されている。
また脳卒中・心疾患患者を対象にした治療と仕事の両立に関する手引きも発表されている 7, 8。更に、労
災病院群が実施していた治療就労両立支援のモデル事業の一環にあった復職コーディネーターを発端
に、医療機関と事業所の連携を支える両立支援コーディネーターも発足し、両立支援ガイドラインの更
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