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資料5-1 高齢者施設の服薬簡素化提言 (7 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html
出典情報 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》
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3. 服薬簡素化の意義
(1)高齢者施設の服薬実態
高齢者施設の入所者/入居者は、フレイルや要介護の状態にあり、認知機能の低下もみられる等、さまざま
な健康上の問題を抱えていることが多い。薬物治療においては、複数の疾患や症状に対して個別に治療が
行われることで、ポリファーマシーとなりやすい。ポリファーマシーは、「単に服用する薬剤数が多いことではな
く、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、誤薬、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態であ
る」と定義される 1。ポリファーマシーは、高齢者施設の薬物治療における重要課題であり、処方見直しを通し
て、薬剤の要否の判断及び優先順位付けを行い、必要な薬剤を選択し、可能な場合には減薬を行う 1。
処方見直しと並行して、服薬回数を見直し、なるべく服薬回数を減らすことで、より良い薬物治療を実現す
ることができる場合がある。薬剤種類数が同じでも、投与回数や剤形等の違いによって、薬物治療はより複
雑なものとなりうる 2、3。薬物治療が複雑になると、誤薬のリスクが上昇し、与薬に要する手間や時間(とくに
服薬介助の場合)がかかるだけではなく、服薬アドヒアランス低下、入院・再入院・救急受診あるいは死亡の
リスク上昇につながる恐れがある 3-6。介護施設入所者を対象とした研究においても、薬物治療の複雑性と
入院リスクに関連がみられている 7。したがって、高齢者施設の入所者/入居者の薬物治療において、減薬と
は独立した服薬簡素化の視点を取り入れる必要性は高い。また、服薬自己管理となる高齢者施設や高齢者
施設から在宅復帰した場合等を見据えると、服薬簡素化によって自己管理しやすい処方に変更することは、
アドヒアランスを良好に保つためにも不可欠である。

薬物治療の複雑性を定量的に評価する方法のなかでは、MRCI(medication regimen complexity
index)が最も汎用されている 8。MRCI は、薬物治療の複雑性を、セクション A(剤形)、セクション B(投与
頻度)、セクション C(追加指示)から評価するもので、合計スコアが高いほど複雑性が高い 2。高齢者施設
の入所者/入居者では、薬物治療の複雑性が高いことが海外の研究から示されている(付表 1)9-14。なお、
国内では近年、入院患者や在宅療養高齢者を対象として、MRCI を用いた薬物治療の複雑性に関する報
告がなされており(付表 2)15-18、海外の高齢者施設入所者/入居者の報告に比べて低~同程度の MRCI
スコアではあるが、日本の高齢者施設入所者/入居者においても服薬簡素化の余地があると推察される。
MRCI の課題として、スコアリングに要する時間や手間等が挙げられる。また、重要なことに、MRCI スコア
への寄与が最も大きいのはセクション B(投与頻度)であり 9、11、12、19、MRCI スコアと投与頻度には相関が
ある 16、20。一方で、MRCI は薬剤ごとに評価するものであるため、薬物治療全体を考えたときの服薬回数を
別途評価することの意義は高い。投与回数と MRCI スコア(とくに投与頻度)に相関があることも示されて
いる 12。海外の研究では、介護施設入所者に対し、あらかじめ定めた方法(投与タイミングの変更や剤形変
更)にしたがって薬剤師が介入することにより、おおむね良好な安全性プロファイルで、投与回数の減少がみ
られている 21-23。
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